2021年 Q2 NAND価格値上がり開始か?

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お世話になっております。

2020年のQ4末から2021年のQ1に、私はTwitterやブログを通して以下のようなメモリマーケットの見解を示していました。

・DRAM価格は2020年Q4中旬で底打ち、モバイル・サーバーの強い引きから価格上昇中
・NAND価格は3D NAND第4世代の歩留まり向上や第5世代の生産開始、QLC品の出荷などを理由に2021年前半を通して下落傾向にあり
具体的にはこちらの記事で言及していますね。
ですが、中国の旧正月が終わり2週間、そろそろQ2の大口価格交渉が決まる時期に入っているのですがここにきてNAND市況の察知しています。もっと言ってしまうと、NANDの値上がりが一足はやく始まっているのです。
私自身は業務で半導体の最前線に居る訳なので、おそらくこの記事の読者の皆さまが知らない情報を沢山持っているわけなのですが、あくまで公になっている情報を基に、本件について解説してまいります。
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DRAM eXchangeのスポット価格

DRAM eXchangeというサイトを使うと、その時のメモリスポット価格を確認することができます。DRAM eXchangeについては下記の記事を御覧ください。

DRAM eXchangeとメモリ半導体価格
台湾Trend Forece社のDRAM eXchangeでメモリ半導体のスポット価格情報を参考に半導体業界の市況を知る方法を解説。Samsung(サムスン), Kioxia(キオクシア), Micron(マイクロン), SK hynix(ハイニックス)など大手半導体メーカーの動向やニュースを知るのに役立つ。

3月に入りNAND価格が小幅上昇

下記のスクリーンショットで赤枠で囲ったところに注目します。

まずWafer Spot Priceを見てみます。128Gb / 256Gb / 512Gb TLC NANDのウェハの価格のところです。なお、Wafer Spot Priceとはダイシングされパッケージ化されていない、ウェハの状態で販売されるNANDフラッシュのチップあたりの価格を指します。主に自社でNANDを作れないSSDメーカーやメモリカードメーカーがMicronやKioxiaから購入し、自社ブランドのSSDやメモリカードとして販売します。

現在の主流は256Gb TLCなのですが3月1日に1.2%の値上がりが観測されています。これらのNANDは主に高用量のスマホ向けメモリやSSDなどに使用されます。

また、eMMC Spot Priceにも注目です。これはマイナーな商品ですが、容量帯が4〜16GBということでGbに直すと32Gb 〜 128Gb (1GB = 8Gb)となり、おもに2D MLCのレガシーNANDが使われています。3月8日に26%〜40%近い大幅な値上げです。これらのメモリは基本的に車載であったり産機など高い品質が求められる場所に使用されます。

なおeMMCはNAND + Controllerで構成されており、Controller自体の値上がりはファウンドリの逼迫やサムスンのテキサス工場操業停止などを影響に値上がりが続いていたのですが、BOMコストに占める割合はNANDが圧倒的に大きく、ここまでの値上がりはNAND自体のコストアップが要因だと考えられます。

MicronのQ2ガイダンス上方修正

メモリ大手のMicronは3月に入り、Q2ガイダンスの上方修正をアナウンスしました(下記スクリーンショットはMicron IRより)。

ただ、今回の上方修正はDRAMが牽引しているとのことでしたが、これはあくまでQ2の上方修正なので、本格的なNANDの市況改善は今月末に控えるQ2決算発表のQ3ガイダンスで聞けると思っています。

その他証券会社アナリストのコメント

大手メモリ Top 2 Samsung ElectronicsとSK hynixのお膝元、韓国の証券会社アナリストも下記のように3月に入りコメントを出しています。

韓国投資証券のユ・ジョンウ研究員は「半導体メモリとシステム半導体全般に価格上昇が現れているが、短期間に供給が増えることは困難で、購買者の在庫蓄積需要が強い。DRAMのみならずNAND価格の反騰時期も早まると予想される」と見通した。
引用 ハンギョレ新聞『「成長率19%予測も保守的設定したもの」半導体市場、長期好況に突入』

