Micron FQ2(CQ1) 決算とメモリ半導体の最新市況

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半導体メモリ大手のMicron(NASDAQ: $MU)のFQ2 (12月ー2月期)の決算発表がリリースされました。

本記事ではマイクロンの決算と共に、DRAMおよびNANDという汎用メモリ半導体市場の現時点での見通しを解説してまいりたいと思います。なお、Micronの決算年度は8月末締めなので今回のFQ2=CQ1(12月-2月期)の結果となります。

【この記事のポイント】
・強い市況の追い風を受けてMicronは好決算
売上: $6,236M … QoQ +8% / YoY +30%
→Gross Margin: 32.9% … QoQ +2ppt / YoY +3.8ppt
→営業利益率: 20.2% … QoQ 3.3ppt / YoY +8.9ppt 
・DRAM Spot価格は20年末から上昇に転じ、2018年メモリバブル崩壊前の水準
NANDは価格上昇基調の兆しが見え始めた
・牽引分野はAI(データセンター)および5Gスマートフォン
→データセンターは2Hからのさらなる投資加速を示唆
→スマホ市場は+11%の出荷台数成長、5Gスマホ出荷台数は倍増
メモリ半導体の市況好転はまだまだ始まったばかり、来期のガイダンスはさらなる好業績を示唆
市況悪化のリスクはプロセッサ不足
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Micron Q2決算結果

MicronのQ2決算結果は下記のようになりました(いずれもnon-GAAP)。

【Q2 決算結果】
売上
: $6,236M … QoQ +8% / YoY +30%
Gross Margin: 32.9% … QoQ +2ppt / YoY +3.8ppt
EPS: $0.98 … QoQ +25% / YoY +117%

Micronは強い市況を鑑みて3月3日にQ2のガイダンスを当初の見込みよりも強気の数字にUpdateしたのですが、改めてメモリ半導体の強い市況を伺わせる結果となりました。

メモリ半導体のビジネスは大口価格であれば3ヶ月に一度、スポット価格であれば1ヶ月に一度もしくはそれよりも高い頻度で価格が変わるという特徴があります(他の種類の半導体であれば基本的に1年に一度の価格改定)。そのことから、メモリ半導体メーカーの業績は市況に対して非常に敏感となっています。以下のグラフでは2018年のCQ1から現在までの四半期ごとのMicronの売上・粗利率・営業利益率の推移を表しています(Micron社決算発表を基に筆者が作成)。*今回の決算 Micron FQ2 = CQ1です

ご覧のように売上及び利益率の乱高下が激しいのが汎用メモリビジネスの特徴です。特に2016年の後半から2018年のQ4まではメモリバブルの恩恵を受け、凄まじい業績を記録していましたが2019年から一気に市況が悪化し、売上及び収益性も下落、低迷を続けていました。しかし、2020年に入りコロナの在宅需要から生まれたPC特需、データセンター投資、5Gスマホの立ち上がりの追い風を受け、徐々に市況は回復していきます。前回の決算では一部データセンター顧客の在庫調整とメモリの価格下落の影響を受け、多少の落ち込みはあったものの、今回の決算からは市況改善の波にしっかりと乗れていることが確認できました。

半導体セクターは供給不足や度重なる大型投資のニュースなどを受けて2021年3月末現在、非常に過熱感がありますが、個人的には半導体企業の好業績はまだまだ始まったばかりだと考えます(もちろん株価はこれを先取りしているはずです)。特に後述のようにDRAMの価格底打ちは2020年末に始まったばかりですし、下落が続いていたNANDも市況転換の兆しが見えてきました。また、半導体の需要の約30%を占めるモバイル市場は秋の新作発表〜年末商戦を見据えて夏前から作り込みが始まります。特に今年はスマートフォンの出荷台数が前年比で+11%メモリをより多く使用する5Gスマホの出荷台数は台数ベースで2倍以上に成長すると言われていますので需要の伸びはまだまだこれからだと言えるでしょう(参考『Gartner Says Worldwide Smartphone Sales to Grow 11% in 2021』)。また、モバイル同様、半導体市場の約30%を占めるサーバー市場はGAFAMなどのハイパースケーラーと呼ばれるIT企業の投資に牽引されます。これらの企業はQ1の決算でも確認されたように、2020年に好業績を連発し、投資余力を持て余しています。人間や企業の活動が生み出すデータの量は日に日に増えていきますので、このような大手IT企業が将来を見据えてデータセンター等に大型投資を続けることは確実ですし、上述のように今年は有り余る投資余力を基に積極的な投資がされると期待されています。

