2022年のメモリ半導体市場について

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お世話になっています。

DRAM eXchange(Trend Force社)を見ていたら2022年のメモリ半導体市場に関する考察記事が更新されていました。

DRAMeXchange - 【Market View】Annual DRAM Revenue for 2022 Expected to Reach US.5 Billion, with Prices Likely to Rally in 2H22, Says TrendForce
DRAM, NAND Flash, SSD, Module and Memory card, and provides market research on spot and contract prices, daily news, market views and reports, and monthly datas...

今回はこの記事を元に2022年のメモリ半導体市場について解説してまいりたいと思います。

なお、DRAM eXchangeとはなんぞや?という方は下記の記事を御覧ください。

DRAM eXchangeとメモリ半導体価格
台湾Trend Forece社のDRAM eXchangeでメモリ半導体のスポット価格情報を参考に半導体業界の市況を知る方法を解説。Samsung(サムスン), Kioxia(キオクシア), Micron(マイクロン), SK hynix(ハイニックス)など大手半導体メーカーの動向やニュースを知るのに役立つ。
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2022年のメモリ半導体市場はYoY+3.4%の成長

上記のDRAM eXchangeの記事によりますと、2022年のメモリ半導体市場は今年比較で+3.4%となります(下記グラフはAnnual DRAM Revenue for 2022 Expected to Reach US$91.5 Billion, with Prices Likely to Rally in 2H22, Says TrendForceを元に筆者が作成)。2020年のメモリ半導体市場は+14.3%、2021年は+29.6%が見込まれていますので成長が減速すると言うことになります。

DRAMとNANDの品種ごとに見ていくと、2022年のDRAM市場は約$91.5Bで2021年比わずか+0.3%の成長です。なお、2021年のDRAM市場は$91.3Bで2020年比+36.1%でしたのでDRAMは大幅な成長減速となることがわかります。

一方でNANDは+7.4%と比較的に高い成長率を維持しています。ただ2020年、2021年が20%以上の成長であったことを見ると、大幅な減速です。

私自身業務ではDRAMやNANDメーカーと関わっていないのですが、9月ころまでは『2022年もメモリ企業は業績拡大だろうな、DRAMもNANDも大きな価格下落は始まらないだろ』と思っていました。ただ、この記事を見る限りそれはどうも間違っていたようです。

DRAM市場減速の理由

DRAM市場の減速は在庫過多と供給過剰に起因すると指摘されています。

在庫について

現在私自身仕事をしていて感じますが、やはり半導体の供給は厳しいです。しかし、半導体と言ってもメモリ半導体やロジック半導体、アナログやパワーなど多種多様な品種が存在しています。半導体メーカーごとに生産・販売している半導体は異なり、生産能力や設備投資余力も企業によってまちまちです。

しかし、半導体が1個でも足りないと、最終製品が作れなくなってしまう場合があります。半導体を非常にざっくりと他社メーカーに置き換えが効く汎用品と置き換えが効かない専用品に分けて考えると、汎用品が足りなくても他のメーカーから同じ汎用品を調達できる可能性はあるのですが、後者の専用品が足りなければ選択肢は無いので結局最終製品が生産できません。そして、汎用品の代表例がDRAMやNANDといったメモリ半導体なのです。

一例として、米国のメモリ半導体大手のマイクロン($MU / Micron Technology)が9月の決算発表で『(メモリ以外品種の)半導体不足により、顧客であるPCメーカーが製品を組み立てられず、PC向けのメモリ半導体に影響(需要減速・在庫調整)が出ている』というコメントがありました。

このような事情がDRAMを始めとする汎用メモリ半導体の在庫の積み上がりの要因になっていると考えられるのではないでしょうか。

Micron($MU) FQ4決算と最新の半導体市況について
メモリ半導体大手MicronのFQ4決算と半導体市況について解説します。今期の業績は堅調でしたが、来期の売上のQoQマイナス成長が示唆されており半導体が不況に突入するのでは?と不安が広がっています。本記事ではそれらの内容の説明と半導体市況の先行きについて解説いたします。

