車載半導体大手各社の2020年決算振り返り

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現在、半導体不足が連日ニュースになっています。特に、車載半導体と呼ばれる車の部品に使用される半導体の供給不足が深刻な状況になっており、自動車大手各社が減産を発表したり、半導体メーカーへ増産要請を出すというニュースが取り沙汰されると言った少々異常な状況です。個人的には2020年の春にコロナ第一波で車載半導体大手が大きなマイナス影響を受けて苦しんだ際スポットライトは当てられなかったのに、モノが無くなったら大げさに騒いで嫌な奴らだなぁ・・とか思っていますが。

世界的にクルマ減産へ、車載半導体不足の本当の原因 ボトルネックは台湾TSMCの先端半導体 | JBpress (ジェイビープレス)
2021年は年明け早々、クルマ業界には車載半導体の供給不足という大問題が持ち上がった。そこで本稿では、なぜ車載半導体が不足するのか、その真相究明を試みたい。(1/6)
半導体不足による自動車減産、第3四半期まで継続も=IHS
IHSマークイットは3日、自動車向け半導体の不足により、世界の小型乗用車67万2000台分の生産が第1・四半期に影響を受けるという見通しを示した。混乱は第3・四半期まで続く可能性があるという。

本記事では2021年1月〜2月にかけて出揃った車載半導体大手のCY2020通期およびCY20 Q4の決算発表を通して車載半導体市場の回復と今後の展開について考察していこうと思います。

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この記事で取り上げる車載半導体メーカー

まず、車載半導体というのは車に使われる半導体全般を指し、車載半導体という特別な品目があるわけではありません。

車載半導体市場を解説
車載半導体は2021年現在、半導体デバイス総出荷額の約10%程度しか占めませんが、半導体業界では非常に注目されている市場です。この記事ではパワートレイン電動化やADASといった観点から車載半導体市場の成長、また車載半導体のユースケースや代表的半導体メーカーについて解説します。

この記事では、売上比重に占める車載用途割合が大きい下記の6社を取り上げて考察いたします。

・Infineon Technologies
・ST Microelectronics
・NXP Semiconductors
・Texas Instruments
・ルネサスエレクトロニクス
・ON Semiconductor

なお、日本の車載半導体大手ルネサスエレクトロニクスは本記事執筆時点で決算が未だなので、別途記事にて取り上げることにいたします。

(追記: 2021年2月10日)ルネサスのFY20決算内容を追記しました

車載半導体大手6社の対売上車載比率と前年度比較

それではまずはじめに、各社の直近の通年決算資料から総売上に占める車載比率と売上変化率を見てみます
(*注: InfineonのFiscal Year 10月開始・9月末締め、1EUR = 1.12USD換算)
(ルネサスの決算 1USD = 107円換算)

総売上ではTIが圧倒的ですが、車載売上で見るとInfineon、NXP、STMの順で大きいことがわかります。また、6社中4社が2019年比で売上Upしたのに比べて車載事業では6社中5社が2019年比で売上Downとなりました。なお、唯一売上がUpしたInfineonはQ2から買収したCypressの売上が加算されており、旧Infineon-Onlyに限ると車載半導体事業の売上Downが想定されます。

(2月10日追記)ルネサスだけは総売上・車載売上共に前年比ダウンとなりました

上記6社で車載半導体市場売上の約50%を占めていると言われています(参考 Q1 FY21 Infineon Technologies Earnings)

続いて、各社の決算内容を見ていきます。

Infineon Technologies

Infineon Technologies (インフィニオン・テクノロジーズ)はドイツのミュンヘンに本社を置くドイツの大手半導体メーカーです。Siemensの半導体部門が独立して出来た会社で、2006年に汎用メモリ部門をQimonda(キマンダ)という新会社を設立し分社させ(その後、破産)今では車載と産機向けの半導体に注力しています。なんだか、日本の半導体メーカー達の歴史と似ていますね。

InfineonのFY20の前年度比売上は+7%、車載事業の売上は+1%でした。ただし、InfineonのFiscal Yearは10月初め9月締めなので、上の数字は2019年10月〜2020年9月末の数字であること、そしてCQ2から買収したCypressの売上が計上されていることに注意です。

Infineonの2020年車載事業推移

Infineonの四半期ごとの決算と車載事業の推移をグラフにしました。なお、上述の通りInfineonのFiscal Yearは10月から始まりますが、下記グラフではその他4社と比較のためにカレンダーイヤーの四半期推移を示しています。

