車載半導体市場を解説

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この記事では車載半導体の市場、何故半導体業界が車載半導体市場に注目するのか、車載半導体の特徴や代表的な車載半導体メーカー、およびこれらの今後の予測について考察をいたします。

本ブログ上の記事はすべて公のメディア、調査会社の公開資料、半導体メーカー各社公表の情報(IRなど)のみを元に執筆しています。筆者が業務上知り得た情報(ロードマップや価格など)について言及したり、情報源として盛り込むことは一切ございません。また、情報の出典元はすべて正確に明記することを心がけます。
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車載半導体とは

車載半導体は搭載されるアプリケーション及び求められる品質の観点から定義することができます。

車載半導体のアプリケーション

車載アプリケーションに使用される半導体全般を車載半導体と呼びます。具体的に言うと、カーナビやボディ、ADASシステムやパワートレインなど車両を構成する部品を車載アプリケーション言い、それらに搭載される半導体が車載半導体にカテゴライズされます。現在のところカーナビに代表されるInfotainment分野に使われる車載半導体が多くの割合を占めていますが、今後は自動運転のレベル向上により高性能化していくADAS分野とパワートレインの電動化に伴い需要が増えるパワー半導体の成長が期待できます。筆者が個人的に注目しているのはパワー半導体です。

 画像『Semiconductors used pervasively in automobiles. Source: UMC

一方で、後付のドライブレコーダーアクセサリなどに使われる半導体(例えば中身のSDカードとか)もアプリケーションで区切ると車載半導体になり得るのですが、このようなグレーゾーンは品質の観点で判断することになります。

車載半導体の品質

もう一つ、車載半導体を定義する要素が品質です。車載半導体では最も厳しいレベルの品質が求められます。車は真夏の南アフリカの炎天下、真冬のロシアの厳冬、整備されていないガタガタな道路からくる振動など、過酷な環境での使用に耐えなければなりません。故障は運転手や乗客の命に重大な危険を及ぼす可能性もあるからです。一方で、スマートフォンやノートPCが使用中に動かなくなっても、人命に影響を及ぼすことはほぼ無いでしょう(バッテリーマネジメントICの故障→爆発→出火→火事という最悪のパターンも考えられはしますが・・・)

具体的な品質の基準例としてAEC(Automotive Electronics Council)の定めるAEC-Qという品質規格があります。

半導体関連では、集積回路を対象にした「AEC-Q100」、トランジスタなど個別半導体を対象にした「AEC-Q101」がある。車載グレードの製品は、おおよそ「AEC-Q100」もしくは「AEC-Q101」に沿った規格になっている。動作温度範囲や振動、静電気、湿度、不良率、寿命、供給期間、サンプルの入手時期などで、一般の製品よりも厳しい基準をクリアしたものだけが、車載グレードとなる
(引用元 『過酷な環境下で求められる高度な信頼性』)

例えば動作温度範囲の要求は典型的な車載半導体に求められる項目の一つで、一般的なスマホやPC、テレビといった製品に求められるコンスマーグレード半導体の動作温度範囲が摂氏0度〜70度であるのに対し、車載半導体にはグレードによって摂氏-40度〜150度迄の過酷な環境における動作保証が求められます。

アプリケーション定義の最後に例を出したダッシュボードカメラ等、後付アクセサリー向けの半導体にはAECQ-100が定めるほど厳しい要求を求めるられることは無かったりもします。その場合は用途が車載アプリケーションであっても、車載半導体というカテゴリに含まないことが多いです。ただし、この部分は各半導体メーカーによって異なり、顧客の方も最近では車載グレード(もしくはそのひとつ下の産業グレード)を品質管理の観点から求めてくることも少なくありません。

車載半導体のその他の特徴(製造工程・販売単価)

車載半導体は通常の民生向け半導体と基本的に同じ材料、製造工程で作られます(例外あり)。トレーサビリティ管理などは強化されていますが、車載半導体だからといって特別な材料・設計・製造工程があるわけではなく、ウェハが出て来たあと選別作業を行い、厳しい試験項目を通過した出来が良いモノをスクリーニングして車載グレード品として出荷するのです(参考『車載品と一般品との差異について ローム株式会社』)

ただ、半導体は同じ製造工程・ウェハで作られたものであっても品質が高いモノであれば単価が上がる傾向にあります。例えば、下記はマウザーというカタログ半導体商社の現行在庫の一覧です(このページには誰でもアクセス・製品検索・価格検索が可能です)。