I would say that by and large, inventory among our customers is in decent shape. Of course, we talked about the PC market, where due to semi-conductor component shortages, our PC customers, some of them are not able to fulfill all of their end demand, and therefore they have made some adjustments in their purchases, impacting some of our demand in the near-term into the PC market. And we think this is short-lived, and over the course of the next few months, this will work itself out.
引用 – “Micron Technology, Inc. (MU) CEO Sanjay Mehrotra on Q4 2021 Results – Earnings Call Transcript”

供給過剰について

DRAM eXchangeでは2022年の需要側のDRAM Bit Growthを+17.1%と見ている一方で、各メモリメーカーからの供給によるDRAM Bit Growthは+18.6%になるとしています。

Bit Growthとはメモリー半導体の容量換算の伸び率なのですが、あまりこういった話に馴染みのない方は大まかにメモリーの出荷個数換算の成長と考えて下さい(半導体に土地勘がある人向けに補足すると、もちろんダイ毎の容量が増えればBit Growth = 出荷されるチップの個数とはなりません)。

その結果、DRAM eXchangeでは2022年のDRAM ASP(平均販売単価)は-15%となると予測しています。そして価格の下落は特に前半に顕著で、後半に行くほど回復(Flatもしくは上昇転換)していき2022年の出荷額ベースでは+0.3%に留まるとしています。理由としてはスマホの新機種発売やサーバー投資などが毎年後半に予定されているシーズナリティ、もう一つはDDR5という新しい規格のDRAMの出荷が本格化することを挙げています。DDR5などDRAMの規格については下記のウェブサイトを御覧ください。

メモリ基本講座「DDR5とは何ぞや?(1) ~DDR5で何が変わる?~」
目次 DDR5 SDRAMとは? DDR5とDDR4の性能比較 おまけ DDR5 SDRAMとは? 次世代のハイエンドPCやサーバーを主...

加えて私は、2021年のDRAMの価格推移を振り返ると特に年初に上昇し、夏過ぎから価格が下がり始めたことを考えるとそのベースエフェクトもあるのではないか?と考えています(下記グラフは楽天証券『アメリカの半導体関連企業:マイクロン・テクノロジー(パソコン不足がDRAM需要にマイナスの影響を与えている)』より)。

NAND市場について

NAND市場は+7%とDRAMに比べるとまだ高い成長率を維持できる見込みですが、同記事によると2022年のNANDの需要Bit Growthは+30.8%に対して供給は+31.8%となりDRAMと同じく供給過剰となる見込みです。

NANDはDRAMよりも価格の下落が激しい

記事ではNANDのASP下落は-18%となり、DRAMのそれ(-15%)よりも激しくなるとしています。

その理由は、DRAMの供給メーカーは三星・SKハイニックス・Micronの三社に限られるのに対し、NANDはその三社に加えてWestern Digital、Kioxia、Intel(SKハイニックスが買収予定)、そして中国新興のYMTC(長興ストレージ)などサプライヤーが多く価格競争が激しくなりやすい環境にあります。

また、NANDは数年前から3D技術に移行しています。メモリ半導体のBit Growthの向上は大きく分けて

①生産ラインを拡張してウェハの処理能力を増やす
②微細化によりダイ毎の容量を増やし、ウェハ毎の記憶容量を増やす

ことで実現されます。

メモリーやロジック半導体など最先端のプロセスで製造される半導体は微細化を続けてきましたが現在はその難易度やコストが非常に上がっています。NANDも同じ状況だったのですが、こちらはセルを縦方向に重ねることで(3D化)ダイ毎の容量の大容量化を継続しています。3D NANDはまだまだ第四世代、第五世代で次の世代への開発は活発です。するとシリコンあたりの記憶容量が増えていきますので供給のBit Growthは増えやすくなり結果的にBit辺りの単価が下落することにつながっていきます。

