Micron($MU) FY22 Q1決算

スポンサーリンク

おせわになっております。

メモリ半導体大手のMicron Technology(マイクロン/$MU)のFY22 Q1決算発表がありました。

本記事で取り上げるMicron(マイクロン)の決算内容の数字は全てMicron Technology社の決算発表を基にしています。

【この記事のポイント】
・シーズナリティの影響により9月-11月期は減収減益
・しかしYoYでは+33%増収、営業利益率も+18.5pts改善
・来期(12月-2月)も半導体不足から値上がりが始まった昨年同期比較YoY+20%を維持
・製品別ではDRAM、NAND共にASPやや下落、Bit成長の見通しは維持
・事業部別ではスマホ以外はQoQ減収、しかしサーバー向け売上YoY+70%を記録
・売上の75%をスポット購入ではなく1年単位の長期物量契約へ→需給安定化
・前Qで言及されていた特定用途半導体不足によるメモリ半導体の在庫調整は終了?
スポンサーリンク

Micron(マイクロン) FQ1決算結果

MicronのFQ1決算結果は下記のようになりました(いずれもnon-GAAP)。

【FQ1 決算結果】
売上
: $7,687 … QoQ -7% / YoY +33.1%
Gross Margin: 47% … QoQ -0.9ppt / YoY +17.9ppt
営業利益率: 35.4% … QoQ -1.7ppt / YoY +18.5ppt
EPS(Diluted): $2.16 … QoQ -10% / YoY +177%

Micronの四半期ごとの売上・粗利率・営業利益率の推移を2017年の頭からグラフにしました。なお、MicronのFiscal YearとCalendar YearにはズレがあるのでCalendar Yearに換算している点にご注意ください(Micron FY22 Q1 = Calendar Year CY21 Q4)。

QoQでこそ減収減益に見えますが、メモリ半導体はスマホやデータセンターからの売上が大きいため、シーズナリティの影響でQ3が出荷のピークになる傾向にあります。過去の四半期をみても基本的にQ3がピークのサイクルにあることがわかりますね。

Micron FQ2 Outlook

Micronは来期の業績予想を以下のように示しています。

【Micron FQ2 2022 業績予想】
売上
: $7,500M±200M … QoQ -2.4% / YoY +20% *Mid Point基準
Gross Margin: 46%±1% … QoQ -1ppt / YoY +14.1ppt
EPS(Diluted): $1.95±0.01 … QoQ -9.7% / YoY +99%

カレンダーイヤーのQ1もシーズナリティの影響で、メモリ半導体の需要は落ち着いているのが普通です。ですのでQoQだと微減となりますが、YoYの数字を見ると半導体不足とメモリ半導体の値上がりが始まった昨年の同時期と比べても以前高い水準の売上と利益率を維持することが予想されます。

年間の大口数量契約売上が75%を占める→市場安定化へ?

また、決算資料にOver 75% of our revenue comes from volume-based annual agreements, a significant increase from around 10% of revenue they represented only five years ago(5年前は約10%に過ぎなかった年間購入数量契約売上が75%を超えた)というコメントが強調されていました。

Micronが売るDRAMやNANDというメモリ半導体は汎用品でその価格は毎月〜1クオーター毎に変化することで知られています。なので半導体不足で売手市場のときは値上がりが続きますが、市況が逆転すると一気に価格が暴落しメモリメーカーを苦しめるというサイクルを繰り返してきました。

しかし、ここで強調されている年間購入数量契約(volume-based annual agreement)とは、『このDRAMをこの1年でx百万個買うので価格は$xxで妥結』という約束をメモリ半導体を買う顧客とすることです。LTA(Long Term Agreement)とか言ったります。

この契約によりメモリメーカーは1年先の需要がわかるので最適な生産量とプロダクトミックスを行うことができ、需給バランスのブレを抑え、メモリ市場の乱高下を防ぐことが出来るメリットが生まれると考えられます。

売上の75%が長期契約ということですから、以前のようなメモリ市場における乱高下は防げることが出来るかもしれません。恐らくMicronがやっているということは、同業他社も同じような事をしているはずです。同様に、半導体の製造に必要な部材サプライヤーとMicronも安定供給のための長期契約を結んだ事が言及されています。

Have entered into strategic agreements to secure supply of certain components that we need to manufacture our products
引用 – Micron FQ1 22決算資料より