某SSDメーカーの2TB (MLC) 2.5inch SATAでソートし、それぞれ2種類の動作温度グレードの型番を抽出し赤枠で囲いました(上述の通り誰でもアクセスできる情報ですがメーカー名、型番は隠します)。上段が0度〜70度動作の民生品、下段が-40度〜85度動作のインダストリアル品で、違いは動作温度(品質)のみです。もちろん、下段のほうが品質としてはベターです。単価を見ると動作温度(品質)の違いで10%以上も価格差が発生していることがわかります。ただし、これはあくまでもカタログ商社の市場在庫単価ですので実際のビジネスに於いてはまた異なる価格適用がされることが考えられます。

高品質のダイはウェハ当りの取れ高が少なく、価格プレミアが付くことに加え、特に車載半導体は特別な管理が必要になるため、コストが単価に反映されることが考えられます。

個別半導体の信頼性認定ガイドラインとしては、米国ビッグ3 が中心になって策定され、今や世界標準になっているAEC-Q101があります。AEC-Q101 は、車載用個別半導体を認定するための信頼性試験規格で、必要サンプル数の多さや試験時間の長さから評価コストが膨大になるという問題があります。
(出典『個別半導体車載認定規格:AEC-Q101,AQG324,JEITA ED-4711を中心とした信頼性認定ガイドライン』)

車載半導体の市場

続いて、車載半導体市場についてお話いたします。車載半導体が半導体デバイス総出荷額に占める割合は約10%程度と半導体市場における存在感は大きくはありません。それではなぜ、車載半導体市場が注目されるのでしょうか。

車載半導体市場は伸びしろが大きい

半導体業界が車載半導体市場に注目する理由は、その成長率です。半導体市場の需要はメーンフレーム、PC、家電、スマートフォン、データセンターなど歳月をかけて変化してきました。栄枯盛衰という言葉の通り、そのサイクルは時代とともに移り変わります。

(画像出典 IC Insights – Communications IC Market to Again Surpass Computer IC Market)

WSTSが推定する2021年の半導体市場の成長率は20年比で+8%以上と予測されていますが、Trend Forceによると車載半導体の成長率は前年比+12.5%と、半導体市場の成長率を凌駕しています(参考『2021年の車載IC市場は前年比12.5%増の210億ドル – TrendForce予測』)。

また、KPMGによると半導体業界マネジメント層の多くが今後1年及び3年でIoT、車載・ワイヤレス通信・AIなどの15セグメントのうち、IoTに次いで2番目に車載市場を重要視すると答えたようです。もちろん通信やサーバー市場はウェイトが大きく重要なのですが、まだまだ伸びしろがあるセグメントとして車載市場が半導体業界内で重要視されていることがわかります。

それではなぜ、車載半導体の成長が期待されるのでしょうか。以下ではCASEという車のトレンドの観点から、車載半導体BOMコスト増加について解説を致します。

車載半導体のBOMコスト

CASEとは自動車の新たな技術やサービスなどの流れを表す頭文字をつなげた言葉で、それぞれ下記を意味します。

C = Connected つながる車
A = Autonomous 自動運転
S = Shared & Service
E = Electrification 電気自動車
これらのトレンドは車載半導体市場にとても大きなインパクトを与えます。特に、車載半導体市場の需要を伸ばすのはC, A, Eの部分でしょう。Cであればデータ通信、Aであればデータに加えてセンサーやデータ処理能力、またEであればパワー等それぞれ異なる分野の車載半導体需要を後押しします。

内燃エンジンから電動化に置き換わると半導体BOMコストが倍増

近年、テスラをはじめとする電気自動車が注目を集めていますが、車載半導体市場で自動車のパワートレインを語る場合、内燃 Only or 非内燃 Onlyで分けることが多く、特に後者をxEVというくくりで定義します(下記画像引用 経済産業省『自動車新時代戦略会議中間整理』より )。必ずしもバッテリーオンリーのパワートレインを指すわけではありません。

xEVに当てはまらない車両、つまりガソリンやディーゼル車の半導体BOMは平均して1台当たり約$350-$400程度と言われています。しかし、パワートレインの電動化により半導体のBOMコストは最大で約2倍(注・BEVなどを基準にした場合)になると言われています (下記グラフはInfineon Technologies Fourth Quarter 2020決算資料を基に筆者作成)。

