アナログデバイセズ(ADI)の決算発表

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アナログ半導体大手のアナログデバイセズ(NASDAQ: $ADI)のFQ1決算の結果が発表されましたので、本記事では決算内容の確認と過去の業績推移から考察をしていきたいと思います。

【この記事のポイント】
・Texas Instrumentsに次ぐ、アナログ半導体の大手
・Non-GAAPで70%台の高い粗利率、営業利益率は40%台、30%台の営業CFマージン
・2016年にLinear Technologyを買収、2020年にMaxim Integrated買収を発表
・Maxim買収により車載及び通信分野のポートフォリオ拡充し、今後の成長へ
・2021年2月16日に+11%の増配を発表(過去17年で18回目の増配、69期連続配当支払)
【注意】
本記事には特定企業について言及していますが、株式投資を推奨するものではありません。一方で筆者は個人的に本記事で取り上げるAnalog Devices($ADI)の株式を2021年2月時点で保有しています。
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アナログデバイセズについて

まず、簡単にアナログデバイセズ(以下ADI)について紹介です。半導体・電子部品・電機界隈の業界人であれば知らない人はいないと思いますが、IntelやAMD、Nvidiaのように広く名前が知られてる半導体メーカーではないですね。

【ADI】
・創業: 1965年
・本社: アメリカ合衆国マサチューセッツ州 Norwood
・売上高: 約6200億円(2019)
・製品: アナログ半導体、ミックスドシグナル、DSPなど
・その他: 2016年にLinear Technologyを買収、2020年にMaxim Integrated買収を発表
ADIはその名の通り、電源管理(PMIC)やミックスド・シグナル等のアナログ半導体に強みを持つ半導体メーカーです。特にデータコンバーターにおいては約50%近い市場シェアを握っていると言われています。
なかでも、当社の収益に最も大きく貢献しているのはデータ・コンバータです。コンバータ市場に詳しいアナリストのほとんどはこの市場における当社のシェアを40~50.4%*と見積もっており、当社は世界のどの地域でもこの製品分野のリーダーとしてよく知られています。
引用 【アナログ・デバイセズ 会社概要】
データコンバーターとはアナログ信号をデジタル信号に変換、もしくはその逆を行うICでミックスド・シグナルというタイプの半導体に分類されます。アナログデータとは、人間が体で感知する音とか温度とか目で見える視界です。それらのアナログ情報はスマートフォンやテレビと言った電子機器で再生する際にデジタル信号に置換えられます。このようなミックスド・シグナルICはテレビやコンピューター、スマートフォン、最近では自動車やAR/VRゴーグルなど様々な電子機器の登場に伴い需要が増え続けています。また、単にICの数量需要が増えるだけでなく、搭載される電子機器の高度化に伴い高速データ変換など求められる性能も高まっています。

現代世界には、アナログとデジタル両方の信号で構成された、膨大なデータが溢れています。アナログ値は、温度、光、音、圧力のような自然現象の特性ですが、エレクトロニクス技術は、デジタル信号の受信と処理、それに続く伝送によって成り立っています。アナログ信号とデジタル信号の性質は大きく異なります。多くの場合、両方の信号が電子システム内で併存する必要があります。現実世界で発信された信号は、人間が認識し相互作用できる形で、現実世界に戻されなければなりません。そこにデータコンバータ(アナログ/デジタル・コンバータ(ADC)とデジタル/アナログ・コンバータ(DAC))の役割があります。
引用【データコンバーターICにおける新たなイノベーション】

ADIはこれらの分野において非常に競争力が高く、下記で紹介するようにADIの持つ製品の強さは利益率といった業績の数字にも色濃く現れています

なおWSTSの統計によるとアナログ半導体の市場規模は2020年時点で約540億ドルと、半導体市場の約12.5%を占めています。

ADIの業績

続いて、2021年2月17日に発表された2021年 FQ1の結果を含む過去の業績を見ていきます。

ADI 2021 FQ1決算結果

まず、ADIの決算は10月末締めです。ですのでFY20決算は昨年10月末に終わっており、今回はFY21のFQ1(11月~1月末)の決算結果となります。

【ADI 2021年 FQ1】
売上
$1.55B / QoQ +2%  / YoY +20%
→コンセンサス予想 $1.51B
EPS(Adjusted) $1.44 / YoY +40%
→コンセンサス予想 $1.32
・Gross Margin & 営業利益率(Adjusted): 70%(GP) / 40.7%(OP)
昨今の強い半導体需要とコロナで打撃を受けた車載分野や民生分野の回復から、YoY +20%の大きな成長を遂げることが出来ました。調整後の営業利益率も40%、グロスマージンは70%と高い収益性を維持しています。