2D NANDフラッシュの限界と3D NANDフラッシュへの移行
今回は、2D NANDフラッシュメモリの記憶容量が拡大していった経緯と、2D NANDフラッシュ技術から3D NANDフラッシュ技術への転換について解説する。

しかし、NAND価格についてもDRAMと同じく年後半からシーズナリティにより下落に歯止めがかかるとしています。

DRAMとNANDの収益構造の差

本記事ではDRAMとNANDの収益構造の差についても指摘がされています。

上述の通り、DRAMはサプライヤーの数が限られ、また微細化もかなり限界まできているので供給が増えにくい状況にあります。

一方でNANDはサプライヤーの頭数で言うと競争がまだ激しく、さらに3D NANDもこれからまだまだ高積層化の余力がありますのでBit Growthも増えやすいと言えるでしょう。

この事から2022年の売上成長率だけを見ればNANDがDRAMをアウトパフォームするが、長期的にはDRAMは安定成長を続けることができ、また単価の変動も小幅で収益を出しやすい構造にあると言うことが指摘されています。逆に言うとNANDはまだまだ競争が激しく、プロセスや投資で他社に遅れを取ると取り返しのつかない事態になりかねないということでは無いでしょうか。

その他・中国市場

今回のTrend Forceの記事以外で半導体の受給に関わる気になったニュースがいくつかありましたので取りあげます、全て中国市場に関することです。

Intel 中国クラウド市場減速をコメント

IntelのQ3決算コールでCEPのパット・ゲルシンガーが中国政府のゲーム規制に起因するクラウド投資の減速についてコメントしました。いずれ戻るだろう、とはしているものの中国関連のことはどうも予測が難しいです。クラウド関連は半導体の主要なマーケットの一つで、特にロジック半導体とメモリ半導体には重要です。サーバー向けのDRAMは単価が高いモジュールですし、EnterpreiseグレードのSSDを大量に使います。

Pat Gelsinger — Chief Executive Officer
You know, as you might have seen, there’s been some regulatory questions around gaming in China, right? And all of the cloud vendors are adjusting their offerings to meet that new regulatory environment. So we expect there’s a quarter or two for them to digest what they would look like. We do expect that market to recover going forward. And as you’re probably aware, we have uniquely high market share in the Chinese cloud market. So as it recovers, we expect a nice recovery in that business area for us, and we expect that there will be a return to normalcy next year in that area of our business. (引用 – Intel Q3 Earnings)

中国スマホ市場減速

IDCによると2021年Q3の中国市場のスマホ出荷台数はYoY -4.7%の減少でした。

China smartphone market dips in Q3
The smartphone market in China softened in Q3 due to rising ASPs (Average Selling Prices) ...

半導体不足は勿論スマホ市場にも影響しているのですが、一方でOppoやVivo、HonorやAppleといった中国市場での首位メーカーの中国市場での出荷台数はそれぞれYoY +2桁%の成長となっていることから必ずしも半導体不足だけが影響しているとは言えないと思います。

記事ではスマホの高額化や真新しい新製品の不在が原因で中国のスマホ市場が減速しているとしています。スマホは半導体にとって非常に重要な市場ですし、中国は世界で最も大きな市場ですので、もしこの傾向が続くとするとメモリ半導体などにとっても非常に悪いニュースとなります。

一方で、韓国のメモリ大手SK hynixは決算資料内でスマホ市場の減速に触れつつもQ4に発売される新製品の需要まち(Pent-Up Demand for Q4)であると分析しています(SK hynix Earning Releaseより)。

まとめ

以上、Trend Force社の2022年メモリ市場に関する考察記事について解説しました。

半導体市場は非常に流動的で、特にメモリ半導体は価格がコロコロ変わるため、予測がつきにくいです。9月ころまでの2022年のメモリ市場の見通しと現時点での見通しは色合いが変わってきており、やや弱気気味になっていると思います。

引き続き半導体市場を注視してまいります。

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