2021年Q2 車載半導体大手各社の業績

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2021年Q2(4-6月期)の車載半導体各社の業績まとめ記事です。

【この記事のポイント】
・コロナ直撃の前年同期比で、車載半導体売上のYoY成長率が非常に高い
・ただしQoQ成長率は横ばい、でも半導体が余っているわけではない
・QoQの売上成長鈍化は季節性の影響に加えて会社によっては足元の供給制約なども有り
・半導体の需要は底堅い、既に来年末までの受注が埋まりアロケーションをしている企業も
・収益性は改善している?

本ブログではこれまで車載半導体各社の業績記事を書いてきましたが、厳密な『車載半導体メーカー』という定義はありません。これまで通り売上に占める車載半導体比率が高い会社(半導体市場に占める車載市場の売上は10%程度なのでそれ以上)、または車載半導体を注力事業として謳っていたり車載半導体市場に存在感が高い会社を車載半導体メーカーとしています。

車載半導体については筆者の過去記事も参考にしてみて下さい。

車載半導体市場を解説
車載半導体は2021年現在、半導体デバイス総出荷額の約10%程度しか占めませんが、半導体業界では非常に注目されている市場です。この記事ではパワートレイン電動化やADASといった観点から車載半導体市場の成長、また車載半導体のユースケースや代表的半導体メーカーについて解説します。
【本記事で取り上げる車載半導体メーカー】
・Texas Instruments (テキサス・インスツルメンツ / Ticker: TXN)
・Infineon Technologies (インフィニオンテクノロジーズ / Ticker: IFNNY)
・ST Microelectronics (STマイクロ / Ticker: STM)
・NXP Semiconductors (NXP / Ticker: NXPI)
・Renesus Electronics (ルネサス)
・ON Semiconductor (オンセミ / Ticker: ON)
車載半導体各社の市場における位置づけはInfineon Technologiesの四半期決算資料で把握することができます。
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2021年Q2車載半導体大手6社の売上とYoY売上変化率

大手6社の2021年Q2(4-6月期)の売上の結果です。通貨はすべて米ドル換算で、独Infineon Technologiesとルネサスについてはそれぞれの決算資料で明記されているユーロ・日本円の対米ドルレートを使用して換算しています。

売上のグラフの上にそれぞれ総売上と車載半導体売上に限った売上のYoY変化率を記載していますが、6社とも二桁売上成長率を達成している上に、車載事業の成長率が総売上成長率を上回っている事がわかります。理由は比較している2020年Q2が欧米におけるコロナ禍第一波の真っ只中で特に車載市場に大きな打撃を受けたからと考えられます。

私自身、欧州に在住しておりますが、思い起こすと昨年の今頃は車載のフォーキャストが消え去り、発注済のオーダーも顧客からプッシュアウト(納入先延ばし)のリクエストが連日のように舞い込み、そろそろクビになるのではないかと思っておりました。ヨーロッパ各国ではロックダウンにより自動車ディーラーが営業停止となり、ドミノ倒しのように自動車メーカーの生産ラインが止まり、我々が半導体を納入するTier 1の生産ラインまで止まったからです。全社会議の情報交換では北米や南米も同じような状況だったと記憶しています。

一般社団法人日本自動車工業会によると、欧州や北米・南米地域の新車生産台数はざっと世界の45%を占めていますので、日本や中国では生産が続いていても欧州・北米・南米で生産が止まってしまうと車載半導体メーカーは非常に大きな打撃を受けるのです(画像引用 – JAMA 世界各国/地域の四輪車生産台数)。

2021年Q2車載半導体大手6社の売上とQoQ売上変化率

つづいてQoQの売上成長率を見てみます。YoYでは大きな成長率を見せていた各社ですが、QoQでは既にそれほど大きな成長率を見せていません。マイナス成長に陥っているメーカーもあります。

半導体は余っていない

『QoQの伸びが鈍化しているのであれば、半導体は既にモノ余りなのか?』という質問を受けますが、個人的には現状半導体の需給バランスは依然として非常に逼迫していると思います。

もともと半導体市場というのは、カレンダーイヤーの前半よりも後半のほうが出荷額が伸びやすくなります。その理由は市場を牽引するスマホやPC、家電といった顧客が特に下期から新製品の生産を始めるからです。上記各社の売上は車載だけでなくPCやスマホ、家電といった顧客も含まれていますので全体としてQ1からQ2の伸びははパッとしないというシーズナリティの影響があるでしょう。

On a sequential basis, net revenues decreased 0.8% due to the normal seasonality in Personal Electronics.
引用 – ST Microelectronics Q2 Earnings Call Transcript

