2021年Q3 車載半導体大手各社の業績

スポンサーリンク

お世話になっております。

少し遅くなりましたが2021年Q3(7月-9月期)の車載半導体各社の業績が出揃いましたので各社の業績を纏めます。

なお、車載半導体という厳密な定義はなく、このブログでは車載売上比率が高い、車載半導体に注力していることを標榜しているいくつかの半導体メーカーを毎回取り上げています。具体的にはTexas Instruments、Infineon Technologies、ST Microelectronics、NXP Semiconductors、ルネサスエレクトロニクス、ON Semiconductorです。

スポンサーリンク

車載半導体大手5社のQ3売上

車載半導体大手5社のQ3の売上数字を見てみましょう。

車載半導体大手のQ3 YoY売上成長率

車載半導体大手の売上とYoY変化率は下記のようになっております(いずれも各社のIR資料より *Texas Instrumentsだけは厳密な車載売上の数字を公開していないので決算Callを参考に売上比重20%程度と推測しています)。

YoYの売上成長比較はまだまだコロナ禍で車載顧客減産の影響を受けていた2020年Q3比較ですので各社2桁%の成長となっています。

売上成長率のコメントを見ると、やはり車載の需要回復、そして場合によってはコロナウイルス流行以前の水準よりも既に高い水準の車載向け半導体の売上を達成しているといった点も散見されました。

The changes both sequentially and from the year ago were generally consistent across the diverse set of sectors. The automotive market again grew sequentially and was up more than 20% from the year ago. When comparing to pre-pandemic levels of Q4 2019, revenue is up almost 30%.
引用 – Texas Instruments Q3 Earnings Transcript

車載半導体大手のQ3 QoQ売上成長率

つづいて各社のQoQの売上成長率を見てみます。こちらも同じく各社の決算資料より数字をとってきております。

QoQの売上成長はルネサス以外は1桁%の成長に落ち着いています。YoY売上はコロナ禍との比較というベースエフェクトがあると思いますし、そもそも車載市場はコンスマーやスマホのように年末商戦に売上集中したりしませんので四半期ごとの上下というのは比較的に少ないです。

しかし、STマイクロに至っては総売上はQoQ +6.9%を維持しているものの、車載売上に関してはQoQ -6.7%のマイナス成長となっています。

Q3の車載半導体大手のQoQ売上の低成長については2つの理由が思い浮かびます。

Q3車載半導体売上のQoQ成長鈍化に関する考察

筆者は、半導体不足によるOEMの減産による影響とコロナウイルス感染によるサプライチェーンの乱れ(半導体メーカー毎に異なる)がQoQ成長鈍化の理由ではないかと思います。

半導体不足によるOEMの減産

OEM(自動車メーカー)の部品不足による相次ぐ減産のニュースは既に皆様御存知のことだと思います。

大手自動車8社が28日に発表した4~9月の世界生産台数は、コロナ禍前の2019年の同期間と比べて21%減の1086万7千台となった。半導体などの部品不足による減産の影響が出ている。11月も減産は続きそうで、国内経済の主軸の自動車産業は厳しい状況だ。4~9月の世界生産は、コロナ禍で生産停止が相次いだ前年よりは11%増えたが、本格的に回復していない。東南アジアからの部品納入が停滞した9月の世界生産は155万9千台で前年同月より36%減だった。
引用 – 朝日新聞『自動車生産にデジタル化の影 半導体不足、11月も減産の見通し』

ボストン・コンサルティング・グループによる試算によると2021年は最大で900万台の自動車減産が見込まれているとのことです(参考『半導体不足で車の生産減は年最大900万台、ボスコン分析』)。

半導体が1つでも足りなくなると、完成品を作れないということは有りえます。特に車載半導体は、他社製品に置き換えが効かない専用品を多く使っていたり、車という品質が人の命に関わる製品であるが故に、簡単に製品を置き換えにくいという事情もあります。

ですので、特定の半導体の供給がボトルネックとなり、最終製品を減産せざるを得ない事態となり、結果的に比較的に供給に余裕がある他の半導体が影響を受けてしまっているということは十分考えられます。

ルネサスのQ3決算ではチャネル在庫がQ2に比べて増加していることが示されています。これは商社などに溜まっているルネサスの半導体の完成品在庫です。理由として、OEMの生産減があがっています(下記スクリーンショットはルネサスエレクトロニクスQ3決算発表資料より)。

コロナウイルスによる生産減

多くの車載半導体メーカーは東南アジアに生産拠点を持ちます。しかし、東南アジアではコロナウイルス万円に対して工場の稼働などに制限をかけるなど厳格な規制があり、結果的に半導体を含めた部品サプライヤーの生産に影響を与えています。