Infineonはアメリカの車載向けNOR Flash・マイコン大手のCypress Semiconductorを買収し、2020年のCQ2該当分からCypress分の売上が加算されました(CQ2の車載に占める割合の25%程度とのこと)。にもかかわらず、Q2はコロナの影響を受け車載事業の売上がQoQ/YoY共にマイナスとなっています。Cypresの追加分を差し引いた旧Infineon-Onlyの売上は-25%だったとのことです。

しかし、CQ3から復活が鮮明になっており、特に車載事業のQoQ売上変化率はQ3/Q4共に総売上の変化率を凌駕していることがわかります。決算資料やCallでは特にEV関連の売上の伸びが強調されていました。

Infineon の車載事業利益率

Infineonは丁寧に事業部ごとの利益率を開示しています。下記グラフの緑線はInfineonトータルの営業利益、青線は車載事業部に限った営業利益です。

Infineonは売上の4割を車載事業に頼っているものの、車載事業部の利益率は見劣りしていることがわかります。特にCQ2はコロナウイルスによる売上減、稼働率減、その他費用により赤字転落となりました。一方で、CQ4に入り、急速に利益率が改善しています(ただし、Nonrecurring benefitが全体の1-2%程度を占めるとのこと)。また、Infineonの過去の実績を見るとFY16〜FY19は車載事業部の利益率も10%中盤程度で安定的に推移しており、2020年に限って4%に落ち込んでしまいましたが、今後のOutlookでは再び10%台の推移を見ているようです。

Infineon 2021年Outlook

Infineon Technologiesは2021年2月4日の四半期決算発表にて下記のガイダンスを示しています。

・CQ1 2021: 売上 2.5B-2.8B EUR / 営業利益率 16.5%
・FY21(2020年10月〜2021年9月): 売上 10.8B EUR ±5% (+26%) / 営業利益率 17.5%
・2020年比で市場は10%中盤台の回復
・目先の車生産台数は半導体供給不足がボトルネックとなるが下半期から供給改善
・ヨーロッパを中心に税制上のメリットなど政策に後押しされる形でxEVシェア向上
→車載半導体の売上向上につながる
・2020年 xEV販売台数と2019年比変化率
→世界 約320万台 (+43%)
→中国 約130万台 (+12%)
→EU 約115万台 (+167%)
→ドイツ 約40万台 (+256%)
→アメリカ 約32万台 (+4%)
→韓国 約5万台 (+51%)
→日本 約3万台 (-28%)
まだまだコロナウイルスによる不確実性は残るものの、車載市場は2020年比で10%中盤台のリバウンドを見ています。また、HEV・PHEV・EVなどパワートレインの電動化(=パワー半導体等の所要が増す)がなされたxEVのシェアも欧州を中心に伸びていく予想がされており、車載半導体市場の成長の後押しを促します。さらに、現在各所で問題になっている車載半導体不足を起因とした車の減産も、各半導体メーカーのProduct Mix改善や生産能力増強により下半期から正常化していくと見ているようです。

NXP Semiconductors

続いてはオランダの大手半導体メーカー、NXP Semiconductorsの決算を見てみます。NXPはもともとPhillipsの半導体部門でした。NXPの売上に占める車載半導体の割合は約44%と高いです。特にマイコンやセンサー、通信といったタイプの半導体のシェアが高いです。

NXPのFY20の前年度比売上は-3%、車載事業の売上は-9%でした。

NXPの2020年車載事業推移

NXPの2020年四半期ごとの総売上と車載事業(青部分)の推移を見てみます。

Infineonの場合はQ2からCypress買収分の売上をConsolidateし始めた為、コロナウイルスのインパクトが見えにくかったのですが、NXPの場合はCQ2車載事業のQoQ/YoY変化率がそれぞれマイナス30%超えとその影響が鮮明です。一方で残りの売上をモバイルやIIoT、基地局などコロナ禍においても比較的好調であったビジネスが占めているため、全体の減少率はそれほどは車載事業単体よりはマイルドです。

一方でCQ3からは車載半導体の盛り返しが鮮明で、特にCQ4はQoQ/YoY共に回復を示唆しています。

NXP 2021年 Outlook

NXPはCQ1 2021のガイダンスを売上$2,475M (QoQ -1%/YoY +22%) 〜$2,625M (QoQ +5%/YoY +30%)としています。事業部ごとのBreak Downはありませんが売上の50%近くを車載半導体に頼っており、また季節的に需要が弱くなるスマホや投資の一服感が出ている5G基地局の状況を鑑みると、車載事業が牽引していくのではないかと推測できます。

