IntelとAMDの業績比較とIntel Q1 2021決算の振返り

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米国の大手半導体メーカーIntel(インテル)とAMD(アドバンスド・マイクロ・デバイセズ)の2021年Q1 (2021年1月 – 3月期)決算のまとめです。Intelは筆者が個人的にも投資をしている半導体銘柄です。一方で私はAMDに投資はしていないですが、AMDはシェアも業績も非常に勢いがあることを認めざるを得ません。そのへんのところも含めて書いていこうと思います。

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IntelとAMDの業績を比較

まず、IntelとAMDのQ1の決算内容を詳しく見る前に、両社の過去2年間の四半期ごとの売上と利益率の推移をざっと見てみます。売上も利益率も圧倒的に高いのはIntelです。なお、2021年Q1のIntelの営業利益の落ち込みは10nm世代のRamp Up費用やVLSI特許侵害による約22億ドルの支払い命令判決(Intelは控訴予定)が影響しています。

AMDとIntelの売上成長率

つづいて両社の対前年度売上成長率を比較します。それぞれ全体売上・PC部門売上・Data Center部門売上の成長率比較です。なお、AMDはData Center + Embeddedとなっており、2020年に新型機種が発売されたばかりのプレステやXboxの売上もこちらに含まれていることを注意する必要があります。

x86 CPUシェア

下記はMercury Researchという調査会社による四半期ごとのx86 CPU出荷数量のシェアの変遷です。PC(DesktopとLaptop)およびData Center向けのx86 CPU出荷個数ごとのAMDおよびIntelのシェアは下記のようになっており、昨年一年間でAMDが+6%の躍進を見せたものの、依然として市場の大部分はIntelの供給によって賄われていることがわかります。

一方で下記はPass Markが公開しているシェアチャートです。Pass Markは出荷個数でなく、同社が提供しているベンチマークソフトの測定結果をベースとしたもので、Windowsが動作するx86 CPU搭載のPCのみが対象となっています。なのでMercury ResearchやTrend Forceなどが出す出荷台数や販売台数とは傾向が異なりますが、実利用のシェアを示す指針となります。

ADMとIntelのPC向け売上成長率とPC向けCPUシェア

両社とも売上の多くをPC向け(デスクトップ&ラップトップ)CPUが占めています。直近の2021年Q1でいうとAMDのPC向け売上比率は約64%でIntelは54%でした。金額でいうとAMDのQ1 PC向け売上が$2,100Mだったのに対してIntelが$10,600Mでしたので約5倍近い差があります。

両者の違いはAMDが大きく前年度売上を伸ばした一方でIntelがマイナス成長に転じた2019年Q3から顕著に現れています。当時のIntelは14nmの歩留まりや10nmの開発に苦戦し、供給不足に陥る一方で、TSMCのタッグを組みRyzenなど新製品を市場に投入したAMDにシェアを奪われていきました。

ただ一方で、CPUの出荷個数シェアの大多数はIntelが握っています。さらに、直近のデスクトップ及びラップトップ向けCPUのシェアはAMDが2020年Q3にピークを付けたあと、再びIntelが盛り返しています(Q3→Q4でモバイル・デスクトップそれぞれ+0.8ppt・+1.2ppt)。特に2021年Q1のPC出荷台数は前年度比較で+32%(Gartner)と大きな成長を見せており、歩留まりを改善させたIntelが特にラップトップ向けに出荷量を増加させたと考えられます。さらにIntelはEUVを使用した7nm世代のプロセスを使用したMeteor Lakeを2023年に投入すると発表しています。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響でノートパソコンへの需要が大きく高まったおかげで、x86 CPUの市場自体は急速な成長を見せていて、調査開始以来最高となる1億2,500万個の出荷量を記録した。そこで顕になった問題が供給量であり、Intelは公約どおりCPU供給を改善できたことが、シェアを伸ばした理由だという。
引用 – PC Watch『Intel CPU製造能力強化でAMDシェア拡大に歯止め』