メモリ品種別および事業部別の決算結果

Micronの売上をそれぞれメモリ品種別(DRAM・NAND)と事業部別(PC&Server・Mobile・SSD・Embedded)に分けて見ると下記のようになります。

DRAM・NANDともに増収、また事業部別はSBUというスポットマーケット向け(Crucialなどのリテールメモリ販売)以外はすべて増益です。特にMBUというスマートフォン向け事業部の売上はQoQ +21%、YoY +44%となっています。

Micron Q3 Outlook

MicronはQ3(3月ー5月期)のOutlookを下記のようにしています。

【Q3 Outlook】
売上
: $6.9B – $7.3B
Gross Margin: 40.5% – 42.5%
EPS: $1.55 – $1.69
Gross Marginは40%の大台に乗せる予定です。これは2019年Q1以来の水準となります。
以下ではMicronの決算発表を基にDRAMおよびNANDそれぞれのメモリ半導体の市況およびモバイル・データセンター・PCなどエンド市場別の市況について考察をしてまいりたいと思います。

DRAMの市況考察

まずはDRAMです。DRAMはメインメモリ等に使用されるメモリ半導体です。現在は韓国のSamsung Electronics・SK hynix・Micronの3社寡占市場となっています。

Micron Q2 DRAM事業
・Micron Q2 DRAM売上は$4,444Mで売上比重は全体の71%
・DRAM売上増加率は QoQ +9.56% YoY +44.1%
・Bit出荷はQoQで一桁%後半の増加、ASPはQoQ微増
→DRAM 単価Up x 出荷数量Up

DRAM Spot価格の動き

以下は楽天証券の2021年3月26日記事【特集:半導体セクターの重要トピックス(半導体不足が日本企業へ与える影響。インテルの新たな成長戦略)】から引用したDRAMのスポット価格の推移となります(18年6月まで4Gb D3、それ移行は4Gb D4のスポット価格)。ご覧のようにDRAMのスポット価格は2020年12月に底打ちをしてから反発し、メモリバブル崩壊直前の2018年Q4時点の価格まで戻していることがわかります。

DRAM Industry Outlook

Industry OutlookはMicron以外のDRAMメーカーを含む一般的なDRAMの需給バランスなどの市場環境です。MicronはDRAM市場環境を下記のように見ています。

・2021年のDRAM需要はBit換算で +21%成長
・一方でDRAMの供給はBit換算で上記の数字を上回らない
供給不足と価格上昇が継続
・長期のDRAM市場需要成長はCAGR +10%中盤

Micron DRAM Outlook

続いてMicron自身のDRAM事業に関するコメントです。主にプロセスシュリンクの状況やMicronのDRAM供給能力、プロダクトミックス(PC向け、サーバー向け、モバイル向けにどう物量を割り振るか)といったところを知ることができます。

・MicronのDRAM供給増加率はDRAM市場の需要増加率未満 (+21%未満)
・Micronの中長期DRAM供給増加率はDRAM市場の需要増加率と同程度 (+10%台中盤)
・1αの開発は順調(LPDRAMから)、Bit供給量増加とFY22(9月以降)のシェア向上に寄与
・DDR5市場投入は今年(2021年)4月以降徐々に開始予定

NANDの市況考察

つづいてNANDです。NANDはSSDなど、データを長期で記憶する際に使われるメモリ半導体です。Samsung・SK hynix・Micronに加えてWD・Kioxia・Intel(SK hynixが買収予定)・その他中華新興メーカーなどプレーヤーが比較的多い事業環境にあります。

Micron Q2 NAND事業
・Micron Q2 NAND売上は$1,650Mで売上比重は全体の26%
・NAND売上増加率は QoQ +4.8% YoY +8.98%
・Bit出荷はQoQで一桁%後半の増加、ASPはQoQで一桁前半の下落
→NANDの単価下落を出荷個数が上回ることで増収を達成

NAND Spot価格の動き

以下も楽天証券の2021年3月26日記事【特集:半導体セクターの重要トピックス(半導体不足が日本企業へ与える影響。インテルの新たな成長戦略)】から引用したNANDのスポット価格の推移となります。DRAMと異なり前月半ばまではずっと下落基調が続いており底値圏を彷徨いています。なお128GbはTLC型のNANDでスマホやSSDなどに使われ、一方で64GbはMLC型のNANDで現在は生産量が少ないレガシー品となっています。