NXPの今後3年間の売上成長を5%〜7%にしているのに対し、車載半導体事業の同期間売上成長率を7%〜10%としており、車載半導体は引き続きNXPの事業の中核を担っていくことがわかります。

ST Microelectronics

ST Microelectronics(STM)はフランスのトムソンとイタリアのSGSの半導体事業が合併して誕生した会社で大人の事情によりスイスのジュネーブに本社を置き、オランダに法人登記をしています。

車載の売上は約30%程度とNXPやInfineonよりはやや少ないです。STMのFY20の前年度比売上は+6.9%、車載事業の売上は-10%でした

STMの2020年車載事業推移

STMの四半期ごとの売上推移は以下です。

STMも例に習ってコロナの影響を受けましたが、NXPやInfineonと比べるとすこし動きが違いますね。NXPやInfineonはQ2からインパクトを受けているのに対してSTMはQ1に大幅な減収を受け、その後比較的まろやかに回復していきます。

理由は2つ考えられ、一つはSTMの車載売上比重が30%程度と比較的に低いことからSTM全体の売上に対する影響が比較的に少なかった。もう一つは上記2社の地域別売上比率がコロナのインパクトを大きく受けた欧州に依存しているのに対し、STMは早期にコロナの打撃を受けたが比較的迅速に回復をした中国・アジアの売上比率が高いことが考えられます。

STM 2021年 Outlook

CQ1 2021の売上ガイダンスはQoQ -9.5%の約$2,930Mとしています。
2021年はSmart Mobility、Power&Energy、IoT&5Gといったセグメントが需要を牽引していくとしています。また、現在の半導体サプライチェーンについてもメーカー在庫だけでなく、代理店など市場在庫を含めたすべての在庫水準が極度に低下しており、特にPCやサーバー向けの在宅関連需要に車載半導体供給分が食いつぶされている、とコメントをしています。

Texas Instruments (TI)

アメリカの大手半導体Texas Instruments(TI)の売上は約20%が車載から来ています。他の半導体メーカーと比べると、少々少ないですが、TIは車載を戦略的事業として位置づけており、特にInfotainment・ADAS・パワートレイン・Safety・ボディに注力しています。

In automotive, we invest in five sectors: infotainment & cluster; advanced driver assistance systems (ADAS); hybrid, electric & powertrain systems; passive safety; and body electronics & lighting. Our strategic emphasis on industrial and automotive revenues has produced long-term results. Revenue from the combined industrial and automotive markets was about 57% of our revenue in 2020, up from 42% in 2013.

Texas Instruments – Investor Overview

TIの2020年売上成長率は前年比+0.5%、車載事業は-1%でした。

TIの2020年車載事業推移

TIはエンドマーケットごとの売上Break Downを細かく開示していないので詳しいグラフが作れませんが、決算資料とConference Callの内容から総売上と車載売上の変化率のグラフを作成しました。TIは特にアナログ半導体のシェアが高く、2020年の市場別売上の57%をAutomotive&Industrialが占めました。

TI 2021年Outlook

TIはCQ1 2021の売上ガイダンスを約$3,790M〜$4,110Mとしています。2021年の売上については車載、インダストリアル、コンスマーの強い需要を示唆しており、特にCQ1の車載半導体売上はQoQ +19%、YoY +25%をアナウンスしています。

ルネサス・エレクトロニクス

続いて、日本の半導体大手のルネサスの決算です。ルネサスは日本の半導体メーカーですが2016年から会計年度を12月末日締めにしています。ですので、今回の決算はFY20通期の決算結果となります。ルネサスは2017年にPMIC(パワーマネジメントIC)などに強いインターシル、2019年に同じくアナログのIDTをそれぞれ買収完了しています。今回ミックスドシグナルやPMIC大手のダイアログの買収を発表しました。

ルネサスが何かをやると、なぜかとことんディスられるのですが、半導体業界は食うか食われるかの世界になっていますし、買収でポートフォリオを補完するのは半導体メーカーの常套手段です(うまくシナジーが出せれば)。