M1 Mac BookはIntelだけでなくAMDにも影響する

昨年の11月にAppleが自社設計CPU M1を搭載する新型Mac Bookを発表すると(これ自体は数年前からアップルがアナウンスしていました)株価を大きく下落させました。それまでのMac BookにはIntel製のCPUが100%のシェアで採用されていたからです。

Gartnerによると2021年Q1のMac Book出荷台数シェアは8%とYoY +0.9ppt、出荷台数成長率は+48.6%と最も勢いがあります。さらに、Q1にMacとiPadを購入した人の半数が初めての購入者であることも直近の決算にて言及されており、今後もWindows PCからMacへの流入が予想されます(参考 iPhone Media『2021年1月〜3月のMacとiPad、半分は初めてのユーザーが購入』)。

つまり、これはIntelだけでなくx86 CPUを供給するAMDにとっても競争相手が増えることとなると考えられます。

AMDとIntelのData Center向け売上成長率比較とServer CPUシェア

続いて、両社のData Center向け売上の変遷とYoY売上成長率の比較となります。PCは最近こそブームが来ているものの、既に成熟した市場です。一方でData Centerはまだまだこれからも成長が期待できる分野であり、多くの投資家はこちらの業績に注目をしていると思われます。

売上成長率の折れ線グラフを見ると、やはりAMDの破竹の勢いに驚きます。いや本当に、すごいです・・・。ただ、いくつか注意しなければいけないところがあると個人的に考えています。

Intelはなぜシェアを落としたか?

そもそも、なぜIntelはPCおよびServer向け汎用CPUでシェアを落としたのでしょうか。これにはもちろん色々な複合的要因がありますが、ここでは半導体市場の観点から簡潔に説明させていただきます。Intelのシェア下落の最大の要因は供給不足です。まず、IntelやAMDが売っている主力製品は汎用CPUです。汎用半導体というと真っ先に思い浮かぶのがDRAMなどのメモリー半導体ですが、強引に言ってしまうと『汎用半導体はどこのメーカーの製品を使っても同じ』モノです。汎用品と対照的な製品は(非常にざっくりと)カスタム品などと呼ばれ、つまり特定のアプリケーション上で動作する機能を実現させるためにはその特定品だけしか使えず他社製品に代替ができません。一方で、汎用品であれば他社製品に代替が(比較的)容易なのです。そして、そのような汎用品ビジネスに於いてもっとも必要なのことはいかに安価に大量生産(供給)が可能か、ということに尽きます(汎用CPU=汎用メモリとして語るとまた誤解を招くのですが・・)。

なぜ、Intelは供給不足に陥ったか、ここで初めて新聞記事などで目にする10nmや7nmといったプロセスノードの話をすることができます。14nm→10nm→7nmとプロセスがシュリンクしていくことで得られる効果はシリコンダイ当りの集積度が上がり、同面積上での性能が上がることと、チップサイズ自体が小さくなり、ウェハ一枚当りから取れる半導体の個数が増えることです。

Intelは2016年〜2017年頃に14nmから10nmへの移行に失敗しました。そこで14nmをこれまで延命させてきたのですが、結果的に14nmで高性能化を図ることでウェハ1枚当りの取れ高が減ることになり、さらに追い打ちをかけるように歩留まりにも苦戦(良品率が上がらず、出荷が増えない)し、増え続ける市場需要に応えることができなくなり、供給不足を招きました。汎用CPUメーカーはIntelとAMDの2社しかなく、汎用CPUで圧倒的なシェアを握るIntelのCPUが調達できなくなった顧客が代替品を探して行き着く先はAMDの1社しか無い為、結果的にAMDにシェアを奪われる形となりました。

10nmの立ち上げに失敗したIntelは、14nmを延命することとなったが、プロセッサの高性能化のためにコア数を4→6→8個と増やしていった。その結果、プロセッサのチップ面積が増大し、それに反比例して1枚のシリコンウエハーから取得できるチップ数は減少した。このため、Intelは、アイルランド、イスラエル、米国にある3工場をフル稼働させても需要に応えることができなくなり、世界的なプロセッサの供給不足を招いてしまった
引用『プロセッサ市場の下剋上なるか? Intelを追うAMDを躍進させた2人の立役者』

