ASML Q3 22決算・米国の新たな半導体対中国規制など

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お世話になります。まず最初に弊ブログタイトルを『半導体24時』に変更しました。

尊敬する岐阜暴威さんのYoutubeチャンネルで一時使われていたサムネイルから取っています。URLとかはまだこのままです。いずれ移行するかもしれません。気が向いたら。多分。

マイナス455万漢 2022年10月19日

それでは本題です。

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ASML Q3 2022決算

FY22 ASML Q3決算
→売上:  EUR 5,778M … YoY +10%
(うちEUV露光装置売上: EUR 2,170M YoY -2.2% / EUV露光装置単価 EUR 180M YoY +21%)
→Gross Margin: 51.8% … QoQ +2.7ppt / YoY Flat
→Operating Margin: 33.5 %  … QoQ +3.1ppt / YoY -3.1ppt
→EPS: €4.29 … QoQ +21% / YoY +0.7%
⇒Net Booking: EUR 8,920M … QoQ +5.4% / YoY 44%
半導体市場は既に下降局面に入っていると騒がれ、また様々な大手半導体メーカーが設備投資の減額をアナウンスしていますが今のところASMLの売上や利益率に大きな影響は出ていないようです。

半導体受託生産最大手、台湾積体電路製造(TSMC)の7-9月(第3四半期)の利益はアナリスト予想を上回った。半導体業界がリセッション(景気後退)の可能性と米国の貿易規制強化に備える中、同社の収益力の高さが鮮明となった。2022年の設備投資計画については約360億米ドル(約5兆3000億円)と、従来から10%程度引き下げ
引用 『TSMCの7-9月利益、予想上回る-今年の設備投資計画は10%減額』

それどころか、Q3の新規受注額(Net Booking)はEUR 8,920Mと最高額を更新しています。個人的にCAPEXの減少は懸念していましたがASMLが手掛けるEUV露光装置を使うような最先端の部分は息の長いテーマなので影響は比較的に少ないようです。例えば下記はMicronの決算発表のCapexに関するコメントです。

・Micronは23年の投資を大幅に抑制、今年比で-30% Capex減額。しかし新工場投資は2020年代後半を見据えて2倍に(We made significant reductions to capex and now expect FY 2023 capex to be around $8 billion, down over 30% Y/Y; construction capex to more than double Y/Y to support demand for second half of decade)

・23年の前工程投資は主に新世代プロセスの開発向け(FY 2023 WFE capex is for developing technology capability of our leading nodes and new product introduction)
既存テクノロジーの生産ライン増設は抑制し供給を引き締めるが、もっと将来を見据えた新世代の開発は継続
引用 – Micron “FQ4 Earnings Call Prepared Remarks”

また、顧客である半導体メーカーからも一部納入をPush Outさせる旨のリクエストが来てることは確からしいですが、Push Outされた分の装置を早く納入してほしいという要望を出す顧客がまだまだ居るようです。
There is a few customers that are indicating a preference for some delay but the lion’s share of the customers are really pushing and they are raising their hands to say if there is a delay someplace else, then please get the tools to us even earlier
引用 – ASML Q3 22 Video Transcript

Q4/FY22 Full Year Outlookと受注額・BB Ratioの推移

また、ASMLによるとQ4/FY22通年のOutlookは下記のようになっております。

Q4 売上: EUR 6.1M – EUR 6.5M … YoY +27.3%
Q4 粗利率: 49% … YoY -5ppt
FY22 売上: EUR 21.1B … YoY +13.4%
FY22 粗利率: 50% … YoY -2.7ppt

下記グラフはASMLの決算資料を基に筆者が作成した四半期売上と受注額・BB Ratioの推移で、売上はInstalled Base Management (サービス売上)、EUV露光装置、EUV以外の露光装置(ArF液浸など)に区分しています。一番右の棒グラフはQ4 Outlookでうち装置売上の内訳が不明なため水色で表示しています。

受注額とBB Ratioの推移は下記のようになっております。BB RatioとはBook to Bill Ratioの略で同期間における販売額に対する受注額の割合(「受注額÷販売額」で計算)です。割合が1を超えている場合、受注が強く将来の需要がまだまだ根強いことが図り取れます。ASMLのBBレシオはFY20 Q4以降1以上を継続的に超えています

特に高い受注額の背景は0.55NAの高NA EUV露光装置の受注が寄与していると考えられます。

Intelが超微細プロセスの量産に対応する高NA EUV露光装置をASMLに発注
IntelとASMLは1月19日(現地時間)、IntelがASMLの現行の開口率NA=0.33のEUV露光装置の次世代機となるNA=0.55の高NA EUV露光装置の量産対応機「TWINSCAN EXE:5200」の購入に向けた最初の発注を行ったことを明らかにした。

