ASML Q1 2021決算発表まとめ

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オランダの大手半導体製造装置メーカーASMLの2021年Q1 (1月 – 3月期)決算発表のまとめ記事となります。ASMLは露光装置で圧倒的シェアを持ち、特にEUV露光装置はASMLの100%寡占市場となっています。

この記事のポイント
・Q1はコンセンサス予想をBeat
 売上: 4.4B EUR … QoQ +2.6% / YoY +78.7%
Gross Margin: 53.9% … QoQ +1.9ppt / YoY +8.8ppt
Operating Margin:35.8%  … QoQ 0.5ppt / YoY +18.3ppt
EPS (EUR): 3.2EUR  … QoQ -0.9% / YoY 244%
・2021年通年では+30%の売上成長を見込む、粗利率は50%台
・装置別の売上比重はQoQで変わらず、ただしサービス売上が+17%成長
・仕向地向けでは韓国と台湾が2強、Samsungファウンドリ向けが好調か
・EUV露光装置の出荷台数はQoQで1台減少、しかし平均単価は+11%上昇
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ASML Q1 決算結果

ASMLのQ1決算結果の数字まとめです。

【Q1 決算結果】
売上
: 4.4B EUR … QoQ +2.6% / YoY +78.7%
Gross Margin: 53.9% … QoQ +1.9ppt / YoY +8.8ppt
Operating Margin:35.8%  … QoQ 0.5ppt / YoY +18.3ppt
EPS (EUR): 3.2EUR  … QoQ -0.9% / YoY 244%
コンセンサス予想はEPS 2.59EUR (+175% YoY)、売上 4.02B EUR(+64.75% YoY)、Gross Margin率 50.5%でしたので数字はすべてクリアのようです。

ガイダンス

またQ2および2021年通年のガイダンスは下記のように示されています。

【Q2 2021】
売上: 4B EUR – 4.1B EUR
Gross Margin: 49%【2021年通年】
売上成長率: +30%
Gross Margin: 51% – 52%
2021年は強い需要を背景に+30%の売上成長予想です。今年1月時点のガイダンスでは少なくとも+10%の増収としていたのでかなり強気の上方修正のようです。さらに2020年の売上は約13.9B EUR (YoY +17.7%)でしたので昨年の成長率を凌駕することになりそうです。
また2018年にASMLは2025年の売上予測を15B EUR – 24B EURと示していましたが、こちらのアップデートについては今月29日のInvestor’s Dayにてアナウンスがあるとのことです。

ASMLの四半期ごとの業績推移

下記の図はASMLの決算情報を基に筆者がまとめた四半期ごとの業績推移です。売上をEUV露光装置・ArFi・KrF・売上額の小さいArF Dryとi線・サービス売上と細分化しています。

露光装置システムの売上はQoQでは3,129EURで総売上に対する比率は71.7%でした。システム売上自体はQoQでは微減です。ですがメンテナンス関連の売上がQoQで+17%・YoYでは+44%と堅調な成長を見せています。今回総売上に対して約28%を占めたメンテナンス売上は市況に関わらず、装置が顧客の半導体メーカーのラインで稼働し続けている限りは定期的に発生すると考えられる売上で、納入台数が増えれば増えるほど、強固な売上基盤となっていきます。

露光装置のタイプ別売上シェア

ASMLの露光装置の売上に対するタイプ別売上シェアについてもう少し細かく見てみます、下記は四半期の推移です。なお、非常にざっくりとしたそれぞれの露光装置に関する説明ですが、露光装置の光源の波長が短いほど微細化のパターンが形成され、その分価格も跳ね上がります。i線 > KrF > ArFドライ > ArFi > EUVという順です。

露光装置のエンド顧客別売上シェアと地域別シェア

露光装置のエンド顧客別売上シェアです。メモリーとロジックに二分されます。メモリーはSmasung・SK hynix・Micron等、ロジックはTSMCやIntel及びSamsungのファウンドリ部門が主要顧客であると考えられます。2021年Q1も引き続きロジック向けの売上が大きいです。ロジックの比率は78%でQoQ +6pptでした。