Photo01は14nm+/14nm++を使う3世代のダイを比較したものだが、確実にコアの数だけダイサイズが大きくなっている。数字は厳密ではないが、それぞれのダイサイズは

  • Kaby Lake:126平方ミリメートル
  • Coffee Lake : 152平方ミリメートル
  • Coffee Lake Refresh : 178平方ミリメートル

と見られる。つまりCoffee Lake Refreshは、Kaby Lakeと比較して4割ほどダイサイズが大きくなっている。こうなると、当然ながら1枚のウェハから取れるチップの数が減る。
引用 – 『Intel CPUはなぜ不足しているの? – 14nmプロセスの状況から解説する』

両社の業績を見るとData Center向けYoY売上成長率は2020年Q2まではIntelのほうがAMDを凌駕していました。しかし、上述したとおりIntelがプロセス移行と歩留まりに苦戦しているうちにAMDはサーバー向けCPUでもシェアを向上させました。しかし、2021年4月6日に発表されたIntelの第3世代Xeonには10nmプロセスルールが採用されます。Intelの10nmの集積度はTSMCやSamsungでいう7nmと同等と言われており、10nmの歩留まりにある程度目処が付き、今後生産能力が強化されるのであればシェア回復が期待できるのではと考えています。また、一部のPC・サーバー向けCPUを外部生産委託(TSMC、Samsungも?)すると発表し、一定期間外部ファウンドリの生産キャパを利用しつつ10nmの生産歩留まり改善や7nm世代の開発・立ち上げに注力するという柔軟な戦略にも一定の評価がされていると思います。

ただし、20nmから14nmにプロセスを飛ばし、Zenアーキテクチャを採用したりと設計を全面的に刷新することで長年のスランプから脱出したAMDの大復活も彼らが大きくシェアを伸ばすことになった理由の一つですし、製造を受託するTSMCは順調に7nm→5nm→3nmとプロセス移行を進めることができていますので、単純にIntelが10nmの歩留まりを上げることができれば良い、という話ではありません。ただ、Intelの『凋落』と言われていた大きなボトルネックの一つが解消されることに間違いは無いと考えます。

AMDの業績はゲーム向けも含まれる・供給キャパの懸念

AMDのData Center & Embedded・Semi CustomセグメントにはピュアなデータセンタCPUだけでなく、組み込み向け及びSemi Customと呼ばれるSoC・CPU・GPUの売上が含まれます。特にAMDのSemi Customは2020年11月に発売されたPlay Station 5とXbox X/S向けの売上が含まれています。AMDはPS5とXbox向けにTSMCの7nmプロセスを採用したカスタムロジックを供給しているのです。

AMDが売上を劇的に伸ばしたのは2020年Q3(YoY +116%)からですが、これには上記のゲーム向けロジック半導体の貢献も相当数あることが考えられます。もちろん、Intelの業績を見ると売上高が減少しているのでAMDがEPYCでサーバー向けシェアを向上させたことは間違いないですが、コロナ禍の在宅需要で爆発的な需要を生み出しているPS5とXboxの存在を無視するわけには行きません。もっと言うと、ゲーム向けの需要はシーズナリティのブレが激しいと考えられるので、サーバーほどサスティナブルな需要ではないことを念頭に入れる必要があると思います。直前の2020年Q2まではIntelの売上成長率(純粋なデータセンター向け)のほうがAMDを凌駕しています。

また、プレステ向けのAMDチップは需要に対して供給が追いついていないと言われています。IntelがPC・サーバー市場のCPUでシェアを一部失ったのは、プロセス移行と歩留まりに苦戦したことで供給キャパを増やせなかったことにあります。もちろん、TSMCはここまで安定した技術革新を続けてきており、アップル向けにはいち早く5nmプロセスの採用、さらに3nmプロセスの量産目処についても言及しているので信頼度が違いますが、一方でTSMCの先端ラインもアップル・Nvidia・AMD・Qualcomm・Mediatekといった大手ロジック企業のキャパの奪い合いが想定されます。場合によってはここにIntelが追加される可能性もあります。Intelが生産を外部委託するのは一部製品の限られた数量になると思いますが、Intelが必要とする数量の規模は上記のシェアの数字を見れば明らかでしょう。