一方で、だからといって安定的な右肩上がりの成長が描けのか?と問われえばそうではないと私は考えます。なぜなら長期契約を結んだ、と簡単に言いますがだからといって半導体を買う顧客も今まで3ヶ月先までしか発注していなかった購買計画をそう簡単に6ヶ月後や12ヶ月後の需要まで的確に判断して発注できるとは限らないと思うからです。

たとえばEEタイムズで最近ジャーナリストの大山氏が下記のような見解を述べられていました。私もこの意見には個人的に賛成で、『とにかく長期発注を』と半導体メーカーから急かされ打った顧客の注文が積み上がっているのであればそれらが出荷され納品される数カ月先には『実は相当な数の仮需要も含まれていた』と蓋を開けてわかる、という結果になっているかもしれないのです。もちろん、長期契約があるのでそれらの数量は買い取ることになると思いますが、そうすると翌年以降の需要が大幅に減少するという事態になりかねないと思います。

受注のピークは過ぎたものの、過去最大の受注残が積み上がっており、2022年末まで稼働率100%超が続く見通しだという。しかし顧客にしてみれば、100個注文しても80個しか納品されないのであれば、120個注文しておこう、という仮需を含めた注文を出しているはずである。通常なら3カ月先の需要を注文するところを、6カ月先、12カ月先まで先行発注することで、モノの確保にも走っていたはずだ。ファウンドリー側は、先行発注してくれる顧客、キャンセルなしの条件をのんでくれる顧客を優先した結果として、過去最大の受注残を抱えている、とみるべきではないだろうか。ファウンドリーにもその顧客にも、今後実際の需要がどれだけあるのか、確かな確証はないだろう。仮に筆者の持論が正しいとして、半導体流通の問題が徐々に解決されれば、「仮需」の実態も徐々に明らかになるはずである。少なくとも2022年中ごろには、市況の潮目が変わっていてもおかしくない
引用 – EEタイムズ『2022年半導体市況展望、15%超の成長が見込めるが年央に潮目が変わるかも』

Micron(マイクロン) メモリ別および事業部別決算解説

続いてMicronの販売する2タイプのメモリ品種別、及びPCやスマホなどの事業部別の決算解説です。

Micron メモリ品種別の売上と市況見通し

Micronの売上と市況の見通しをそれぞれメモリ品種別(DRAM・NAND)に分けて見てみます。

DRAMはデータを一時的に記憶するタイプのメモリーで、Micronと韓国のSamsungやSK hynixの3社寡占市場となっています。スマホやPC、サーバーのメインメモリに使われています。

一方でNANDは電力の供給がなくてもデータを保存することが出来るタイプのメモリーでMicron、Samsung、SK hynixの他にKioxiaやWestern Digital、Intel (SK hynixが買収予定)や中国のYMTCなど多くのサプライヤーが存在しより競争が激しい市場となっています。同じくエンド市場はスマホやPC、サーバーですがデータストレージとして使われています。SSDというとピンと来る方が多いかもしれませんね。

下記は決算資料を元にしたそれぞれの製品売上の四半期の推移です。以下、DRAM・NANDそれぞれ詳しく解説致します。

DRAM事業の結果と最新の市況見通しについて

MicronのFQ1 DRAM事業の纏めです。以下Micronの今期のDRAM売上、Bit出荷、ASPについて纏めます

Micron FQ1 DRAM事業
DRAM売上: $5,587M(売上の73%)… QoQ -8% / YoY +38%
Bit出荷: QoQで1桁%台中盤の下落
ASP: QoQで1桁%台序盤の下落

本ブログで何度か取り上げていますが、上記の説明で出てくる『Bit換算』というのはメモリ半導体独特の表現かもしれません。例えば、1年間に1Gbのメモリーが100個出荷されるとしたらその年のBit換算需要は100Gb(1Gb x 100個 = 100Gb)ということになります。翌年に1Gbのメモリーが200個出荷されるとするとBit換算需要は200Gbとなり、前年比+100%のBit成長が達成された、ということになります。

ですので、Bit出荷とは大まかに出荷個数だと考えてください。この数が増えれば増えるほど、メモリーの個数の需要は増えているということです。今期のQoQの数字は減っていますが、これは序盤に解説したとおり、主にシーズナリティの影響だと考えられます。また、出荷数とともにASP(平均販売単価)も下落していますのでDRAMの売上としてはさらに下落幅が大きいです