パワートレインの電動化により恩恵を特に受けるのはパワー半導体です。xEVでは電気をエネルギーにした電動のモーターを使用します。特にモーターの制御インバーターに用いられるIGBTというパワー半導体の需要が高まります。下記のBOMコストグラフで言うxEV Powertrainに該当する部分ですね。

現在、パワートレイン別のシェアでみるとディーゼルもしくはガソリン車両が約80%以上という状況ではありますが、法整備やそれに伴うインセンティブを通じて何かしらの電動パワートレインを搭載した車両のシェアが伸びていくことがわかります。(画像 経済産業省『自動車新時代戦略会議』より)

ちなみに、筆者はドイツで働いていますが、ドイツにはカンパニーカーという制度があり、営業社員などに対して車が1台支給されることがあります。カンパニーカーは顧客訪問や出張などの業務上の利用に加えて日々の通勤やプライベート利用も可能な場合が多いです。その代わりに税制上はベネフィットと捉えられ、通常であれば支給された車の新車登録価格の1%が課税給与として毎月の給与に上乗せされ、最後に1%の車体価格が差し引かれます。

ドイツカンパニーカー制度 例
・額面給与 7,000EUR
・カンパニーカー Audi A6 60,000EUR * 1% = 600EUR
⇒7,600EURが毎月の課税給与として税金などが天引き、その後600EURも差し引かれ車の1%価格(600EUR)分に課税がされる仕組み
しかし、PHEV等、環境負荷の少ない車を選ぶとこの1%の課税分が0.5%に半減します。これは従業員にとって大きなメリットです(私もPHEVを選びました)。カンパニーカーはドイツの新車市場の需要の多くを占めており、また基本的にカンパニーカーはリース契約となっている場合が多く、3-5年に一度新車に変えることが多い為、このような法制度やインセンティブが電動パワートレインを積んだ車の需要を後押しすると考えられます。
統計にも現れており、コロナの影響で2020年の欧州新車市場はQ1-Q3で前年比-29%の減速となりましたが、電動パワートレインを搭載した車両の成長率が目立ちます。

自動運転で半導体BOMが約10倍に

続いて、自動運転が車載半導体市場に与える影響を説明いたします。自動運転はその機能等によってレベル0-5までの6段階に分けられています。日本では昨年、レベル3がいよいよ解禁になるというニュースが発表されました。

(画像出典 経済産業省『自動走行ビジネス検討会「自動走行の実現に向けた取組報告と方針」報告書)

自動運転のレベルが向上すると、究極的には人間による運転を必要とせず、システムがすべての動作を完結してくれます。事故時の責任を誰がとるか、といった法整備などがまだまだされておらず完全な自動運転はまだまだ先ですが、着実に車の機能は進化しています。

自動運転技術は米国自動車技術者協会(SAE)が「自動運転化レベル」としてレベル0~レベル5までの6段階に区分しており、レベル5では制限なく全ての運転操作が自動化されます
(JAF『現在の自動運転の技術レベルは』)

例えば、駐車時のリアカメラ、車の各所に取り付けられた障害物を検知するセンサー、走行中の自動レーン調整や車間距離調整、ハンドル操作のアシストなど、これらの機能を総称してADASと呼んだりします。

ADASにより恩恵を受ける車載半導体はセンサーなどもそうですが、特に単価の高いSoC・FPGAやRader・LiDARモジュールでしょう。高速で移動する車を様々な周辺の情報を利用し、瞬時に正確にコントロールする高性能な半導体が活躍するところです。

現在市販される乗用車のほとんどがまだレベル0/1/2までの段階となっておりますが、Level4/5になると搭載される車載半導体のBOMコストは10倍になると予想されています(下記グラフはInfineon Technologies 4th Quarter IRおよびKPMG『車載半導体:新たなICEの時代』を元に筆者が作成)

このように自動運転の進歩はADAS周りで使われる車載半導体BOMコストを飛躍的に伸ばします。ただ、筆者の個人的な考えではありますが、自動運転化はパワートレインの電動化に比べてまだまだロードマップが曖昧で、また環境負荷の軽減というわかりやすい効果が発生する電動化に与えられるような制度的なインセンティブが少なく、普及は一部のハイエンドモデルに限るのではないかとも考えています。

車載半導体の品目と用途例・車載半導体メーカーについて

続いて、車載半導体の品目例とその用途例、及びそれらを設計・開発・製造・供給する具体的な車載半導体メーカーについて紹介いたします。

車載アプリケーションだけに使われる特別な半導体というのが無いわけでは無いですが、車載半導体といっても、その多くがメモリや電源IC、イメージセンサなどの半導体品目で、スマートフォンなどにも搭載される一般的な半導体と共通しているのです。