TSMCにとっても最上顧客であるアップル一社に傾倒しないためにサーバー向けシェアを拡大するAMDやNvidiaにもある程度キャパを優遇するとは容易に想像が付きますが、やはりファウンドリに製造を頼るAMDのようなファブレス企業が抱える物理的な供給キャパの問題は原因こそ異なるものの、Intel同様供給不足のリスクになり得ると考えられます。

2021年上期はまだ供給はタイトなものになるが、下期には供給量を上げられ、年間を通じては需要に見合う供給ができるだろう」と述べ、Plantation 5を含むゲーム機やパソコン用CPUの供給不足は2021年上期まで続くとの見通し示した。
引用 – PC Watch『PS5やパソコン用CPUは2021年前半まで供給不足の見通し。AMD CEOが見解表明』

IntelのData Center向け業績は顧客の過剰在庫も加味する必要がある

Intelは今回・前回の決算でData Center向けの減収の理由の一つに顧客の過剰在庫を何度も挙げています。『半導体不足なのに良いわけだろう』と思う人が多いかもしれませんが、私自身はこの情報はかなり信憑性があると思っています。

まず、昨今取沙汰されている『半導体不足』はIntelのCPUの供給不足とは全く異なる話です。Intel自身もプロセス移行の失敗や歩留まり向上に苦戦したことで慢性的な供給不足に悩まされて来たのは確かなのですが、2020年上期のコロナ第一波でサプライチェーンの波乱とデータセンター・クラウド需要の増加を見込んで多くの顧客がCPUやサーバー向けメモリ・SSDを買いだめしたと知られています。そんな状況においてもAMDが売上を伸ばしていますが、これはあくまでAMDは最近になって一部のソケットに採用が始まったからであり、Intelのように長い期間大きなシェアを持ち続けてきたのとは根本的に比べる背景が異なるからと考えられます(もちろんAMDのシェアが拡大していることは事実だと思います)。

DCG(Data Centre Group) delivered revenue of $5.6 billion, somewhat above our expectations, but down 20% year over year on a challenging compare. Enterprise and government saw initial recovery with sequential performance above seasonal expectations, while cloud inventory digestion persisted through the quarter as expected.
引用 – “Intel Q1 21 Earnings Call Transcript”

これはIntelだけでなく、データセンター向けに大きく売上を依存するMicronやSamsung、SK hynix、Western Digitalといったメモリ大手の決算でもしきりに言われていることです。

特に、NAND Flashは昨年夏以降、下落傾向が続いており、サーバー顧客向けのSSD過剰在庫が大きな理由とされています。ただ、メモリ大手各社の決算を見ているとサーバー・クラウド投資が再度活発化する下期から価格が上昇を始めるというのがコンセンサスのようです。下記は64Gb MLCおよび128Gb TLCのスポット価格の推移です(画像は楽天証券より)。なお、現在のデータセンター向けSSDには256Gb・512Gb・1TbのTLCが使用されているのであくまでも参考値として捉えてください。

IntelとAMDの利益率・キャッシュフロー

最後にIntelとAMDの利益率とキャッシュフローを見てみます。

利益率

IntelとAMDの過去4年間の営業利益・純利益および粗利率・営業利益率・純利益率の推移です。

AMDは2016年まで赤字体質でしたが、以降収益性を着実に改善させてきており、昨年の営業利益率は14%にまでなりました。一方でIntelの営業利益率は過去持続して30%台で推移しています。単純な数字だけで見れば、収益力の軍配はIntelに上がると思います。AMDの売上成長率は本当に目を瞠るものがありますが、やはりファウンドリで生産を外部委託する以上、ある時点で頭打ちが来るのかもしれません。ただ、IntelのQ1粗利率もYoYで-5.4pptとなっており、AMDとの競争が激化したり、M1 MacBookに顧客を奪われていく中で収益性が圧迫されていることが考えられます。Q1の決算ではIntelのNotebook向けCPUのASPは-23%下落、Desktop向けは-5%の下落であったと報告されています。一方のAMDはProduct Mixの改善でASPは上昇しました。