ただ、一方でDRAM eXchangeを見ると3月中旬時点のNAND価格は上昇に転じていることが確認されています。

NAND Industry Outlook

DRAM同様、Micron以外のNANDメーカーを含む一般的なNANDの需給バランスなどの市場環境です。MicronはNAND市場環境を下記のように見ています。

・2021年のNAND需要はBit換算で +30%台中盤の成長
・NAND供給はBit換算で上記の数字を上回る
NAND需給バランスの調整のため、Capex削減を示唆 (Lam Researchなどへ悪影響?)
・長期のNAND市場需要成長はCAGR +30%中盤

Micron NAND Outlook

続いてMicron自身のNAND事業に関するコメントです。主に3D NANDやQLC NANDなどの開発状況やMicronのNAND供給能力、プロダクトミックス(モバイル向けストレージ、SSD向けにどう物量を割り振るか、QLCや172層品などの採用状況はどうなのか)といったところを知ることができます。

・MicronのNAND供給増加率は市場需要増加率未満 (+30%中盤未満)
・Micronの中長期NAND供給増加率はNAND市場需要増加率と同程度 (+30%台)
・176層のRoadmapは計画通り、Bit供給量増加とFY22(9月以降)のシェア向上に寄与
・QLC型のNAND Flashの製品Mix率増加

事業部市況考察

つづいてMicronの事業部別の決算結果からそれぞれの市況について考察します。Micronは事業部を下記の4つのセグメントに分類しています。

・Compute and Networking (CNBU)
→PC・サーバー向けメモリ事業部
・Mobile Business Unit(MBU)
→スマホ向けメモリ事業部
・Storage Business Unit(SBU)
→スポットマーケット向けなどのSSDやNAND/DRAMコンポーネント
・Embedded Business Unit(EBU)
→コンスマー、ゲーム、車載、産業機器など

Compute and Networking (CNBU)

CNBUの売上は$2,636MでQoQ +4%、YoY +34%の成長でした。当事業部では一般消費者向けのPCに使われるメモリーやデータセンターに使われるサーバーメモリの売上が含まれます。

特にサーバーに使われるメモリはDRAM・NAND(SSD)ともに単価が高く、メモリメーカーにとって非常に重要なビジネスなのですが、MicronはQoQでサーバー向けDRAMのBit出荷率を大幅増加させたものの、YoYでのBit出荷率はマイナス成長だったと報告しています。ただ、CNBU事業部の売上成長はQoQ・YoYともに大幅な伸びでしたので単価の上昇が寄与したと考えられます。

また、”Enterprise … demand is starting to improve as IT budgets increase in anticipation of economic recovery. Cloud … anticipate robust demand from U.S. hyperscale customers, especially 2HCY21 “としており、コロナからの経済回復に伴う企業投資の再開や、GAFAMを始めとする大型IT企業のクラウドへの投資加速が示唆されています。

Mobile Business Unit(MBU)

CNBUの売上は$1,811MでQoQ +21%、YoY +44%の成長でした。当事業部では主にスマートフォン向けに使用されるメモリーが対象になります。特にバッテリーで駆動するスマホには消費電力の低いLPDDR(Low Power DRAM)と呼ばれるタイプのDRAMが使われており、サーバーDRAM同様にBit単価が高いです。また、NANDはeMMCもしくはUFSと呼ばれるタイプのNAND+Controllerが同一パッケージに入ったストレージが使用されるのですが、MCP(Multi Chip Package)と呼ばれるDRAM+eMMC or UFSというタイプのすべてが一つに入ったメモリも使用されます、主に省スペースのために利用されます。

売上成長率を見ても明らかなように、コロナで低迷したスマホ出荷台数の回復と、より多くのメモリ(特にDRAM)を使用する5Gスマホの出荷開始を追い風に好業績となりました。特にMCPの売上は過去最高、またLPDDR5という最新型のモバイルDRAMの売上はQoQで3倍となりました。今後のシェア維持/拡大に向けて1α世代のLPDRAMのサンプル出荷開始と176層のNANDを使用したストレージのサンプル出荷を開始しているともアナウンスしています。

モバイル市場はサーバー市場同様に半導体、特にメモリ半導体にとっては稼ぎ頭の市場です。特に5Gスマホはメモリ半導体需要の底上げに寄与します。平均的な(?)4Gスマホの搭載DRAM容量が約6GBなのに対し、5Gスマホに搭載されるDRAMは約8GBと言われています。またストレージの容量上限も256GB〜512GBだったのが、1TB級のNANDを積んだスマホが登場してきています。

