DRAM eXchangeとメモリ半導体価格

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台湾のTrend Forceという調査会社が運営しているDRAM eXchangeというメモリ半導体スポット価格情報媒体の見方と使い方について解説します。

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DRAM eXchangeとは

DRAM eXchangeとは台湾のTrend Forece社が運営する汎用メモリ半導体のスポット価格情報媒体です。主に汎用メモリのDRAMとNANDのデイリーの価格を無料で見ることができます。

DRAM eXchangeは半導体業界の市況を知る上で非常に重要な情報源で、半導体メーカー各社、電機メーカー各社調達、調査会社、金融関係者など様々なところで重宝されています。日本経済新聞なども毎週水曜日にDRAM eXchangeのスポット価格情報を引用しており、半導体業界のニュースには必ず出てくる情報です。

メモリ半導体スポット価格とは

メモリ半導体とは、ここではDRAMおよびNANDフラッシュという2種類の汎用メモリを指します。また、スポット価格とは非大口価格、つまり小口価格のことを指します。DRAM eXchangeではDRAM・NANDの小口価格(スポット価格)情報を毎日提供しているのです。

なぜ、メモリスポット価格が半導体業界の市況を知る上で重要なのか説明します。

汎用メモリ半導体は水モノだから

数ある半導体のうち、汎用メモリはコモディティとして分類されており、基本的にどこの会社のメモリを買っても同じです。例えばSoCなどであればシステムの主要部分となり、簡単に他社製品に置き換えることはできません。一方でDRAMやNANDなどの汎用メモリは置き換えが容易なコモディティ製品とされます。

それにより、半導体を調達する電機メーカーなどの顧客は価格を元にだいたい4半期に一度、調達先のシェアを決めます。即ち、汎用メモリは価格勝負であり、もっというと需給バランスがメモリ半導体の価格を決めるのです。データセンター向けの投資が活発になったり、5Gスマホなど新製品が発売され販売が好調であれば半導体の需要が旺盛になり、供給不足に陥りやすくメモリ価格は上がりやすくなります。一方で、投資が抑制され顧客の在庫が積み上がると供給過多となりメモリ価格は下落しやすくなります。

これにより、メモリ半導体価格は半導体業界の市況の先行きを測る重要な指標とされています。

大口価格は3ヶ月に一度変わるが、スポット価格は毎日変わる

メモリ半導体の価格には大口価格とスポット価格(小口価格)があると言いました。大口価格とは、Appleやソニーといった大手の調達先とメモリ半導体各社が価格交渉によって妥結した価格で、コントラクト価格とも呼ばれます。これは基本的に物量とともに4半期に一度、つまり3ヶ月に一度更新されます。

一方でスポット価格は毎日更新されます。スポット価格は製品によりますが、主に3rd Party Makerのメモリ調達価格です。3rd Party Makerとは自分たちでメモリのウェハ製造は行わず、SamsungやKioxia、Micronなどの半導体メーカーからウェハを調達し、自社ブランドでSDカードやSSDなどをアッセンブリするメーカーのことを指します。大手だとTranscendやADATAなど台湾企業が多いです。また、究極的には秋葉原で売られているような民生向けSSDやSDカードなどの価格もスポット価格に含まれます。

このようにコントラクト価格(大口価格)に対してスポット価格(小口価格)は毎日変動し、さらに顧客バイアスのかからない生の需給状況が反映されるため、半導体市況の最大瞬間風速を知るのに役立ちます(例えばAppleのような大口顧客であれば供給がキツくてもなかなか値上げができない)。

スポット市場は需給のバッファ調整役

スポット市場はメモリ半導体需給のバッファ調整役として機能します。半導体メーカーはメモリに限らず、供給過多だからといって工場の生産調整を簡単にすることはできません、基本的に半導体の生産ラインは動き続けなければなりません。加えて、メモリ半導体メーカーは毎月末になると在庫を空にしたがる傾向にあります。

半導体の需要の大部分は大口顧客の消費に依存します。しかし、新型スマホの販売が不調に終われば顧客も生産と調達量の調整をしなければならず、必ずしも価格交渉時に妥結した物量を買えるとは限りません。そうすると、メモリ半導体の需要に対して供給が過多になり、行き先がなくなった物量はスポット市場に押し込まれます。ここで経済原理が働き、供給過多であれば大手のメモリメーカーは価格を下げてでも在庫を空にするために3rd Partyメーカーへウェハを叩き売ります。

一方で、需要が供給に対して強い状態であれば、大手半導体メモリメーカーは大口顧客の需要を優先する傾向にあるため、スポット市場にメモリが流れません。そうすると3rd PartyメーカーはSSDなどが作れなくなってしまうので、高値で提示されたウェハを買わざるを得なくなり、メモリスポット価格が上昇するのです。

DRAM eXchangeの見方

それでは具体的にどのようにDRAM eXchangeを見ていけばいいのか説明します。DRAM eXchangeにアクセスするとわかるのですが、下記のスクショのようにいろいろな種類の製品の価格情報が羅列されています。ですが、基本的に見れば良い項目はDRAMとNANDそれぞれ1セクタずつになります。

DRAM Spot Price

まず、DRAMの場合はDRAM Spot Priceを参考にします。ここにもいくつかの種類が有るのですが基本的には8Gb DDR4と4Gb DDR3の価格だけ参照すればOKです。これらを参照することでPC・サーバー・コンスマーマーケットの市況がわかります。

8Gb DDR4: 主に現在のPC・サーバーモジュールの主要DRAM単品
→PCおよびサーバーマーケットの市況を表す
→PC・サーバーはメモリ半導体の大口需要の一つ

4Gb DDR3: 主にコンスマーマーケットの主要DRAM単品
→以前はPC・サーバーの主要単品だったのですが、インテルのSkylake以降レガシー化しました
→ただ、現在もテレビなどコンスマー市場における主要品として流通しています

NAND Wafer Spot Price

NANDの場合はWafer Spot Priceを参考にします。NANDはSSDやスマートフォンのストレージなどデータを記憶するメモリです。現在のSSDやスマホ向けストレージは3D TLC 256Gbもしくは3D TLC 512Gbをベース・ダイとしているため、この2タイプのNAND価格を見ることでデータセンターやPC向けのSSD引き合いの強さ、及びスマートフォンの生産動向を予測することができます。

あくまでも指標

以上、DRAM eXchangeのメモリスポット価格情報の参照の仕方となぜメモリスポット価格が半導体市況を知る上で重要な指標になるのかを説明しました。ただ、メモリ半導体の価格はすべて『需給』で決まるため『定価』という概念が存在しません。供給が過剰であれば赤字でも売りさばきますし、需要が強ければ価格は数ヶ月の間に2倍、3倍にもなります。

DRAM eXchangeに乗っている価格は実際の取引価格を反映していますが、この価格を絶対値として参照することは基本的にはできません。重要なのは毎日の価格変動がどうなっているか、上昇基調なのか下落基調なのかというトレンドの部分になります。

業界人でなければ馴染みが無いかもしれませんが、DRAM eXchangeをうまく利用して半導体市況を知るのに役立てていただければと思います。

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