FY20半導体製造装置メーカーの決算振り返りと今後の考察

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半導体製造装置メーカーのうち、特に前工程の製造プロセスにおいて使用される下記の3社の2020年の業績の振り返りと今後について考察をいたします。

この記事で取り上げる半導体製造装置メーカー3社 (NASDAQ Ticker)
・Applied Materials ($AMAT)
・ASML Holding ($ASML) *ADR
・Lam Research ($LRCX)

この記事のポイント
・2000年のITバブル崩壊以降、半導体製造装置市場は半導体デバイス市場に比べて出遅れていた
・理由は半導体メーカーの寡占化による投資額の最適化など
・2017年頃から、装置市場はEUV露光装置や3D NAND向けドライエッチングの出荷を背景に大きな成長を見せた
Applied Materials
→半導体製造装置で多彩なポートフォリオを持つ。Kokusai買収でさらなる寡占化。
ASML
→圧倒的な露光装置のシェアを握る。EUV露光装置は100%。今後もLogicのスケーリングに伴い、さらに高単価な高NA品の出荷やDRAMへのEUV適用の恩恵を100%享受できる
Lam Research
→増え続けるNANDフラッシュの需要、特に3D NAND立ち上がり以降ドライエッチングのシェアで成長。高いサービス売上比率。3D NAND依存回避のため、EUVドライレジストなどで成長戦略を描く。
【注意】
本記事は特定企業の業績や株価について言及していますが、株式投資を推奨するものではありません。一方で筆者は個人的に本記事で取り上げるASML Holding ($ASML)およびApplied Materials ($AMAT)の株式を2021年3月時点で保有しています。
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半導体製造装置の市場規模

半導体装置の出荷額から金額市場規模を見てまいりましょう。

半導体製造装置市場の出荷金額

下記は半導体製造装置市場の2016年から2022年までの出荷金額推移を表したグラフです(データ出典 SEMI)。SEMIによると、2020年の半導体製造装置市場は689億ドルと過去最高の出荷額を記録しました。半導体製造装置はウェハファブ装置、パッケージング製造装置、テスト装置のセグメントに分けられますが、一番大きなパイを占めるのがウェハファブ装置で594億ドル(YoY +15%)の出荷額となっています。ウェハファブ装置は例えば、シリコンウェハ上に回路パターンを形成する露光装置や余分な酸化膜やレジストを取り除くエッチング装置などが含まれます。続いてチップを組み立てるパッケージング装置が35億ドル(YoY +20%)、そして完成した半導体の機能試験をするためのテスターが60億ドル(YoY +20%)となっています(参考『2020年の半導体製造装置市場は前年比16%増の689億ドル、過去最高を更新へ』)。

上記の半導体製造装置の顧客の大部分を占めるのがファウンドリ及びメモリ半導体メーカーです。半導体の設備投資額を表すCAPEXベースでは、投資額の8割近くをロジック・Foundry・メモリ(DRAM/Flash)が占めています。具体的な会社でいうとIntel・tsmc・Samsung・SK hynix・Micron・Kioxia&WDなどがその殆どの金額を投資しています(データ出典 IC Insights)。

半導体製造装置・CAPEX・半導体デバイス出荷額の相関性

続いて、半導体製造装置の出荷額と半導体デバイス出荷額・CAPEXからこれらの相関関係について考察いたします。なお、CAPEXとは半導体の設備投資額を意味し、製造装置の他にクリーンルームの建設費なども含まれております。最先端のクリーンルームなどの建設費は数千億にものぼるのですが、Capexの金額のうち約60%以上が半導体製造装置の金額になります。金額の規模でみると、半導体デバイスの出荷額が圧倒的に大きいですが、半導体出荷額・CAPEX・半導体製造装置の出荷額はある程度の相関性があることがわかります(データ出典: 半導体出荷額 WSTS / 半導体製造装置 SEMI / CAPEX IC Insights)。

しかし、時系列を遡り、ドットコムバブル崩壊2000年〜2021年の半導体出荷額及びCAPEXの実績・予想金額をグラフにすると下記のようになります。半導体の出荷額がドットコムバブル崩壊時の水準に戻したのに要した時間は4年であったのに対して、CAPEXがドットコムバブル時の水準に戻ったのは11年後でした(半導体製造装置も同様の動き)。一方で、2017年からCAPEX・製造装置の前年変化率は+40%近い水準に跳ね上がり、CAPEXは2018年に$1000億の大台に乗せました。これには半導体工場の新規増設の他に、後述するように3D NANDや7nmプロセス以降の最先端ロジックで使われるドライエッチング装置やEUV露光装置が寄与していると言われています。