ASML EUV露光装置の単価と出荷台数の推移

続いてASMLの稼ぎ頭であるEUV露光装置の四半期ごとの出荷台数と単価をグラフにしました。なお単価の算出方法は単純に四半期決算資料で開示されているEUV露光装置売上を出荷台数で割って算出しています。

EUV露光装置の単価ですが、現在すでに1台当たり180M EURと200億円を超える価格となっています。肝心の出荷台数は今期は12台で前期と同数でした。2021年は42台、2022年はこれまでに27台出荷済、2023年は60台以上の出荷を目標としているとのことです。

…the capacity that we now see both for ourselves and also the supply chain, the position is very nicely for what we’ve communicated before as the output targets and the shipment targets that we would have for next year. Which is more than 60 EUV tools and more that 375 DUV tools
引用 – ASML Q3 22 Video Transcript

ASML Installed Base Management (サービス売上)推移

Installed Base Managementとはフィールドサービスの売上です。装置を販売した半導体メーカーの工場に装置会社のエンジニアが派遣され、メンテナンスやアップグレードなどのサービスを行います。半導体装置の売上は、半導体市場が冷え込み半導体メーカーの設備投資の減額に比例して落ち込むと考えられますが、フィールドサービスは既に納入し稼働している装置に対するメンテナンスの売上となるため比較的安定的な売上が見込めると考えられます。

下記はASMLの四半期決算資料を基に筆者が作成したサービス売上の推移とYoY推移です。右軸の青の折れ線がサービス売上のYoY変化率で黄色の折れ線が装置売上のYoY変化率です。サービス売上は装置売上の変化率の比べて安定した動きとなっています。ASMLによると2020年ー2025年のサービス売上のCAGRは12%とのことです。

米国による対中規制の影響は

10月11日、米政府は中国の半導体産業に対する新たな輸出規制を発表しました。詳しい内容は各々で調べていただきたいと思いますが、これにより半導体装置メーカー大手が中国の半導体メーカーのビジネスから引き上げているという報道がされているようです。

米国半導体製造装置メーカーがYMTCへ派遣中の社員を引き揚げ、米紙報道
米商務省の新たな対中規制を受け、米国半導体製造装置メーカー各社はYMTCからエンジニアの引き揚げを開始したと米国メディアが報じている。

ASMLはEUV露光装置を中国地場の半導体メーカーに納入していない

ただ、この規制がASMLのビジネスに大きな影響を与えるかと問われると、私はそうは考えません。なぜなら、ASMLの稼ぎ頭であるEUV露光装置はそもそもSMICやYMTCといった中国の地場半導体メーカーにはEUV露光装置を納入していません。
But the fact that we are a European company with limited US technology in it of course creates this situation where a direct impact on us is fairly limited. We can continue to ship non-EUV lithography tools out of Europe into China. 引用 – ASML Q3 22 Video Transcript
もちろん、成膜やエッチングといったASML以外の半導体装置メーカーが手掛ける装置が納入されないことにより、既存のビジネスに影響はあると懸念はされますが、需要が供給を上回る現在、それらの影響で中国顧客に装置を納入できなくても他地域の顧客の需要がそれらを吸収してくれるだろう、とのことです。
So the direct impact on us I would say is fairly limited. Of course there could be indirect effects. Those indirect effects could be that Chinese manufacturers to the extent that they do not get other equipment that they need in their fabs for instance from the United States. Of course there could be an indirect effect on the demand for our tools. But there I would say, it is important to recognize that we are clearly still in a situation where the supply is below what the demand is. So to the extent that at a certain point in time we would be in a position that we can no longer supply certain tools to certain customers in China, the demand outside of China is still such that we would get compensation for that in the current environment from other customers.

中国の最先端半導体工場は韓国メーカーのFab

ASMLの中国売上比率は今回の四半期で15%です。少なくない数ですがこれは仕向け地別という注釈がついています。中国には無数の半導体メーカーの工場がありますが、最先端の工場は韓国のメモリメーカー2トップであるサムスン電子とSKハイニックスの工場です。この中国向けの売上の数字にはこの2社の巨大ファブ向けの売上が相当数含まれるのではないかと推察できます。

報道によるとこの2社は今回の規制の対象からは1年間猶予されるとのことです。

米の「在中国」半導体企業向け製造装置輸出規制、韓国系は容認も
米商務省が米半導体製造装置企業向けに今週発表を計画している中国半導体企業への製造装置輸出制限で、中国企業に輸出するライセンス付与は厳格に抑制される一方、中国で半導体を生産する韓国などの外国企業への輸出の場合は、「ケースバイケース」でライセンスが審査されることになる。消息筋が明らかにした。
米 サムスン・SKの中国半導体工場への輸出規制を1年猶予
中国への半導体製造装置の輸出規制の強化を発表したアメリカ政府が、韓国の半導体大手、サムスン電子とSKハイニックスの中国工場に対しては規制の適用を1年間猶予したことがわかりました。アメリカの関係筋によりますと、アメリカ商務省はサムスン電子とSKハイニックスの中国工場に対して猶予を公 ...