ADI 過去5年の業績振り返り

続いて過去5年の業績とキャッシュフローを見てみます。ADIは2016年にLinear Technologyを買収しました。Non-GAAPベースのGross Marginは70%台、営業利益は40%台と非常に高い収益性を維持しています。一方で、売上成長の鈍化がやはり気になります。これは後述しますがADIの売上の50%を安定成長の産業機器分野が占めていることが一つの大きな理由です。これらの分野はスマホやデータセンターのように爆発的な成長が期待できません。また直近では車載と民生(合計して売上の約30%)がコロナの需要減により大きなダメージを受けました。しかし、2020年7月に発表したMaxim Integratedの買収により、今後の成長が期待されます。

また、直近ではやや凹みがあるものの、営業CFマージンも基本的に30%以上を維持しています。CFマージンが20%台に凹んでいるFY17もNon-GAAP基準で見ると35%以上の営業CFマージンを維持しており、利益率が高いビジネスをしている事がわかります。

ADIの四半期ごとの業績変動と市場別売上

続いてFY20 (2019年11月ー2020年10月末)およびFY21 Q1の四半期ごとの業績変動をセグメント別に見ていき、コロナがADIの業績に与えた影響を考察します。

まず、ADIの市場別売上は50%が産業機器(インフラ、工場設備、医療など)、20%が通信(基地局・サーバー) 、15%が車載、15%が民生となっており、比較的収益が安定している産業分野への依存が大きいです。

ADIのFY20の上半期はマイナス成長でした。ADIのFiscal Yearは11月から始まるので20年のQ1はさほどコロナの影響を受けなかったはずなのですが、データセンター向けの投資やスマホ・コンスマー新機種の生産需要が一服する半導体の低需要シーズナリティ及びチャネル在庫の削減を理由にQoQ・YoY共にマイナス成長となりました。一方でコロナのインパクトを受けたQ2はQoQで+1%と微増でした。理由としてはADIの売上の半分を占める産業機械向けの需要(医療機器等含む)の好調と5G関連のCommunication需要が好調であったからです。

下期からは業績の回復が鮮明でQ3はQoQ +11%、Q4はQoQ/YoYともにプラス成長を果たしました。特に車載関連の売上がQoQ +40%となっています。2021年2月17日に発表された四半期の業績もQoQ +2%、YoY +20%となりました。設備投資の再開から、売上比重の大きい産業機械分野の売上がYoY +24%と大きな恩恵を受けました。車載と通信もYoY+19%と+16%の成長です。

FY21 Q2 Outlook

ADIのFY21 Q2 見通しは下記のようになっています。

・売上: $1.6B ± $50M
・営業利益(調整後): 41%
・EPS(調整後): $1.44 ± $0.08

Maxim Integratedの買収

ADIは2020年の7月に約2兆円でMaxim Integrated(マキシム)の買収を発表しました。マキシムも製品のポートフォリオは電源管理や信号処理などのアナログ半導体がメインですが売上サイズは首位のTIや2位のADIと比較して小ぶりで約$2.2B程度の売上です(アナログ半導体ではトップ10に入ります)。この買収によりADIの売上は現在の$6B台から$8.2B規模のサイズになります。3位以下のアナログ半導体にはInfineonやST Microelectronics、Skyworks、NXPなどが続くのですが買収によりその差を大きく広げることになります(注意 Infineon/STM/NXPなどはパワー半導体やマイコンを含む全体の売上はADIと同規模、アナログ半導体事業に限ると3位以下という意味)。

ADIがマキシムを買収するのはエンド市場のポートフォリオの拡充です。ADIは売上の半分を安定分野である産業機器市場に頼っており、これから成長が見込まれる車載分野やコミュニケーション分野が占める割合が少ないです。一方でマキシムは車載分野やデータセンター分野への売上依存が比較的大きく、買収により両分野の売上比率を40%に引き上げることができ、今後の成長加速が期待されます(画像及びデータ出典『Analog Devices社公表資料』より)

また、今回の買収では株式交換を行うことにより、現金の流出を防ぐことが出来ます。さらにマキシムはFY19 Q3時点で、$725MのFree Cash Flowを確保しており、今後の軍資金として懐を暖めることにもなりそうです。

まとめ

以上、ADIの2021年 FQ1の決算結果について考察いたしました。

【まとめ】
・TIに次ぐアナログ半導体大手
・製品力が強く、ADIは高い利益率、営業CFマージンを誇る
・一方でここ数年の売上成長は鈍化気味
・Maxim買収により成長分野の車載や通信分野の牽引に期待
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