さらに、企業によっては需要事態は伸びているものの、サプライチェーンの混乱や供給量の制限によりQoQの出荷額が減少したという事情もあるようです。

ATV(車載) segment revenue totaled €1,205 million in the third quarter of the current fiscal year(21年4月-6月期), compared to €1,219 million in the preceding three-month period. Held down by restricted manufacturing capacities, revenue dropped slightly by 1 percent, while demand continued to rise across all product areas.
引用 – Infineon Technologies Q3 21 Earnings Press Release

下記はInfineon Technologiesの最新決算資料のスライドの一部です。右下のBook-to-Billというグラフに注目して下さい。これはBB Ratio(BBレシオ)と言ってある期間に新規受注した金額を同期間に計上された売上の金額で割った数値です。これが1より大きければ出荷額よりも多い金額の受注を受けているということになり、需要の先行きが明るいということになります。昨年のFQ4(2020年7月-9月期)から1を越し右肩上がりの状態が続いています。

半導体の需要、特に車載半導体の需要事態はとても底堅いですが、足元はこのような事情もあり十分な量を出荷できず機会損失を生み出しているといった事態が発生しているようです。

各社の車載売上・営業利益の過去2年の四半期ごとのトレンド

続いて、車載半導体メーカーの過去2年の車載売上・営業利益率・営業利益の四半期ごとの詳細なトレンドを見てみます。決算資料で事業部別ブレイクダウンの数字が公表されているSTマイクロ・インフィニオン・ルネサスに絞ります。

各社の車載売上と営業利益率の推移

四半期ごとの売上と営業利益率の推移です。なお、ルネサスのみNon-GAAPでの各事業ごとのブレイクダウンが公表されています(資料引用 STMInfineonルネサス各社決算資料)

【表の見方】
棒グラフ青→車載半導体に限った売上額
棒グラフ緑→それ以外の売上額
折れ線グラフ灰色→各社の全体の営業利益率
折れ線グラフ青→各社の車載半導体に限った営業利益率

やはり、車載事業の利益率は全体よりも低い傾向にあります。前回の記事でも説明しましたが、車載半導体は本当に色々と手間がかかる上にコストダウンのプレッシャーもキツく、なかなか儲かりにくい環境にあります。

2021年Q1 車載半導体大手各社の業績
2021年Q1(1-3月期)の車載半導体大手各社の業績まとめです。TI・Infineon・ST・NXP・ルネサス・オンセミなど車載半導体に強い半導体メーカーの業績にフォーカスした記事です。コロナ禍及びそれ以前の車載半導体の四半期トレンドについても解説しています。

それでも各社はなんとか持ち直して来ており、特にルネサスはNon-GAAPではありますがきれいな右肩上がりの曲線を描いています。

それでも車載半導体はまだまだ伸びしろがある分野です。特にパワートレインの電動化やADASの進化といった部分が上記各社が供給するパワー半導体、アナログ半導体、マイコン・SoCと言った類の車載半導体の市場を盛り上げていきます。

車載半導体市場を牽引するxEVのうちPHEVとBEVは2021年前半の6ヶ月で販売台数が前年同期より倍以上になっています。

ちなみにIntelの車載事業Mobileyeの営業利益率の推移は下記のようになっています。上記三社はパワー・アナログ・マイコン(+SoC)といった車載半導体を全般的にやっていますが、インテルはADAS向けのSoC、それもハイエンドな一部のモデルに注力しています。売上のカサは少ないですが、利益率はそれなりに高いです。

各社の売上とYoY変化率

続いてYoYの売上変化率です。

【表の見方】
棒グラフ青→車載半導体に限った売上額
棒グラフ緑→それ以外の売上額
折れ線グラフ灰色→各社の全体の売上成長率 YoY
折れ線グラフ青→各社の車載半導体に限った売上成長率 YoY
冒頭でお見せしていますが、売上は三社とも車載半導体事業の成長率が高いです。

各社の営業利益とYoY変化率

最後に、各社の営業利益とYoY変化率について見ていきます。

【表の見方】
棒グラフ青→車載半導体に限った営業収益
棒グラフ緑→それ以外の営業収益
折れ線グラフ灰色→各社の全体の営業収益成長率 YoY
折れ線グラフ青→各社の車載半導体に限った営業収益成長率 YoY
前年度比較では三社とも収益性が大きく改善しています。特にSTマイクロとInfineonの回復は目覚ましいですね。金額にすると三社ともどっこいどっこいといった感じでしょうか。STマイクロが少し気になりますがInfineon Technologiesとルネサスは堅調に推移していってるように見えます。