Gartnerによると2021年のスマホ出荷台数は2020年比で+11%となっており、さらに5Gスマホの出荷台数は2倍以上の成長となると言われており、年間を通してまだまだ旺盛な半導体需要が見込まれると思います。特にスマホは9月に新作発表→年末にかけて販売ピークを迎えますので、作り込みの時期はまだまだこれからと考えると、上記のサーバー市場とともにまだまだ大きな需要の波が待ち受けていると考えられます (参考【Gartner Says Worldwide Smartphone Sales to Grow 11% in 2021】)

Storage Business Unit(SBU)

SBUはリテール向けのSSD単体売りやスポットマーケット向けのメモリモジュールなどの販売分です(Crucialなどのブランドで販売していたりする)。ここはあまり重要なところではないですし決算資料にも特に記載はないのでパスしますが、日々半導体の市況の最前線にいる身としては、メモリ各社がスポットマーケットにばら撒くウェハの供給数を出し渋りしていると感じています。

こういった市場はDRAM eXchangeなどで知ることができますので下記の過去記事を参考にしてみてください。

DRAM eXchangeとメモリ半導体価格
台湾Trend Forece社のDRAM eXchangeでメモリ半導体のスポット価格情報を参考に半導体業界の市況を知る方法を解説。Samsung(サムスン), Kioxia(キオクシア), Micron(マイクロン), SK hynix(ハイニックス)など大手半導体メーカーの動向やニュースを知るのに役立つ。

Embedded Business Unit(EBU)

最後にEBUです。こちらは家電などのコンスマー、プレステやXboxなどのゲームコンソール、産業機器向け、車載向けメモリの売上が含まれている市場となります。新型ゲームコンソールに使われるGDDR(Graphic DRAM)と呼ばれる単価の高いDRAM、また最近ホットな話題となっている車載向けの動向について注目したいと思います。

EBUの売上は$696MでQoQの成長率は+16%でYoYは+34%となりました。この内の殆どをゲームとコンスマー向けのメモリが占めていると考えられます。特にゲーム向けのGraphic DRAMの売上はYoYではSignificant Growthを記録したとしつつも、QoQでは減少したとしています。前クオーターの売上が異常に強かったというコメントが加わっていますが、個人的にはゲームコンソールに使われるGPUの供給不足があるのでは?と考えています。プレステやXbox、ニンテンドーにはAMDやNVIDIAのGPUが使われていますがこれらはすべてTSMCやSamsungの最新プロセスで作られます。これらの製造ラインはPC・サーバー向けのCPUやアップルの自社SoCとモロに被るところですので、そういった顧客と取り合いになっているのかな、と考えられます。

プロセッサ不足のリスク?

少し飛躍した話になりますが、このような最先端ラインに集中する需要が増加し続けるとプロセッサ不足を巻き起こしかねません。加えてIntelも一部の汎用CPU製造を外部委託すると報じられており、このような先端ラインへの需要が更に見込まれます。プロセッサ不足が発生すると、結果的にセットが作れなくなりDRAMやNANDなどのモノあまりへ波及するリスクも考えられます。

車載向け業績はRecord Highを記録

また、EBUに含まれる車載向けの売上も史上最高額を記録したと報告されています。Auto Grade LPD5のサンプル出荷を開始したとも書かれています。LPDRAMは低消費電力だけでなく、スピードが早い為、ADASや自動運転機能に必須となるSoC向けに使われると推察され、これらの分野の需要拡大を感じさせます。

まとめ・個人的考察・今後のリスク

以上、MicronのQ2決算結果内容のまとめと市況考察でした。半導体は最近ニュースで供給不足が取り沙汰され、非常に過熱感が出ていることが否めません。ただ、Micronを始めとする半導体企業の好業績はまだまだ始まったばかりだと考えられます。特に汎用メモリは牽引市場であるサーバーやモバイルの需要増がこれから待ち受けている段階で、NANDのASPもこれから上昇が始まります。

・強い市況を追い風に、売上・利益率ともに回復基調
・DRAMは価格上昇中、NANDはASP下落するも市況改善の兆候が見え始める
・好業績は始まったばかり?
→コロナからの経済回復で企業のサーバー投資、GAFAMによる大型投資はこれから
→スマホ市場も出荷台数+11%、特にメモリを多く積む5Gスマホは出荷台数2倍
→NANDの価格上昇もこれから
一方で、少々考えすぎかもしれませんが、ゲーム向けのQoQ売上下落がTSMCやSamsungの最先端プロセスラインの取り合いを示唆しているように感じます。それらが近い将来、プロセッサ不足という思わぬ形で市況を一気に逆転させるリスクもあると考えており、引き続き注視が必要だと感じました。
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