14nm以降のプロセスでコケ続けているIntelは、せっかく稼いだ額を効率よく投資できていないのですが、10nm品の歩留まり向上や一部製品の外部委託を通じて中長期でこの部分の回復につながっていくことが期待されます。もちろん、これはあくまで『期待』でありここ数年それを裏切り続けてきた前科に失望してる人は多いと思います。

IntelとAMDのキャッシュフロー

両社のキャッシュフローを見てみます。Intelは直近3年の営業キャッシュマージン40%台を維持しています。一方のAMDは、規模の差やIntelのような垂直統合型半導体メーカーでないため、どうしても資金面で劣ってしまうように見えますが、その分新製品の開発に集中投資をすることができ、ここ数年の眼を見張るような成長を達成できているのだと思います。

IDM 2.0について・ファウンドリサービスに関する私見

Intelのもう一つの大きなニュースと言えば、3月23日に発表された中期戦略IDM 2.0(トゥーポイントオー)でしょう。

Intel IDM 2.0
・これまで同様、設計から製造までを一貫して行う垂直統合(IDM)モデルを維持
・ファウンドリ等、外部生産キャパシティの利用を増加させる
・EUVを使った7nm世代及びそれ以降のラインを建設し、ファウンドリビジネスを手掛ける
(参考 EE Times I- ntelがファウンドリー事業を発表、工場にも大規模投資)

簡単にまとめると、Intelはこれまで通り垂直統合型半導体メーカーでありつつも、TSMCやSamsungのような既存ファウンドリを利用し製品のコストや開発スケジュールを最適化しより柔軟な対応をできるようにする戦略に加えて200億ドル(約2兆円)を投じてEUVを適用した7nm世代及びそれ以降のラインを建設し、ファウンドリビジネスを手掛ける(x86などIntelのIPだけでなくArmやRISC-Vも使用可能)と言ったものです。

このニュースに対して、ASMLやApplied Materialsといった半導体装置株の反応はすこぶる良いですが、Intelが巨額を投じてファウンドリ事業を展開することに下記のような懐疑的なコメントが目立つ気がします。

例えば、Intelは自社ブランドのCPUを展開しており、ファウンドリ専業で中立的なTSMCと異なるのではないか、またTSMCのようにレガシーラインから先端ラインまで取り揃えていない、さらに過去にもファウンドリをやる宣言をして、お流れになっている、そもそも14nm以降コケ続けた前科がある、などなど。

筆者の個人的な考え

私個人的には正直どうなるか、成功するのか大失敗となるのか、わかりません。ただ、半導体市場という目線から見れば、半導体の需要はこれからも伸び続ける一方で、AMDの躍進やNvidia等の新たなユースケースの増加、またGAFA等のユーザーが独自のロジック半導体を開発しファウンドリサービスへ外部委託する例が増える中、今までのようにIntelのような巨大企業一社が汎用CPUを独占しRoadmapの先端に立つ時代では無くなっていくのかもしれないと思っています(このことから、個人的にはIntelのファウンドリ顧客はGoogle・Amazon・Facebook・Microsoft等が独自設計したサーバー用SoCなどが想定されているのでは、と考えます)。

そんな中で、ファウンドリサービス、特に最先端プロセスを使ったロジック半導体向けの受託製造の市場規模が広がっていくのは当然で、成長市場へ舵を切るのはある種当たり前のことなのではないかと思います。ファウンドリサービスへ参入する以上、TSMCやSamsungと対決しなければならないのは当たり前ですが、一方でTSMCのような伝統的なファウンドリという姿を目指していないのかもしれません。

Intelはそもそも1980年代中盤まで16Kbitで先端を走るDRAMの大手でした。しかし、日本企業や韓国企業の参入に伴いDRAMがコモディティ化し収益性が悪化していく中、EPROMやMPUの開発も負担となり64Kbit・256Kbitの開発で遅れを取っていました。そして1985年に来たるべきPCの時代を見据えてDRAMから撤退、MPU事業に舵を切りそれが現在の汎用CPUの市場寡占に繋がり1990年代なかばから約25年に渡り半導体の王者として君臨し続けています。