また2022年のDRAM市況の見通しについて下記のように纏められています。括弧内は前QのMicron社の見解です。メモリ半導体は市況に敏感ですので四半期ごとに需給の見通しがどう変化しているかどうか(もしくは変化がないか)を細かくチェックしています。

2022年のDRAM市場の見通し
・2021年のDRAM需要はBit換算で +20%成長 (前Qから見通し変化なし)
・2022年以降のDRAM需要はBit換算で+10%台中盤~後半の成長を維持(前Qから見通し変化なし)
・MicronのDRAM供給Bit Growth(出荷するDRAMの個数)は需要通りの成長(前Qから見通し変化なし)
個人的に注目する点として、”Planning for volume DRAM production on EUV in 2024 with our 1-gamma node. Integrating EUV with our existing multipatterning immersion lithography expertise will help us maintain DRAM technology”というコメントがありました。オランダのASML社が独占供給するEUV露光装置は韓国のSamsung社やSK hynix社も既にDRAMに適用を開始していますが、Micronも1γnmのプロセスのDRAMから適用を開始し、2024年に量産を始めるとのことです。

NAND事業の結果と最新の市況見通しについて

続いてMicronのFQ1 NAND事業の纏めです。まずはMicronのNAND売上、Bit出荷、ASPについて纏めます。

Micron FQ1 NAND事業
NAND売上: $1,878M(24%)… QoQ -5% / YoY +19%
Bit出荷: QoQで横ばい
ASP: QoQで1桁%台中盤の下落
NANDの出荷個数はQoQでフラットですがASPがDRAM同様下落していますのでNAND事業の売上は-5%となっています。

続いてNANDです。DRAM同様に上記で説明したBit換算の市場の見通しが説明されています。

・2021年のNAND需要はBit換算で +30%後半成長 (前Qから見通し変化なし)
・2022年以降のNAND需要はBit換算で+30%台の成長を維持(前Qから見通し変化なし)
・MicronのNAND供給Bit Growthは需要通りの成長(前Qから見通し変化なし)

Micronによりますと既に176層のNANDがBit換算の生産個数の大半を占めているということです。ちょうど1年前のFY21 Q1の決算発表にて176層NANDの量産が始まったばかりとアナウンスされていましたので、この一年で一気にプロセスマイグレーションが進んだ事がわかります。

これにより、Micronは競争の激しいNAND市場に於いてより多くのBit出荷をすることで数量シェアを取ることができ、同時にコスト競争力も身につける事が出来ると考えられます。

“Expect annual cost-per-bit reductions to be competitive with the industry in FY-22 and over the long term”
引用 – Micron FQ1 22決算資料より

Micron 事業部別の売上

続いて、事業別の売上です。Micronは4つのエンドマーケット毎に事業部を区別しています

・Compute and Networking (CNBU)
→PC・サーバー向けメモリ
・Mobile Business Unit(MBU)
→スマホ向けメモリ事業部
・Storage Business Unit(SBU)
→SSD、スポット市場向けウェハ外販ビジネスなど
・Embedded Business Unit(EBU)
→コンスマー、ゲーム、車載向けメモリー、産業機器など

基本的にスマホ向けビジネス以外はすべてQoQでマイナスの売上成長となっていることがわかります。特にカサの大きなCBUはQoQ-10%です。恐らくこれは前四半期の決算発表で示唆されていたPC顧客による在庫調整が影響したのでは?と考えられます。

I would say that by and large, inventory among our customers is in decent shape. Of course, we talked about the PC market, where due to semi-conductor component shortages, our PC customers, some of them are not able to fulfill all of their end demand, and therefore they have made some adjustments in their purchases, impacting some of our demand in the near-term into the PC market. And we think this is short-lived, and over the course of the next few months, this will work itself out.
引用 – “Micron Technology, Inc. (MU) CEO Sanjay Mehrotra on Q4 2021 Results – Earnings Call Transcript”

一方で、全セグメントでYoYは+2桁%の成長を維持しています。特に、データセンター向けの売上(CNBUに含まれる)はYoY +70%を達成しており、AI進化など今後もより多くのデータを社会が活用していくに連れてメモリ半導体の需要は一つの大きなテーマで有ることは間違い有りません。

Data center revenue grew more than 70% Y/Y as a result of continued cloud demand and a resurgence of enterprise IT investment
引用 – Micron FQ1 22決算資料より

前四半期で示唆されていたPC顧客の在庫調整は終了か?