車載半導体品目例 パワー半導体

パワー半導体は電力の制御を行う半導体です。特に車におけるパワー半導体が取り扱う電流や電圧はとても高いです。用途としてはインバーターというモーターを駆動する部分にIGBTというパワー半導体が使われます。パワー半導体のモジュールは単価が高く、上述の通り、パワートレインの電動化に伴い最大で車載半導体BOMコストを倍増させます。市場の伸び率が非常に高く、個人的には車載半導体の中で一番注目している分野です。

パワー半導体は日本の半導体勢がまだまだ強い分野だ、と言われますが個人的にはInfineon TechnologiesやST Microelectronics、またON Semiconductorといった欧米勢に注目しています。彼らは半導体専業メーカーであり、積極的に未来の技術に集中投資を続けます。例えばInfineon Technologiesはパワー半導体を生産するウェハ口径をいち早く300mmにしていますし、SiCといった新素材への投資も積極的です。

SiC(炭化ケイ素)は現行のSiよりも電力効率のいい素材で、GaN(窒化ガリウム)などと共に注目されています。SiCやGaNデバイスが占める半導体総出荷額の売上比率はまだまだ一桁前半%ですが、今後5年で10%以上の比率まで伸びると言われています(参考 EE Times Japan『SiCは自動車、GaNはスマホが普及をけん引 (1/2)』)。現在では様々な課題がありますが、10年以上の長いスパンでは特に車載分野におけるSiCを使った半導体が注目されるのでは、と考えています。

車載向けパワー半導体の代表的な半導体メーカー
・Infineon Technologies (インフィニオン・テクノロジーズ)
・ON Semiconductor (オン・セミコンダクター)
・ST Microlectronics (STマイクロ)
・三菱電機
・東芝
・Vishay
・富士電機
・Cree

車載半導体品目例 メモリ半導体

車載アプリケーションに使われる多くのメモリがDRAM・NAND・NORフラッシュと言えるでしょう。

DRAMは例えばカーナビのSoCのメインメモリとして使われます。また、同じくカーナビの基板上でFWなどを保存するメモリーはNANDで、現在のインタフェースの多くはeMMCが使われていますが今後、UFSというタイプのストレージインタフェースに移行していくと言われています(参考『キオクシア株式会社 – 車載機器用e-MMC/UFS』)。

また、NANDに比べて容量が低いものの、耐久性などの品質やスピードなどのパフォーマンスが優れているNORフラッシュというタイプのメモリも車載アプリケーションにはよく使われます。例えば、リアカメラが搭載されている車が標準になりつつありますが、シフトレバーをRに入れた瞬間にナビのモニター画面を瞬時にリアカメラに移し替えるためにはリアカメラ周りのマイコンの起動を早くする必要があり、FWを格納する場所として読み出しの早いNORフラッシュが活躍します(参考『NORフラッシュ、車載分野に活路』)。

車載向けメモリ半導体の代表的な半導体メーカー
DRAM: Samsung(サムスン), SK hynix(ハイニックス), Micron (マイクロン), Nanya (ナンヤ) 等
NAND: Samsung(サムスン), SK hynix(ハイニックス), Micron (マイクロン), Kioxia (キオクシア) 等
NORフラッシュ: Infineon(旧Cypress), Winbond, Macronix 等

車載半導体品目例 マイコン(MCU)

マイコン(MCU)はすでに様々なアプリケーションに使われています。簡単に、様々な車載部品を電子制御している半導体だと考えていただければいいでしょう。例えばリアカメラ、カーナビのタッチスクリーン、エアコン、ウィンドウ、ブレーキ、エアバッグ、エンジン、モーターなど様々なところでそれぞれの機能を電子制御するマイコンが搭載されています。なお、マイコンは大まかな半導体のファミリーとしてはCPU、SoC、FPGAなどと同様のプロセッサに分類されますが、CPUなどが演算処理を担うのに対して、マイコンは制御命令を担います。

マイコンには使われる用途の他に8bit, 16bit, 32bitという主に3種類のビット数があります。ビット数が大きくなるほど、高度な演算処理ができるハイエンド品になるとイメージしていただければOKです。単純にマイコンの金額シェアだけを見るのではなく、なるべくハイエンドのマイコンでシェアが高いメーカーがこれからの車載半導体市場において強いかな、と思います。下記グラフは2019年のQ1/Q2に限った車載マイコンのタイプ別シェアになりますが、32bit品が圧倒的なCash Cowであることがわかります。