東南アジアでは、ワクチン接種率が伸び悩むなか厳格な活動規制による景気下押し圧力が続く。ベトナムを中心に工場稼働制限により供給遅延も発生し、サプライチェーンを通じた影響も注視する必要がある。東南アジア諸国では、本年半ば以降、経済活動規制が強化されたことを受けて景気が大きく低迷している…東南アジアでは工場の稼働制限も厳しくなるなど製造業の生産活動への悪影響も目立つ
引用 – 日本総研『コロナ禍の東南アジアから広がる供給網の混乱』

ST Microelectronicsは需要はあるものの、マレーシアの生産拠点においてコロナウイルス対策の行動制限による減産を余儀なくされ、車載半導体の業績に悪影響を与えたことを決算資料で示しています。

The revenue performance was driven by strong global demand and by our engaged customer programs in Personal Electronics. This was partially offset by lower than expected revenues in Automotive, caused by more severe than anticipated reduced operations at our Malaysian manufacturing facility due to the pandemic.
引用 – ST Microelectronics Q3決算資料

しかし一方で同社の粗利はQoQで+9.8%(売上 +6.9%)/+1.1pts改善しており、車載(下記のADG)を含めた各セグメントの営業利益率は上昇傾向にあります。製品ミックスの向上と、売手市場であることを生かして収益性が改善されたことが伺えます。

車載半導体大手は積極投資中

車載半導体大手各社は今後も増え続ける需要に対応するために積極投資を続けています。

特に車載半導体大手は生産キャパシティに対する投資とSiCやGaN等新素材に対する投資を積極的に行っているようです。

ドイツ大手のInfineon TechnologiesはSiCやGaNといった新素材への投資やウェハの300mm化を推進し増え続ける需要に対して生産キャパシティの拡大を急いでいます(下記はInfineon Technologies決算発表資料より)。

パワー半導体大手のON Semiconductorも300mm化やSiCへの投資を進めています(ON Semiconductor決算資料より)。特に300mm化はアウトプットの向上だけでなく、半導体価格のコストダウンにもつながるようです。

増え続ける車載半導体の需要ですが、牽引役は大きく分けてEV化と自動運転と言えるでしょう。

その2つについてもう少し詳しく見てみます。

EV化が車載半導体の需要を牽引

Infineon Technologiesの決算資料によると、2021年現在の平均的なICE(内燃自動車)が搭載する半導体のBOMコストは〜490ドルに対してPHEV/BEV(プラグインとバッテリーEV)が搭載する半導体は約2倍の950ドルであることが示されています。その多く(75%)をインバーター周りが占めていることから、パワー半導体の需要が特に大きいことがわかるでしょう。

左側の棒グラフは同社のPHEV+BEVの年間生産台数の試算ですが、2020年比較で2026年は5倍以上、2030年には9倍以上にPHEVとBEVの生産台数が膨れ上がることが予想されていますのでその分車載半導体の需要も増えていくわけです。

またSiCの重要性も年々あがってきています。同社はFY21時点で$200M程度のSiC製品の売上を2020年代中盤には$1000Mまで引き上げ市場シェア30%を視野に入れているとしています。SiCの需要は主に鉄道や充電器などの産業用途とEVなど自動車から来ています。

自動運転と車載半導体

自動運転の進化も車載半導体の需要を加速させます。マッキンゼーによると、自動運転のレベル別の半導体市場の成長は下記のように試算されています(画像引用 Automotive semiconductors for the autonomous age)。

2019年〜2030年を見ると、現在主流のレベル2がメインのボリュームゾーンのままですが、より自立化された自動走行が出来るレベル4のTAMが膨れ上がっていることがわかります。

自動運転により恩恵を受ける車載半導体はパワー半導体ではなく、制御を司るMCU(マイコン)やSoCなどのロジック半導体、また外部から情報を取り込むセンサーや高速通信に使われる半導体などであると言えるでしょう。

ルネサス、次世代R-Carを活用した車載ゲートウェイソリューションを発表
ルネサス エレクトロニクスは10月6日、次世代車載中央コンピュータ向けに、新たに開発した第4世代R-Carシリーズのゲートウェイ用SoC「R-Car S4」とパワーマネジメントIC(PMIC)を組み合わせた車載ゲートウェイソリューションを発表した。

車載半導体の需要を掴むには包括的なポートフォリオが必須

このように、車載半導体の需要は1台あたりの搭載量の増加と、半導体をより多く使うPHEV/BEVなどの生産量の増加により指数関数的に増えていきますが、車載半導体といってもパワー半導体からマイコンやセンサーなど様々な品種があり、それぞれの需要のスイートスポットは異なります。

例えばInfineon TechnologiesやON Semiconductorであればパワー半導体を主軸にEV化の流れを取りつつ、マイコンと車載向けの特殊メモリーやセンサーなどのポートフォリオを持つことで自動運転化の需要を汲み取ることが可能となっています。

その事からこれらの車載半導体メーカーもニュースのヘッドラインになる規模では無いものの小型の買収を繰り返しており、常にポートフォリオの補完と拡充を図っているのです。

引き続き半導体市場に注視してまいります。今後とも宜しくお願い申し上げます。

タイトルとURLをコピーしました