ルネサスの2020年売上は-0.4%、車載事業の売上は-8.1%でした。

ルネサスの2020年車載事業推移

ルネサスは6社の中で車載ポートフォリオの比率が約47%と最も高いです。欧米の半導体メーカーよりも日本のOEMやTier 1への売上比重が特に高いことが特徴でしょう。売上こそ減りましたが、最終損益はFY19の-63億円から一転して456億円の黒字で締めることが出来ました。比較的利益率の高いデータセンター向けセグメントが貢献したとのことです。

ルネサスの車載事業営業利益

ルネサスはセグメントごとの利益率を公開していますので、車載事業の利益率を見てみます。営業利益はいうほど悪くなく、特にFY19と比べて収益性は改善していっているようですね。FY18の終わりは赤字、FY19の頭は特に車載の利益率は虫の息状態でしたがFY20は通年で14.2%となっています。

前工程稼働率

個人的に筆者が気になったのは自社ウェハ工場の稼働率の低さです。ルネサスは自前の6インチ・8インチ・12インチラインを持っていますがQ4になり稼働率は上がっているものの、未だ80%を切る水準です。

ライバルのInfineonは直近のConference Callにて稼働率がすでに90%中盤に達していることを述べています(参考 Q1 FY21 Infineon Conference Call)。また、台湾の受託製造大手TSMCやUMCは8インチも12インチもほぼ100%の稼働率となっています。

コロナ禍のCQ2の稼働率の落ち込みが特にひどいですが、同時期の世界の半導体の前工程工場稼働率は約88.8%だったようです(参考 日経新聞『半導体工場、コロナ下でも高稼働 デジタル革命進展で』)。ただし、これは主に在宅需要によるデータセンターなどの需要増を受けたロジックやメモリが底上げをしていると考えられ、大きなインパクトを受けた車載半導体の稼働率が下がったのはルネサスだけでは無いはずです(Infineonも同時期は稼働率が落ち込み、車載事業は赤字)。

ルネサス 2021年 Outlook

ルネサスは2021年Q1の売上ガイダンスを約1970億円~2050億円としています。さらに、これまで保守的に抑えてきた設備投資額もQ1に引き上げる予定で、IGBTの300mmウェハの推進などをアナウンスしました。

ただ、IGBTなどパワー半導体のウェハ大口径化(300mm)はInfineonが先行しており、ST MicroやON Semiconductorなどの欧米勢がそれに続いている状況です。

特にInfineonは300mmウェハでのパワー半導体量産をすでに初めており、随時12インチラインへ生産移管をしています。するとライン新設が難しいレガシーの8インチラインや6インチラインに比較的余裕が生まれます。特に6インチラインはSiCパワー半導体など、次世代半導体向けに転用する計画もされており、中長期の視点でファブの活用と運営を計画しています。これについては筆者の過去記事を御覧ください。

パワー半導体勢力図を解説
ディスクリート・パワー半導体市場と半導体メーカーの勢力図について解説します。パワー半導体は日常の様々な場面で使われていますが、ハイブリッド車等の普及に伴い車載市場での成長などが今後は期待されます。SiCなど次世代素材も出てきています。本記事ではパワー半導体の市場と各メーカーの勢力図などについて説明します。

ON Semiconductor

ON Semiconductorはアメリカの大手半導体メーカーで、特にパワーディスクリートのシェアが高いです。また、イメージセンサーのOptinaを数年前に買収し、センサー事業にも注力しており、特に車載向けCMOSイメージセンサーのシェアはダントツになっています。パワー半導体はPHEVやEVなどパワートレインの電動化に伴い需要が伸びる半導体であるのに対し、イメージセンサーは車の自動運転レベルが向上すればするほど、需要が伸びる半導体ですので車載市場の進化に対するカバレッジがあって面白い製品ポートフォリオだと思っています。

ON Semiconductorの2020年売上は+4.8%、車載事業の売上は-7.6%でした。

ONの2020年車載事業推移

ONの四半期ごとの売上です。車載の売上比重は約34%となっており、その大半をパワーディスクリートが占めます。個人的には上述したとおり、パワートレインの電動化とADASの普及に伴い単価の高いIGBTパワーモジュールの売上と、現在は売上の14%しか占めないIntelligent Sensing Groupの成長に期待しています。ただ、2025年以降といった中長期のスパンで見る必要があるかもしれません。

ON 2021年 Outlook

ONはCQ1の売上ガイダンスを$1,410M ~ $1,510Mとしています。

2021年の市況については他社と同様、強い底堅い需要に自身を見せており、現在顧客と価格値上げ交渉を実施しているようです。

Hassane El-Khoury — President, Chief Executive Officer, and Director of ON Semiconductor Corporation

Yes. For the pricing, I mean, we see a healthy pricing environment. Obviously, there are price increases that we have incurred from our supply chain, and we are working with customers to pass those on down the supply chain from where we are.

