ADIによるMaximの買収が承認・アナログ半導体市場の解説

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お世話になります。

ADI(アナログ・デバイセズ社)によるMaxim Integrated(マキシム)の買収が中国当局から承認されたようです。非中華企業の半導体企業の買収では基本的に中国当局が鬼門になってますけど、これですべての国の規制当局から買収が認可され、無事買収が成功です。買収額は約2兆円とのこと。

Analog Devices and Maxim Integrated Announce China Antitrust Clearance for Combination | Analog Devices
WILMINGTON, Mass. & SAN JOSE, Calif. --(BUSINESS WIRE)--Aug. 23, 2021-- Analog Devices, Inc. (NASDAQ: ADI) and Maxim Integrated Products, Inc. (NASDAQ: MXIM) to...

最近だと半導体製造装置大手のApplied MaterialsによるKOKUSAIの買収の認可が中国当局から降りなかったことが記憶に新しいですね。

半導体業界の過去の合併・買収の破談劇
半導体業界の大型M&Aが続いています。2020年にはAMDによるザイリンクスの買収発表やNvidiaによるARMの買収発表が報じられました。しかし、これらの買収や合併は必ずしもすべて実現するとは限らず、各国規制当局や競合のロビー活動により反対に合う場合もあります。本記事では過去の半導体買収・合併破談劇を取り上げます。
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ADIとはどんな半導体メーカーか

ADIはその名の通り、アナログ半導体の大手です。データコンバーターとか電源管理ICとかMixed Signalとかやってます。超優良企業です。

【ADI(アナログ・デバイセズ)】
・創業: 1965年
・本社: アメリカ合衆国マサチューセッツ州 Norwood
・売上高: 約6200億円(2019)
・製品: アナログ半導体、ミックスドシグナル、DSPなど
・その他: 2016年にLinear Technologyを買収、2020年にMaxim Integrated買収を発表

IC Insightsによると2020年のアナログ半導体売上ランキングではTexas Instrumentsに次いで2位。買収されるMaximは7位ですので単純に$7,000M規模のアナログ半導体メーカーが誕生し、アナログ半導体の単純な市場金額シェアで言うとTIとADIの2強体制になります(下記画像 IC Insights “Texas Instruments Continues As World’s Top Analog IC Supplier”より)。

ADIは過去にLinear Technology(LTC)というこれまたアナログ半導体の競合を約1.5兆円で買収しています。LTCはハイエンドのポートフォリオを揃え、非常に利益率が高い企業でした。

衝撃の「ADIのリニア買収」背景と今後
日本時間2016年7月27日の朝、国内半導体業界にも衝撃が走った。営業利益率4割を超える超優良半導体メーカーLinear Technology(リニアテクノロジー)が、Analog Devices(ADI、アナログ・デバイセズ)に買収されることで合意したという。業界関係者は「まさかリニアが!」と驚くとともに、「なぜ、リ...

そのおかげか、現在のADIは非常に高い利益率とキャッシュフローを誇る優良企業として知られています。Non GAAPのGross Marginは70%を超え、営業利益率は40%を超えます

営業キャッシュマージンは高いときで40%近いですね(じっちゃま受け売り)。

直近の決算でも安定の成長を見せてくれています。

Analog Devices ($ADI) Q3決算 *7月30日締め
売上: $1,758M YoY +21%
グロスマージン: 71.6% YoY +1.7pts
営業利益率: 43.6% YoY +1.3pts
EPS: $1.72 YoY +26%
ADIの売上は大きい順にIndustrial・Communication・Automotive・Consumerの4セグメントです。昨年のコロナの反動もありですが、車載の売上の伸びがYoY +80%でした。一方で通信は反動で-21%です。稼ぎ頭のIndustrialは+30%近いYoY成長でした。
今回のマキシムの買収によりポートフォリオが拡充されます。ADIは売上の半分は安定分野であるIndustrialに偏っています。一方でマキシムは車載分野やデータセンター分野への売上依存が比較的大きく、買収により両分野の売上比率を40%に引き上げることができ、今後の成長加速が期待されます(画像及びデータ出典『Analog Devices社公表資料』より)

アナログ半導体市場について

アナログ半導体市場についても簡単に解説します。

例えば、世界には音とか光とか温度とか圧力とかいろんなデータが溢れていて居るのですがそれらはすべてアナログデータです。ただ、そういう情報をスマホとかで表示する訳ですけど、その時にデジタル信号に置換えられています。そういう、アナログ信号をデジタルデータに出力してデータ処理を可能にするのがADIの主力製品の一つであるA/Dコンバーターでアナログ半導体の代表的な製品の一つです。他にも直流電流をスマホなどの機器が必要とする直流電流に必要に応じて電圧の大きさを変換するDC/DCコンバーターやAC/DCコンバーターという交流を直流に変換するための電源ICもアナログ半導体です。