理由について

それではなぜNAND価格の反発がここに来て早まったのでしょうか。下記の3点が理由だと思っています。

→データセンター、スマホなど大口需要の強い引き
→車載および産機マーケットの回復により高品質NANDの需要が回復
→買い溜め需要の発生

データセンターなど大口需要が好調

メモリの価格というのは、スポット価格と大口価格(Contract価格)の2種類が存在します。前者はDRAM eXchangeで確認できる小口向け価格で、例えば自社でNAND製造ができないモジュールメーカー向けのウェハ価格だとか、場合によってはeMMC等の完成品をODM供給する場合などの価格が該当します。

一方で大口向けはアップルとか、ソニーとか、IBMなどと言った大量にメモリを消費する顧客向けの価格で基本的にカレンダーイヤーのクオーター毎に価格交渉が入ります。今は3月ですので、そろそろ4月〜6月期の価格が妥結される頃なのです。そして、大口価格が決まり始めるとそれに伴いスポット価格もまた一段高になったりする現象が発生すると考えてください(ちょうど機関投資家の大きな出来高が入ると株価がドカンと上がるような感じ)。

上記のDRAM eXchangeのスクショで1.2%程度の上げが観測されていた256Gb TLCのウェハは主にSSDやスマホ向けの高用量メモリ(UFS/eMMC)に使用されるタイプのNANDです。それらが値上がりを始めたということは、やはり5Gのスマートフォンの需要やデータセンター向けのSSD等の需要が好調であることが推察されます。

車載・産機向け高品質NAND

2020年は車載マーケットや設備投資系の産機マーケットがボコボコにやられた年でした。しかし、既に様々なニュースで取り上げられている通り、それらの市場は復調しており逆に供給不足に陥っている状況です。

NANDに焦点を当てると、実はこれらのマーケットで使われているNANDは少々特殊です。詳しい説明は省きますが、基本的に過酷な状況で使用されるため、動作温度幅が広く簡単に言うと高品質なNANDを使用しています。NANDのタイプで言うとSLC・MLC・一部のTLCです。

上記のDRAM eXchangeで40%近く上昇していた4GB〜16GBのeMMCはこれらのタイプのNANDとドンピシャにかぶるところになります。とくにこれらのタイプのNANDはレガシー化しており、NANDメーカーは積極的に供給量を増やしたがらない領域なので、供給不足に陥りやすい構造になっています。

また、一部のTLCも高用量の産機・車載マーケットに使用されており、2020年は需要が少なくメモリメーカーはTLCの生産キャパを精一杯データセンターやスマホ向けに振っていたのですが、ここに来て一部を戻さざるを得なくなっており、一方で高品質なためアウトプットも比較的少なく、それらの要因が重なり価格上昇を早めたのではないかと私は考えています。

買い溜め需要

最後に考えられるのは、買い溜め需要です。メモリメーカー各社はQ1の時点で2021年下期からNAND受給が反転し、価格上昇が見込まれることを示唆していました。

SK hynix FY20決算発表とメモリ半導体市況の考察
韓国メモリ半導体大手SK hynixのFY20通期決算とメモリ半導体市況に関する考察記事です。メモリ半導体市況は2019年から回復しており、コロナ特需と在庫調整などの反動があったものの2020年末からDRAMを中心に好転し、2021年はSK hynix等メモリ半導体メーカーにとって良い事業環境となることが考えられます。

ですので、一部の大口顧客はそれを見越してQ2に実際に必要になる数量以上の数量を先取りする調達戦略をとったことが考えられます。結果として、メモリ各社がQ2にコミットできる供給を上回る発注がなされたことにより、価格が上昇したと考えられます。

もちろん需要の先食いが入るわけですから、エンドの需要自体が更に上振れしない限り、どこかで一度調整が入ります。ただ、感覚的にはなりますが、スーパーサイクルに入ったと言われているのでおそらく1年・2年はメモリ無双状態が続くのではないかと思います。

まとめ

あまり明確に出せるエビデンスがない状態ですので歯切れが悪い記事なのですが、DRAMに続き上半期は下落が予想されていたNANDの市況改善が1クオーター分早まっている模様です。

詳しいことは3月末のMicron決算とガイダンスでもっと分かるんじゃないかと思います。

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