一方で、ジャーナリストの湯之上氏によると2000年以降長い目で右肩上がりが続いてきた半導体出荷額に対してCAPEXおよび半導体製造装置市場が出遅れた理由は下記のように半導体メーカーの減少と半導体製造装置自体の機能向上という2つの側面から説明されるとのことです(参考 – 湯之上隆のナノフォーカス『半導体産業はコロナに負けない! 製造装置市場の動向を読み解く』)。

①メモリメーカーの寡占化
→巨額な設備投資を行うDRAMを中心に、相次ぐ日本企業及びドイツ企業(キマンダ)の撤退②最先端ロジック開発競争の脱落者続出
→AMDのファブレス化やGlobal Foundriesの10nmギブアップなどを経て、Intel・tsmc・Samsungの3社のみが莫大な投資をするようになった
③半導体製造装置の機能向上
→製造装置の1台あたりのスループット(ある時間内でウェハを処理できる枚数)が向上し、必要な台数が減った(例: もともと1時間で100枚処理できていた装置の機能が向上し、1時間で200枚処理できるようになれば必要な台数が単純計算で半分になる)
一方で2017年から設備投資額が急激に増えた理由は下記のように説明されています。
①3D NAND向けドライエッチング装置の寄与
→HDDからSSDへ移行が加速、スマホの高容量化やBig Data時代によりNAND需要が拡大
→2017年ころから本格的に各社出荷を初めた3D NAND製造に使われるCVD装置やドライエッチング装置の出荷数増加が寄与
②EUV露光装置の寄与
→tsmcの7nmを筆頭に、非常に高単価(100-150億円/台)のEUV露光装置の本格出荷開始→2020年にはtsmcだけでなくSamsungのEUV露光装置購入も注目されるように
(③中国バブル)
→湯之上氏は上記の記事で特段言及されてはいませんが、筆者個人的には中国の地場半導体投資も寄与していると考えます。中国政府が半導体自給自足を目指し掲げた『中国製造2025』は2015年に発表された政策で、それ以降半導体工場の建設ラッシュが続きました
このように、半導体の出荷額(シリコンサイクル)と半導体製造装置出荷額を含む半導体設備投資の成長率はある程度の相関関係があるものの、長い目で見ると右肩上がりを続けてきた半導体出荷額に対して設備投資は伸び悩んだ時期が長く最先端品の立ち上がりを起爆剤に過去5年の間に大きく金額が増加してきたという違いがあるのです。

半導体製造装置メーカー各社の業績と今後の考察

それでは具体的な半導体製造装置メーカーの2020年の業績振り返りと今後の考察をしてまいります。先に申し上げましたとおり、本記事で取り上げる半導体装置メーカーは売上順のトップ5のうちのApplied Materials、ASML、Lam Researchとなります(画像出典 VLSIresearch)。

Applied Materials (アプライドマテリアルズ)

Applid Materialsはアメリカの半導体製造装置メーカーです。スパッタリングやプラズマCVD、CMPなどの装置で高いシェアを持っています。前工程の中では露光装置を除いてほぼすべてのプロセスを手掛けており、広いカバレッジを持った製品ポートフォリを保有しています(ちなみに、私の株のPortfolioの虎の子でもあります)。

Applied Materialsの業績

Applied Materialsの過去2年の四半期ごとの業績を下記のグラフに示しました(データ Applied Material Earnings)。なお同社の決算は10月末締めなので下記のグラフではQ1 FY21 = Q4 CY20と換算しています。

Applied MaterialsのFY20の売上は172億ドルで粗利率は45.1%、non-GAAP 営業利益率は約26%でした。

Applied Materialsはセグメントを半導体製造装置、サービス(Applied Global Service)、ディスプレイの3つに分類しています。半導体製造装置とディスプレイはそれぞれの製造装置で、装置が出荷されることに売上が立ちます。一方で、サービスとは納入した装置の保守・管理関連のサブスク売上となります。半導体製造装置は一度納入したら終わりでなく、定期的なメンテナンスが必要となるのです。売上のパイで言えばやはり圧倒的に半導体製造装置のカサがデカイのですが、半導体製造装置(とディスプレイ製造装置)は半導体メーカーの投資計画に大きく左右されるため、変化率のブレが大きいことがわかります。一方で、サービス関連の売上は既にインストール済の装置がラインで稼働している限り発生する収入なので、売上のブレが少なく、装置納入数の増加になぞるように右肩上がりのトレンドを書いていることがわかります。