実は、デジタル時代の進展と共にアナログICの出荷数量がデジタルICよりも増えているのだ(図1)。1980年のはじめから半ばにかけて、これからデジタルエレクトロニクスの時代が始まる、と米国のElectronics誌をはじめElectronic Design誌や、EDN誌、80年代半ば創刊のEE Times誌などが盛んに書き立てた。ところが現実のICの出荷数量はアナログICの方がデジタルICを徐々に凌駕していく、という現象が起きている
引用 – 津田建二『デジタル時代こそ成長するアナログ半導体』

もっと詳しい説明は下記の記事でも読んでみてください。

デジタル時代こそ成長するアナログ半導体(津田建二) - 個人 - Yahoo!ニュース
マキシム、といってもコーヒー会社ではない。創業33年目を迎えた米国の中堅アナログ/ミクストシグナル半導体企業である。「あれっ、デジタル時代なのにアナログで商売しているの」と思う人がいるかもしれない。
半導体の基礎知識(2)――デジタルとアナログの使い分け
現代の電子機器の多くは、アナログ回路とデジタル回路で成り立っています。昔は全てアナログ回路で構成されていました。今はデジタルに脚光が当てられていますが、アナログもしっかりと使われています。では、なぜ全てアナログで作られていたテレビやVTRはデジタルに置き換えられたのでしょうか。デジタルとアナログの使い分けについて考えて...
データコンバータICにおける新たなイノベーション
電子機器は、アナログからデジタルに、またはその逆に信号を変換するインタフェースを常に必要とします。そのためエンジニアは、ADCとDACを基本的なコンポーネントとして使用します。また、近年では、さまざまなアプリにおいて、高速なデータ変換に対するニーズが高まってきています。

アナログ半導体の需要は堅調に増えていっています。WSTSによると、2021年のアナログ半導体が占める半導体市場における出荷額の割合は約13%と見込まれています(データ出所 WSTS)。パイの多いメモリとロジックについでMicroとAnalogが同程度あるわけです。

また、2021年のアナログ半導体市場の成長率は前年比+21.7%と半導体市場平均19.7%を超えています。2017年から2022年までの半導体品種別YoY成長を表したグラフです。アナログ半導体が赤の折れ線、半導体市場全体を黄色の折れ線、主要品種であるLogicとMemoryをそれぞれ、青・緑で表しています(データ出所 WSTS)。

メモリーのボラが激しいのでメモリーの曲線だけ抜いてみました(*半導体全体の成長率はメモリーを含めたままです)。

アナログ半導体を牽引する市場の一つである車載市場については筆者の過去記事を読んでみて下さい。

車載半導体市場を解説
車載半導体は2021年現在、半導体デバイス総出荷額の約10%程度しか占めませんが、半導体業界では非常に注目されている市場です。この記事ではパワートレイン電動化やADASといった観点から車載半導体市場の成長、また車載半導体のユースケースや代表的半導体メーカーについて解説します。

アナログ・デバイセズ社のインタビューもあります。

アナログ半導体でクルマの進化に応える
アナログ半導体を提供するアナログ・デバイセズでオートモーティブビジネスを担当する須藤徹氏に、日経BP社 技術メディア局長補佐である大久保聡氏がカーエレクトロニクスの現在と未来の一端を聞いた。

日本のアナログ半導体

日本にもアナログ半導体メーカーはいくつか存在します。例えば、ルネサス。IDTを買収してアナログ半導体のポートフォリオを拡充しました。直近ではダイアログセミコンダクターというMixed Signalを買収表明し、さらなる拡大を目論んでいます。

あとはミネべアミツミ。もともとセイコーの半導体部門だったエイブリックを買収しました。また、日清紡もリコー電子デバイスというリコーの元アナログ半導体部門と新日本無線というこれまたアナログ半導体メーカーを買収してくっつけて、日清紡マイクロデバイスを名乗っています。

他にもトレックス・セミコンダクターとか東芝とか、TIやADI、インフィニオンやSTなど欧米系大手に比べると規模は小さいですが、アナログ半導体メーカーは日本にいくつか存在します。

下記の電子デバイス新聞の記事を読んでみて下さい。

https://www.sangyo-times.jp/article.aspx?ID=6357

以上です。

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