もちろん、Intelの手掛ける汎用CPUはこれからも市場が成長し続けますし、当時のDRAMのように新規参入者が乱立するようなことは考えられないので、大きなシェアの構造変化は起きることは無いと思います。ただ、Logic半導体市場は規模が拡大しながらも、ユーザー自社設計などエコシステムの形態が変化していくことが明白なので、それらを取りこぼさないようファウンドリ事業へ参入するのはやはり当たり前のことであり、今この時点でジャッジするにはあまりにも時期尚早なのではないかと考えています。

しかしながら、Intelはこれまでプロセス移行や歩留まりの向上に苦しみスケジュールの後ろ倒しをし続けてきたという根本的な前科があり、対決することになるTSMC(やSamsung)は順調に技術革新を重ねてきたという事実は忘れてはなりませんし、IntelがTSMCに広げられた技術革新や製造キャパの差を縮められるかどうかという肝心な部分が信用されていないということは確かです。

おまけ・Intel(インテル) Q1決算結果

これまでIntelとAMD両社の業績の比較を行いました。本当はIntelの決算記事についてだけ、各予定だったのですがAMDとの比較や今後について考えているうちにそちらがメインとなってしまいました。

せっかく資料を作成しておいたので、これ以降はIntelのQ1決算結果についてまとめておきます。

【Q1 決算結果 (GAAP)】
売上
: $19.7B … QoQ -1.5% / YoY -1%
Gross Margin: 55.2% … QoQ -1.6ppt / YoY -5.4ppt
Operating Margin: 18.8%… QoQ -4.2ppt / YoY -16.7ppt
EPS: $0.82 … QoQ -42% / YoY -37%
Q1 決算結果 (non-GAAP)】売上: $18.6B … Flat
Gross Margin: 58.4% …  YoY -6.1ppt
Operating Margin: 32.8%… YoY -6.7ppt
EPS: $1.39 … YoY -1%

決算自体は目を瞠るような数字ではありませんが、コンセンサスはBeatしています。前回の決算時に発表されていたガイダンスや3月にUpdateされたガイダンスでもQ1はCPUのASP下落やサーバー・クラウド顧客の在庫調整が示唆されていたので個人的には『こんなもんだろう』というような感想です。ただ、ここはIntelの業績をチェックする上で非常に重要な事業なので別途後述します。

なお、Non-GAAPはSK hynixへ売却予定のNAND事業の売上やVLSI特許侵害による約22億ドルの支払い命令判決(Intelは控訴予定)の影響分を除外しています。

Intel Outlook

またIntelはQ2のOutlookを下記のように示しています。

【Q2 ガイダンス GAAP】
売上
: $18.9B
Gross Margin: 55%
EPS: $1.05
【Q2 ガイダンス non-GAAP】
売上
: $17.8B
Gross Margin: 57%
EPS: $1.05
2021年通年に関しては、Intelは3月23日にガイダンスをアップデートしていたのですが、売上額とnon-GAAP EPSはそこから更に上方修正となりました。
【2021年通年ガイダンス GAAP】
売上: $77B (3月時点ガイダンス $76.5B)
Gross Margin: 54.5%
EPS: $4.00
【2021年通年ガイダンス non-GAAP】
売上: $72.5B (3月時点ガイダンス $72B)
Gross Margin: 56.5%
EPS: $4.60 (3月時点ガイダンス $4.55)
non-GAAPは上述の通りSK hynixへ売却予定のNAND事業を除外しています。

Intel CAPEX

Intelは2021年のCAPEXを$19B – 20Bとしています。4月のTSMCの決算で発表されたCAPEXガイダンスは$30Bでした。本記事を執筆している時点でSamsungの21年Q1決算は発表されていませんが、Samsungは汎用メモリとファウンドリの大手ですのでおそらく頭一つ抜き出た金額が出ると思います。

TSMC 2021年 Q1 決算まとめ
台湾の半導体受託製造最大手、TSMC (台湾セミコンダクターマニュファクチャリング)の2021年Q1(1月ー3月期)決算発表がリリースされました。 【Q1決算結果】 売上: .92BM … QoQ +1.9% / YoY +25....