Q1 FY21の決算資料では過去5年のサービス収入のCAGRは12%で装置売上成長の2倍、また直近の売上のうち約22%をサービス収入が占めています(半導体製造装置 68% ディスプレイ 10%)。

Applied Materialsの顧客構成

続いて、Applied Materialsの顧客構成を見てまいります。半導体のCapexの多くがFoundry/Logic/メモリによって占められているように、Applied Materialsの売上もFoundry+Logicとメモリが大半を占めています(アナログやパワーもFoundry/Logic/Othersとして含まれますが、極微量だと考えられます、TSCM・Intel・Samsungがほとんどでしょう)。ただ、やはり製品ごとにそれぞれの投資サイクルが微妙に異なっていて、Foundry・Logicが優勢な時期があれば、反対にメモリの投資が優勢な時期もあります。さらに、メモリの中でもDRAMとNANDで比率が逆転する時期があります。直近1年の動きとしてはFY20のFoundry・Logic比率は59%で前年比+7ptでしたので過去1年はTSMCやSamsungを始めとするFoundryの投資に牽引されたと予想されます。

Applied Materialsの今後

2021年3月現在、Applied Materialsの業績の展望は引き続き強い半導体の設備投資を追い風に、非常に良いです。同社は直近の決算発表でQ2 FY21の見通しを下記のようにアナウンスしており売上にしてYoY +36%の成長、特に半導体製造装置販売額はYoY +50%の成長を見込んでいます。また、比較的に地味なディスプレイ製造装置部門に関してもOLEDの普及が加速するにつれて、中長期で売上が成長していくことが期待されます。

また、Applied MaterialsはKokusai(日立国際電気から分社した半導体製造装置メーカー)の買収を控えています。Kokusaiは成膜プロセス装置の中でも特に生産効率の高いバッチ式プロセス装置のシェアが高いことで知られています。Applied Materialsは上述の通り、すでに幅広い製品ポートフォリオを有しているのですが、Kokusaiの買収をすることで、さらに現在の持つポートフォリオを補完し、総合半導体装置メーカーとしての寡占化を進めていくことになります。ただ、同社は東京エレクトロンとの統合が独禁を理由に頓挫させられた(巨大すぎる装置メーカー誕生を嫌った大手半導体メーカーによるロビー活動?)過去がありますので、現在承認待ちの中国当局動きを注視していく必要もございます。

ここに半導体製造装置のウェハプロセスと呼ばれる前工程の装置メーカーの寡占化が進まざるを得ない理由がひとつある。つまり、同じメーカーが一気通貫でプロセスを回した方が、全ての加工処理をスムーズに進ませるための開発などでも都合が良いからだ。A社の装置で感光材を塗って、B社の装置で露光して、C社の装置で現像して、D社の装置で洗浄して、また新たにA社の装置で感光材を塗ってというラインでは、そもそも無理があるが、更にもし万が一トラブルが発生した時、原因を切り分けて解明するのも大変だ。だからこそ寡占化が進むことになる。
引用 – Fund Garage『アプライドマテリアルズがKokusai Electricsを買収する意味 2』

ASML Holding

続いてオランダのASML Holdingの業績と今後の展望について考察いたします。ASMLは露光という回路をウェハ上に焼き付ける工程で使われる露光装置の圧倒的シェアをもつオランダの企業です。特に、TSMCが7nmから適用を開始したEUV露光装置という超ハイエンド機種では100%のシェアを保有しています。ちなみに売上10位のオランダのASM Internationalという製造装置メーカーはもともとASMLと同じ会社で、露光装置部門が分社化してASMLになりました(L = Lithography)。筆者個人的にもこの会社には投資をしておりポートフォリオの司令塔的な役割を果たしています。

ASMLの業績

下記はASMLの過去2年の四半期ごとの売上推移と営業利益率をまとめたグラフとなります(ASML IR情報を基に筆者作成)。売上はEUV露光装置・ArF液浸・KrF・Others(ArFドライ等)およびサービスに分けました。

直近の3クオーターを見ると、営業利益率が27.2%〜35.4%と非常に高い水準になっています。これには単価が非常に高いEUV露光装置が大きく寄与していると考えられます(EUV露光装置売上比率が高いQ4 FY19も同様)。また、Applied Materials同様、サービス収入は装置のインストール数が増えるに従い、基本的に右肩上がりの構図になります。