Micronの前回の決算では、PCなどに使われる一部の半導体が不足していることでPCなどの生産ができなくなり、結果的に汎用メモリなど比較的供給に余裕がある半導体が供給過剰ぎみになりかけている、という事が指摘されていました。

I would say that by and large, inventory among our customers is in decent shape. Of course, we talked about the PC market, where due to semi-conductor component shortages, our PC customers, some of them are not able to fulfill all of their end demand, and therefore they have made some adjustments in their purchases, impacting some of our demand in the near-term into the PC market. And we think this is short-lived, and over the course of the next few months, this will work itself out.
引用 – “Micron Technology, Inc. (MU) CEO Sanjay Mehrotra on Q4 2021 Results – Earnings Call Transcript”

しかし、同時にこの問題は短期で解決するだろう、というコメントも添えられていたわけですが今回の決算資料には以下のようなコメントが書かれてありました。

Inventory adjustment at most PC customers is now largely behind us, and we are seeing signs of stabilization in demand in this end market; in CY-22, we expect PC unit sales to be in line with CY-21 unit sales

つまり、PC顧客による在庫調整(≒メモリ半導体の在庫削減)は既に終了しており、今後(PC向けの)需要は安定化する、ということです。しかし一方で、2022年のPCの出荷台数はプラスマイナスゼロの成長に落ち着くとしており、在宅勤務によるPC特需が一服したことが伺えます。

DRAMスポット価格は反発中

このように、9月-11月期のMicron社の業績はシーズナリティの影響でQoQ減収減益となったものの、まだまだ過去に発生したようなメモリ市況の大暴落が発生するというようなシグナルは出ていないのでは?と筆者は個人的に思います。

たとえばメモリ半導体及び半導体市況の先行きの判断に使われるスポット価格は最近になって上昇に転じたことが報じられています。

DRAMスポット価格は、10月下旬から11月上旬を底として上昇に転じています。TSMC、インテルの設備投資増加によってCPUの出荷が今以上に増えれば、パソコン、サーバーに搭載されているDRAM、NANDも増加します。新しいパソコンでは、メインメモリ(DRAM)が従来の8~16ギガバイトから16~32ギガバイトに、記録媒体もHDDから500ギガバイト~1テラバイトのSSD(NAND型フラッシュメモリを使った記録媒体)に増強される傾向があります。データセンターでも記録媒体の一部を従来のHDDに替えてSSDを使う動きが続いています。これらの動きをメタバース投資が加速する可能性があります。DRAMスポット市況の反発は、近い将来メモリの需給関係が改善することを見込んでいる可能性があります。
引用 – 楽天証券『半導体製造装置セクター―2021年のまとめと2022年の展望』

まとめと今後の半導体市場について

以上、メモリ半導体大手のMicronによるFY22 Q1決算発表の解説でした。以下に文頭で紹介したこの記事のポイントを纏めとしてもう一度記載します。

・シーズナリティの影響により9月-11月期は減収減益
・しかしYoYでは+33%増収、営業利益率も+18.5pts改善
・来期(12月-2月)も半導体不足から値上がりが始まった昨年同期比較YoY+20%を維持
・製品別ではDRAM、NAND共にASPやや下落、Bit成長の見通しは維持
・事業部別ではスマホ以外はQoQ減収、しかしサーバー向け売上YoY+70%を記録
・売上の75%をスポット購入ではなく1年単位の長期物量契約へ→需給安定化
・前Qで言及されていた特定用途半導体不足によるメモリ半導体の在庫調整は終了?

メモリ半導体市場は、一時の過熱感は払拭されたものの、3ヶ月ほど前に危惧されていた供給過剰による市況の急激な転換という方向にはまだまだ進んでいないように感じます。今期や来期はシーズナリティの影響により比較的需要が弱い傾向にあると思いますがコレは想定内です。

ただ、PCなど半導体市場を支える大口の市場の出荷台数が来年は頭打ちになり、再来年からは減少に転じる恐れもあると思います。また、現在は75%を超える売上が長期発注によるものだとしていますが、それらの注残が実際に納品される来年になると『実は仮需要だった』というような事態になっており、翌年以降の売上に影響することも考えられます。

引き続き半導体市場を注視致します。

 

タイトルとURLをコピーしました