車載向けマイコン(MCU)の代表的な半導体メーカー
・Renesas (ルネサス)
・NXP
・Infineon Tecnhologies (インフィニオンテクノロジーズ) *Cypress買収分含む
・Microchip (マイクロチップ)
・ST Microelectronics (STマイクロ)
・Texas Instruments (TI)
・Silicon Laboratories (シリコン・ラボ)

車載半導体品目例 アナログ半導体

アナログ半導体は車載市場において成長率が非常に高い半導体の一つです。アナログ半導体というと、アナログ信号を処理する半導体を総じてそう呼ぶのですが、代表的なところでいうとオペアンプ、LDOレギュレーター、バッテリー保護ICなどでマイコン周りの電源などに使われます。また、アナログ回路とデジタル回路の混在するミックスド・シグナルもマーケット観点ではアナログ半導体に分類します。

一見すると影が薄いように聞こえる(私だけ?)かもしれませんが、車載アプリケーションにおけるアナログ半導体はもちろん重要な役割を担っています。例えば、ブレーキの制御とか、EVのようにアクセルペダルとモーターが直結する設計の車の制御には上記のマイコンが使われます。しかし、制御と言っても『ただ動かして、止める』というような簡単なものではありません。なるべく自然体に人間が運転するような動きを実現することが理想です。ブレーキをちょっと踏んだだけで急に車が止まったり、アクセルを少し踏んだだけで急加速したら、危ないじゃないですか。そういった動きを制御するのはマイコンの仕事ではあります。

そこでアナログ半導体は、例えば人間が踏んだブレーキペダルの程度とか、アクセルペダルの踏み込みといったアナログな感覚をデジタル信号に変換してマイコンにお伝えするするのです(最近だとオシャレな横文字でセンシングとか言われてます)。また、回路の微細化に伴いSoCやマイコンの電源電圧は下がっています。すると、いままで許されていた誤差の許容範囲の絶対値が狭まり、より優秀な電圧管理が求められます。それらの電圧を制御するのもアナログ半導体の仕事で、マイコンなどのパフォーマンスを最大化する上で非常に重要な機能を担っています(参考 日系Xtech Special『アナログ・デバイセズが挑むクルマの未来 2018』)。日系大手のルネサスなんかはそういった観点からインターシル(パワーマネジメント)とIDT(アナログ)を買収し、主力製品のマイコンやSoCと共にソリューションを提供しシナジーを出す戦略を取ったと言われています。

代表的な車載アナログ半導体メーカー
・TI(テキサス・インスツルメンツ)
・Analog Devices(アナログ・デバイセズ) *Maxim Integratedを買収予定
・Infineon Technologies(インフィニオン・テクノロジーズ)
・ST Microelectronics(STマイクロ)
・NXP

車載半導体品目例 SoCとFPGA

近年注目を集めているのが車載用SoC及びFPGAでしょう。パソコンで言うCPUのような中央演算処理チップが車にも搭載されると考えてください。回路ブロック図はマイコン(MCU)と同一の構成なのですが、マイコン(MCU)が制御命令を担うのに対して、SoC・FPGAは演算命令を得意とします。車載SoC・FPGAの需要が増えている背景はADASです。車の走行中に周辺の環境からドライバーをアシストしたり、また自動運転のレベルが進み自動運転が実現すればより優秀な車の頭脳となるSoC・FPGAが必要となります。

また、それぞれの制御ユニットを個別で持つのでなく、パワフルで頭のいい中央集権型のSoCに任せたほうが各ユニットの連携を向上させますし、部品点数を減らすことにも繋がります。

このような車載SoCは上記で説明した自動運転のレベルが高度化するに連れて活躍していくと思われます。車が今までの様にただ移動するモノでなくなり、周辺の環境を自身で察知して自動運転したり、外部と常に接続したりと様々な機能を盛り込むにつれて中央制御する車載SoCのような存在が不可欠になるからです。もちろん、ハードウェアだけでなくソフトウェアの重要性も飛躍しますので、車のモジュール化・プラットフォーム化といった新たなエコシステムが生まれるのです。

TeslaはもともとADASチップにNVIDIAのGPUプラットフォームを採用していましたが、いち早く内製化を発表しました。自動車のシステム汎用化・プラットフォーム化が進む中、外部のプラットフォームに依存せず差別化を測る戦略がAppleに似ているな、と筆者個人的には考えています。