その他・車載半導体市場における主要トピック

最後に、車載半導体市場における主要トピックなどについて確認していきます。

18ヶ月先の需要をカバー

ST Microelectronicsは決算コールで現在18ヶ月先までの注文が埋まっていおり、来年のアロケーション(供給量の割り振り)を行っているとしています。

Moving to Automotive vertical. Bookings remained strong in the second quarter with demand still well above our current and planned manufacturing capacity. Bookings now cover about 18 months of demand, and we are working on allocating our planned capacity for next year.
引用 – ST Microelectronics Earnings Call Transcript

Infineon Technologies来期売上見込と供給リスク

Infineonは来期の売上を下記のように見込んでいます。東南アジアにおける生産制約リスクが有ることを触れています。

Infineon Technologies
・7月~9月期総売上見込: 2.9B EUR (QoQ +6.5% / YoY +33.3%)
・車載売上 QoQはFlat
・東南アジアにおける生産制約リスクあり
(参考 Infineon Technologies Press Release)

火災が起きたルネサス那珂工場は回復へ

2021年3月に発生したルネサスの火災の影響は同社の生産能力・出荷能力に影響を与えましたが、今月中(2021年8月)には火災前水準を超す出荷量まで引き上げていく見通しとしています。

ルネサスエレクトロニクスの柴田英利社長は29日にオンラインで行った決算会見で、3月に火災を起こした那珂工場(茨城県ひたちなか市)の半導体出荷について「8月の中旬には火災前の出荷水準を超えて、かなり上回ったペースで出荷を継続できる」との見方を示した。柴田社長は、現状の出荷水準は「火災前の9割程度にとどまる」と説明。理由として、いくつかの製造装置でトラブルが相次いだことを挙げた。同社は6月25日に発表したリリースで、那珂工場の生産水準は同24日に火災発生前対比で100%を回復したのに対し、出荷水準に関しては火災発生前に復帰するのは7月第3週ごろとの見通しを明らかにしていた。
引用 – Bloomberg ルネサス社長、那珂工場出荷「8月中旬に火災前水準超す」-決算会見

車載向け画像センサーの需要も楽しみ(個人的に)

車載半導体はパワー半導体やマイコンが注目されがちですが、ADASの進化に伴い画像センサーのユースケースも増えていきます。画像センサーと言うと、日本のソニーが圧倒的なシェアを持つのですが、車載市場に限ると米国のON Semiconductorが大きなシェアを持つことで知られています。

車一台にON Semiconductorのイメージセンサーを28個と3D LiDARセンサーを4個使うらしいです。現在のCMOSセンサーの市場はスマートフォンが圧倒的ですが、スマホに搭載される画像センサーは1個~4個程度です(レンズの個数が多ければ多いほど、使われるセンサー量も増える)。

出荷台数で言えば車よりスマートフォンのが多いのですが、一台あたりの搭載個数がとても多く、そしてこれからADASが進化し、搭載される車の台数も増えていくと考えると非常に伸びしろの有る市場と言えます。

We recently announced that AutoX has selected our intelligent sensing technologies to enable 360 vision in its Generation 5 Fully Driverless Robo Taxi. On this platform, our 28 image sensors and for four 3D LiDAR sensors, eliminate blind spots and powerful autonomy.
引用 – ON Semiconductor Q2 Earnings Call Transcrpit

ON Semiconductorはパワー半導体(PSG)のシェアも高いですが、こちらももちろん車載市場が牽引役となっているようです

Turning to the business units, revenue for the Power Solutions Group or PSG was $846.6 million. PSG revenue increased by 37% year-over-year due to strength in automotive and industrial end markets.
引用 – ON Semiconductor Q2 Earnings Call Transcrpit

ON Semiconductorの車載市場におけるパワー半導体シェアは4位ですね。

まとめ

以上、車載半導体大手各社の4月-6月期の決算振り返りでした。既に成長はピークアウトしたのではないか?という意見もあるようですが、車載半導体はこれからまだまだ需要が伸びる分野ですし、足元の供給の乱れは有るものの長い目で見れば伸びしろが大きい分野だと考えています。

・コロナ直撃の前年同期比で、車載半導体のYoY成長率が非常に高いがQoQ成長率は横ばい
・QoQの売上成長鈍化は季節性の影響に加えて会社によっては足元の供給制約なども有り
→半導体はまだまだ余っていない
・半導体の需要は底堅い、既に来年末までの受注が埋まりアロケーションをしている企業も
・収益性は改善している?
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