韓国はアメリカの同盟国ですし、サムスンやSKなどの大手財閥はアメリカにも積極的に投資をしているアピールをしていますし当たり前のことだと思います。

影響を受ける装置メーカーはラムリサーチ(Lam Research/$LRCX)?

報道によると今回の規制対象で狙われるのは中国メモリメーカーのYMTC(NAND専業)とCXMT(DRAM専業)ではないか、とのことです。

消息筋の1人によると、米政権の狙いは「非中国企業を損なうことではない」。長江メモリー・テクノロジー(YMTC)や長鑫存儲技術(CXMT)などの中国企業による一定以上の高性能のDRAM(記憶保持動作が必要な随時書き込み読み出しメモリー)やデータ保存などのNAND型フラッシュメモリーの製造向けの場合は、米国の半導体製造装置の輸出申請は事実上通らない可能性が高いという。引用 – 米の「在中国」半導体企業向け製造装置輸出規制、韓国系は容認も

特にYMTCは3D NANDの生産で近年存在感を増してきました。

中国の3D NANDフラッシュメーカー「YMTC」の現状
今回は、中国の3D NANDフラッシュベンチャーであるYMTC(Yangtze Memory Technologies Co., Ltd.)の現状に関する講演部分を紹介する。

そして3D NAND向けの装置において大きなシェアを握っているのが米国Lam Research(ラムリサーチ)のエッチング装置です。直近の四半期においてLam Researchの売り上げに占めるNAND向けのシェアは約40%(NVM=Non-Volatile Memory)で地域別で言うと中国は約31%となっています(Lam Research決算資料より)。

しかし、この地域別売上もASML同様に出荷仕向地であると考えられます。中国には旧Intel含む韓国大手のメモリー工場がありますのでこの数字の大部分は中国メーカーではなく韓国大手による売上だと考えられます。Khaveen Investmentによると、YMTCのNANDフラッシュ市場シェアは5%程度に過ぎず、その数字をそのまま当てはめると、Lam Researchの売上($17B)に占めるYMTCの影響は約2%程度(金額にして約$340M)程度であり軽微であるとしています。

Lam Research: Minimal Impact From Restrictions (NASDAQ:LRCX)
We believe Lam Research could continue to maintain its market position despite increased restrictions. Click here to see our assumptions on the impacts from res...

上記の市場シェアの数字は売上ベースなのでそのまま生産能力に当てはめることは必ずしも正しいとは言えないと思いますが、一方でメモリ半導体はコモディティで価格が統一されていきますし、売上シェアと生産能力はある程度関連性があるため大きく間違ってはいないと筆者は考えます(YMTCがシェアを上げるために安売りしていたり、歩留まりが悪く出荷できる製品が少なく結果的に売上シェアが落ちていたりする可能性はあります)。

さらに、今回狙い撃ちされているYMTCなどの半導体メーカーは所謂汎用メモリというコモディティ製品を手掛けています。現在のYMTCの生産能力がなくなったところで結局既存のメモリメーカーが生産能力を拡張してその隙間を埋めることになりますので目先の売上や中国に対する投資に影響、混乱はあっても、半導体製造装置ビジネス全体としての影響はいずれ他のメーカーからの需要が吸収してくれると考えられると思います。

追記(10/20/2022) Lam Reseach決算発表コメント

10月19日にLam Researchの四半期決算があり、今回の規制に関する影響についてコメントがされたそうです。それによると今回の規制の影響で$2B-$2.5Bという大きな影響が2023年の年間売上に生じる可能性があるとのこと。”Very Profitable Chinese Clients”とあるので中国地場メーカーだけの影響と読み取れます。パーセンテージにして売上の約15%です。おそらくワーストケースだと思うのですが、上記で紹介したヘッジファンドのレポートよりも大きな開きがあります。

 Chipmaking equipment supplier Lam Research expects to lose $2 billion to $2.5 billion in annual revenue as a result of Washington’s latest chip ban on China, which is set to cost the American company some “very profitable” Chinese clients, Lam said Wednesday.

引用 – Lam Research expects $2.5bn revenue hit from China chip ban

ちなみにワタクシ個人の話ですが米国労働省が10月13日に発表した9月のCPIの後の寄りで1株だけASMLを380EURで買いました。。。高値から半値くらいになっちゃいましたね。

以上ですありがとうございました。

シュシュシュシュシュ(メイウェザー、次は俺が相手だ)
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