代表的な車載SoC・FPGAの半導体メーカー
・Intel *FPGA大手のAlteraを2015年に買収
・Xilinx (ザイリンクス) *AMDが買収予定
・Renesas (ルネサス)
・Nvidia (エヌビディア)
・Infineon Technologies (インフィニオン)
・Qualcomm (クアルコム)
*TeslaはNVIDIAを使っていたが内製化を発表

車載半導体品目例 通信用半導体

車が進化するにつれ、車一台が処理するデータも膨大になります。たとえば車に取り付けられたセンサーからの膨大な情報、それを処理する各マイコンや中央統合型のSoC、外部ネットワークとの接続及びセキュリティなどなど挙げればキリがありません。

データの処理というと、やはりSoCやメモリを思い浮かべると思いますが、通信周りを担う車載半導体の需要も増えています。様々な機能が車に取り付けられるに従い、車内データ通信の交通整理をする必要が出始めました。現在は80年代にボッシュが開発したCANというプロトコルが主流です。ただ、ADASやインフォテイメントなどの機能が進化するに従い、車で処理される情報量が増えています。増え続ける通信量に対応するにはGbpsクラスの高速な通信速度が必要となると言われていますが、CANの通信速度は8Mbps程度でありこれでは到底処理が追いつきません。そこでEthernet(イーサネット)と言われる通信プロトコルが主流になりつつあります。

例えばドライバー・アシスタントの機能では車の各所に取り付けられた障害物センサに加えてカメラから情報が入ってきます。取り付けられるセンサの量が増えるのに加え映像などサイズの大きなデータが発生しますので処理する情報量が増えます。また、車内インフォテイメントの拡充も通信量を増やします。十数年前の車はCDを再生し、後付で市販のカーナビを取り付ける程度でしたが、今の車はすでにカーナビがコックピットに埋め込まれ、デジタルクラスタとも連携し、また場合によってはリアシートにもモニターが取り付けられ映画を見たり、車内に埋め込まれたスピーカーで音楽を楽しんだりする環境になっています。そこでEthernet PHYやSwitchといった通信チップの需要が増えています。

また、将来の車は遠隔操作などの機能を盛り込み、常にクラウドと接続するようなことも想定されます。このような移動通信にはやはり5Gが有力視されています。

代表的な車載通信用半導体メーカー
・Broadcom (ブロードコム)
・Marvell Technology Group (マーヴェル)
・Microchip (マイクロチップ)
・Qualcomm (クアルコム)
・NXP
・Infineon Technologies

車載半導体品目例 センサー

現在、そして未来の車には膨大な量のセンサーが使われます(そしてもっと使われるようになります)。センサーと一口に言ってもいろいろな種類がありますので代表的なものをそれぞれ簡単に説明します。

加速度センサー

動きや振動、衝撃などを検知する。例えばエアバッグの起動などに用いられる。民生ではスマホの手ブレ補正やニンテンドーWiiのようなゲーム機にも利用されています。

圧力センサー

エンジンやブレーキなどの油圧制御、燃料タンクの漏れ検知、タイヤ空気圧監視システムなどで使われています。

角速度センサー

ジャイロセンサーとも呼ばれます。物体の回転や向きを検知するのに利用されます。例えば車の進行方向などをカーナビに反映させることができるのもこのジャイロセンサーのおかげです。

イメージセンサー

レンズから入った光をデジタルに変換する半導体です。有名どころだとやはりSONYのCMOSセンサーで、現在需要の多くをスマートフォンが占めています。しかし、車には駐車アシストをするリアカメラや走行中にレーンや周りの障害物・人・車の動きを検知するADASシステムが盛り込まれて来ており、そこにはCMOSイメージセンサーが必須です。

代表的な車載用センサー半導体メーカー
・Sony
・ON Semiconductor (オン・セミコンダクター)
・ams (エーエムエス) *車載LEDに強いOsramも買収
・Infineon Technologies
・NXP
・ST Microelectronics

まとめ

以上、車載半導体とは何か、車載半導体市場について、具体的な車載半導体の用途例と代表的な半導体メーカーについて解説をいたしました。

半導体市場における車載半導体市場の占めるパイはまだまだ小さいですが、圧倒的な伸びしろが期待される分野です。

特にパワートレインの電動化によるパワー半導体需要の増加や自動運転レベルの向上による車載SoC、マイコン、センサーなどの市場拡大が楽しみです。

 

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