続いて露光装置の地域別シェアです。Q1は韓国向けの売上比重が44%でQoQ +13pptでした。上記ではロジック向けの売上が+6pptの成長でしたので、主にSamsung電子のファウンドリ向け出荷額が増えたと予想されます。台湾向けの比重も43%でQoQ+4pptでした、引き続きTSMC向けの出荷も好調のようです。

さらに中国向けは15%で+3pptの成長でした。しかし、これは最終仕向地なので例えば中国にファブを持つ韓国企業(例えばSamsungは西安・SK hynixは無錫にDRAMファブを保有)向けの出荷も中国売上としてカウントされると考えられます。また、小さすぎてグラフには見えないのですが日本は1%、アメリカは3%でした。EMEA向けは今回含まれていないようです(もしくは非常に小さい)。

露光装置のタイプ別ASPとEUV露光装置出荷台数

続いて、露光装置のタイプ別ASP(平均販売単価)とEUV露光装置の出荷台数の四半期ごとの推移です。ASMLは露光装置のタイプ別出荷台数と売上額を開示していますので、単純に売上額を対応するタイプの露光装置出荷台数で割った数をASPとして割り出しました。

Q1のEUV露光装置の出荷台数は7台で前Quarterよりも1台減少しています。しかし、EUV露光装置売上を頭数で割算出したEUV露光装置の単価は160Mユーロ/台となり、前Quarterの143Mユーロ/台から+11%の平均単価上昇が見られています。

露光装置の受注残数

最後に露光装置の受注残数を見てみます。装置の受注台数残数自体は3台減っていますが、受注額は約500Mユーロと11%の上昇です。さらに受注残高4,740M EURのうちEUVの残高は2,294M EURと48%を占めています、前Quarterでは1,067M EURと25%でしたのでEUV露光装置の需要が旺盛であることを示しています。なお、後述する高NA品と呼ばれるハイエンドモデル(のサンプル?)はここには含まれておりません

EUV露光装置販売台数

ASMLのConference Callによると2021年のEUV露光装置の販売台数は引き続き40台、2022年は55台としました。さらに、現行のNXE:3400Cよりも生産効率が15%-20%引き上げられたNEX:3600D Systemの出荷が始まることにより平均販売単価も更に上昇すると見込まれるでしょう。

We plan to transition to the NXE:3600D system in the second half of the year, which will provide customers with a 15% to 20% higher productivity compared to the NXE:3400C systems shipping in the first half of the year.

引用 – ASML Holding Q1 Conference Call

まとめ

2021年に入り、半導体デバイス市場はとても恵まれた環境にありますが、ASMLなど半導体装置市場メーカーにとっても素晴らしい環境あります。増え続ける半導体の需要に対して供給が追いつかない状況となっており、半導体メーカーおよびファウンドリは生産能力を増強するために積極的に投資をしておりASML等の半導体装置メーカーの受注額は積み上がる一方です。

SEMIによると2021年の半導体装置市場は約660億ドルと史上最高額に達すると予想されています。

具体的には、2021年の市場見通しを従来の前年比4%増の618億ドルから同11%増の約660億ドルに、そして2022年も同6%増の656億ドルから同7%増の約700億ドルに、2023年も従来の680億ドルから約720億ドルへとそれぞれ上方修正している。デバイス別では、ファウンドリ /ロジック向け装置が2022年、2023年ともに前回予想の300億ドル超から350億ドル超に上方修正されている。
引用『SEMI、2021年の半導体製造装置市場予測を上方修正 – SEMICON Korea 2021』

特にASMLが100%のシェアを持つEUV露光装置は、7nm・5nm・3nmといった最先端のロジック半導体の微細化にほぼ必須となっており、TSMCやSamsung、Intelといった大手半導体メーカーが取り合いをしているとのことです。

主力のEUV露光装置は今後も微細化を牽引し続け、さらに数年後に高NA品と呼ばれるよりパワフルな機種が出てくると更に単価の上昇と収益性の上昇が見込まれます。

引き続きASMLには期待しています。

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