(ON Semiconductor Q4 Earnings Conference Call Transcript)

また、同じQ4 Conference Callでは、ADAS分野での大型案件のWinや車載分野におけるIGBTモジュールやSiCパワー半導体の動向などについて言及しているのも興味深いです。

Our design win funnel continues to expand. We won ADAS and viewing sockets on many of the recently announced platforms. We also secured a win for our LiDAR products with a European automotive OEM. We expect this win to ramp later this year. Another significant design during the fourth quarter was with a major Tier-1, for our sensor module, which features a lens integrated in a sensor package for in-vehicle experience application.We continue to see strong momentum for our Silicon Carbide and IGBT product for electric vehicles and expect to see strong ramp in our EV-related revenue with various models going production in 2020 and 2022.

(ON Semiconductor Q4 Earnings Conference Call Transcript)

おまけ TSMCは車載半導体のボトルネックか?

最近の車載半導体の供給不足はTSMCがボトルネックになっている、という記事をよく見ます。私も現場にいる人間ですので、このことはある程度感知しており、確かにTSMCに製造を委託しているデバイスの車載向け出荷がとても悪いことは身にしみて感じています。

ただ、公に書けることも少ないのでTSMCが発表している決算資料を見てみようと思います。

TSMCの車載半導体売上とQoQ変化

TSMCの決算資料によると、車載の売上比率は3%ととても小さいです。またFY20を通じてのPlatform別の売上は車載のみが-7%と一人負けしている状況です。

続いて、四半期ごとのQoQ売上変化率を筆者がグラフにしました。色を合わせたつもりですが、車載は左から4番目のピンク色のグラフです。

TSMCはスマートフォンやHPC、コンスマーなど多彩な顧客をもっておりムラがあるのは事実なのですが、車載だけが唯一、Q1〜Q3までマイナス成長をしています。

TSMCの売上のうちたった3%しか占めない車載半導体事業はとてもではないですが、TSMCにとっては『優良顧客』として位置づけられるわけがなく、さらに『ブレブレのFCSTと実績を出してきた前科があるのに、いきなり需要の急回復を理由にFCSTを戻されても、そんな簡単には戻せませんよ』というのが現状だと思います、とても簡単に言えばの話です。

ただ、車載半導体の供給がキツイのはTSMC生産分だけではありません。上記5社は一部生産を外部委託しているものの、自社で生産設備を持ったIDMで、外注分に限らず供給が滞っているのが事実です。

半導体マーケットの需要と供給のバランスも、供給逼迫状態となっており、特に車載半導体で使われるようなレガシー半導体は生産設備の増強が難しい、また使用するウェハの口径も8インチと小さく、さらにプロセス移行もしにくく供給が増えにくいという構造的な問題があるため、慢性的な逼迫状態はしばらく続いていくのではないかと考えています。

一方で、現在のような商社の倉庫もスッカラカンな市場在庫もゼロという状況はQ2の中盤〜終わりを目処に改善していくと筆者は考えています。よろしければ下記の過去記事を御覧ください。

2021年 半導体需要の『緩み』を予測
2021年は通年で半導体需要が強く、半導体業界にとってはいい年となりそうです。ただ、Q2終盤ころに一時的な需要の減速や市場在庫調整を背景に半導体需要の緩みが入ると考えます。

まとめ

以上、車載大手半導体5社の2020年決算と車載事業の四半期の推移についておさらいと考察をいたしました。

・5社中4社は2020年売上は前年比成長しているものの、車載売上はマイナス成長
・唯一プラス成長のInfineon Technologiesは途中から旧Cypress売上が加算されて+1%なので実質的に全社マイナス成長
・各社ムラはあるものの、Q3から急速に車載分野の売上が回復
・2021年の市況については底堅い需要に対する自身感を見せる
・車載半導体は製品サイクルが長く、xEV(PHEV・EV等)の普及や自動運転技術向上&法整備進歩から新製品に対する開発と拡販に言及していて個人的には楽しみ
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