Intel事業部門別の決算結果

続いてIntelの事業部別の決算結果を見てみます。Intelの事業部は下記のように細分されます。特に注目すべきはやはりDCGとCCGでしょう。

・CCG: Client Computing Group、PC向け売上
・DCG: Data Center Group、データセンター向け売上
・IoT: IoT
・Mobileye: 車載
・NSG: NAND Flash & SSD *SK hynixへ売却予定
・PSG: Programmable Solution Group、2015年に買収した旧Altera FPGA

Intel CCG部門

・PC、特に教育向けなどのNotebookが好需要でYoY +8%
・Notebook CPU出荷個数 YoY +54% / ASP -23%
・Desktop CPU出荷個数 YoY -4% / ASP -5%
AMDはQoQ/YoYともにASP上昇(High End品へProduct Mix改善か)

Intel DCG部門

・売上YoY -20%
・CPU出荷個数 YoY -13% / ASP -14%
・Cloud向け在庫過多(Revenue YoY -29%)、政府機関企業向け投資抑制 (Revenue YoY -20%)
・10nm立ち上げ費用やR&D費用増加に伴い営業減益
・Q2が底、Q3から回復基調の見込み

Mobileye

車載向け自動運転ソリューションのMobileyeは個人的に長い時間かけて虎の子になってくれるかどうか、期待しています。

・Mobileyeは四半期の売上記録・営業利益記録を更新中
・ADAS関連の半導体TAMは2020年から4年で2倍の成長見込み
・カメラだけでなく、LiDARとミリ波の開発も

下記の資料はASMLのInvestor’s Dayのスライドを拝借してきました。ADAS関連のTAMに注目です。

Mobileyeは画像センサーだけでなく、LiDARとミリ波レーダーを開発し、自動運転をサポートするためにセンサー技術への投資も行っていく戦略を発表しています。

インテル(Intel)のグループ企業であるモービルアイ(Mobileye)は、「CES 2021」のプレスカンファレンスに登壇し、同社がインテルと共同で開発している新しいレーダーとLiDAR(Light Detection And Ranging、ライダー)のソリューションを2025年に投入すると発表した。現在モービルアイは、単眼カメラや複眼カメラをベースにしたレベル2自動運転などのソリューションを自動車メーカーに提供しているが、同社が2025年までに実現を計画しているレベル5の自動運転を採用するロボタクシーなどには、カメラだけでなくレーダーやLiDARが冗長化の観点からも必要と判断したと考えることができる
引用 – Car Watch『インテルとモービルアイ、2025年にADASや自動運転車用のシリコンフォトニクスLiDAR SoCとソフトウェア定義の高機能レーダー投入へ』

その他(IoT・PSG・NAND)

何やってるのかよくわらないIoT、旧AlteraのPSG部門、SK hynixへ売却予定のNAND事業(Q1の資料はナシ)も回復基調にありますね。特にPSGは数は少ないですが、汎用CPUと組み合わせてData Center向けのSolutionとして提供されています。ライバルAMDも同じ目論みでFPGA大手のXilinxを買収予定です。

まとめ

以上、またまた長々となってしまいましたが売上成長とシェアを破竹の勢いで拡大するAMDと、停滞気味のIntelの比較およびIntelのQ1決算に関するまとめ記事となります。

・AMD YoY売上+93%、PC向け+46%・Data Center&Embedded +286%と破竹の勢いで成長する中、Intelは売上成長フラット、Data CenterはYoY-20%
・PC出荷台数は伸びているが、Apple M1の躍進はIntel・AMD両者にとって脅威に
・Data Centerはクラウド顧客の過剰在庫や企業・政府機関の投資減速も影響、Q3から回復か
・Intel 10nm世代に期待、また外部リソースを使い生産することでコスト・製品開発・キャパなど柔軟な対応が可能になることも期待
・TSMCの先端ラインのキャパ取り合いはAMDの潜在的なリスクになり得ることも注意、供給不足は理由は違えどIntelがここ数年停滞した原因
・Intelのファウンドリサービスをジャッジするのは時期尚早だと個人的には考える、増え続ける半導体とLogic半導体のエコシステムの変化を考えると参入は必須では?
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