EUV露光装置とは、最先端プロセスの半導体を作る上でほぼ必須になる露光装置です(Samsungの8nmなどEUVを使わないプロセスもあり)。これまで半導体は約18ヶ月毎に集積度が2倍になるペースで微細化を進めてきました(ムーアの法則)。ただ、現在最先端のプロセスは10nm、7nm、5nm、3nmと微細化が進んでおり、微細化の難易度が極度に向上し、そのペースが落ちてきました。しかし、半導体に求められる機能(スピード、省電力)と需要は年々上がっており、そのような要求に応えることができる最先端プロセスを製造するのに(ほぼ)必須となるのがASMLのEUV露光装置です。現時点でEUV露光装置を供給できるメーカーはASMLのみとなっており、強豪となり得る製造装置メーカーも存在しないため、今後もASMLの独壇場となると考えられます。ちなみに、システム売上比率の高いArFi(液浸)も7nm相当の半導体に対応していますが、製造工程に何台も必要となる一方でEUV露光装置であれば工程の大幅省略が可能(下記図 ASML会社発表資料を参照)なため先端のプロセスからのEUV露光装置の引き合いは非常に強いのです。なお、ASMLはArFiやKrF等の露光装置においてもシェアをほぼ独占しているため、露光装置全体のシェアをASML一社が寡占している状況となっています(他はNikonとキヤノン)。

特集:EUV露光装置が織り成す半導体革命(レーザーテック、東京エレクトロン、アドバンテスト) | トウシル 楽天証券の投資情報メディア
毎週金曜日夕方掲載本レポートに掲載した銘柄:レーザーテック(6920)、東京エレクトロン(8035)、アドバンテスト(6857) 今回は、先端半導体の生産に重要な影響を及ぼす「EUV露光装置」について分析します。半導体デバイスと半導体製造…

ASMLの今後

筆者はASMLの今後しばらく(2025年くらいまで)の見通しを、以下の理由から非常に強気にみています。

①平均販売単価(ASP)と利益率が高いEUV露光装置の出荷数が増えている
②3nm世代の回路幅に使われる高NAツールなど、EUV露光装置自体がハイエンド化していく
③10nm世代のDRAMにEUV露光装置が適用され始め、顧客ベースが広がる

露光装置のそれぞれのASPとEUV露光装置の出荷台数

ASMLの決算資料にはそれぞれのタイプ別の露光装置の売上高と出荷台数が記載されています。単純に、タイプ別の露光装置売上を対応する出荷数量で割ることで平均単価を算出すると下記のようになります。

EUV露光装置のASPが非常に高いことが、見てわかりますね。ArF液浸が一台あたり約50M-60Mユーロなのに対して、EUV露光装置はその二倍以上の単価となっています。また、後述しますが、ArF液浸やKrFのASPはフラットなのに対してEUV露光装置のASPは高機能化に伴い徐々に右肩上がりになっています。さらに、出荷台数も年々上がってきており、2017年度 11台→2018年度 18台→2019年度 26台→2020年度 31台→2021年度会社予想 40台と推移していくと言われています。

EUV露光装置はどんなに引きが強くても、一台あたりの工期が非常に長く、生産キャパが限られていたのですが、一台あたりの工期が短縮されているという報道がなされています。

 2019年までは、1台組み立てるのに12カ月を要していたと思われる。しかし、2020年はSamsungの副会長の電撃訪問後、4台追加されたため、合計40台が出荷されることになる。つまり、1台当たりの工期が12カ月から10カ月に短縮されつつあると考えられる
引用 『TSMCとSamsungのEUV争奪戦の行方 ~“逆転劇”はあり得るか?』

ただ、一方で出荷数量がYoYで倍になるなどの急激な生産能力向上は見込めず、また、顧客である半導体メーカーのプロセス立ち上げが遅れれば、その分納入もあと倒しになるとうリスクは常に存在します。特に、5nm以下の微細化レベルの量産の難易度は非常に高いでしょう。

同社(ASML)は第3四半期決算発表にあわせて、21年の業績見通しについて全社ベースでは2桁台前半の成長、EUV向けについては2割増と言及。20年の出荷台数は当初、35台を計画していたが、顧客の装置受け入れ体制や微細化スケジュールの遅れなどから、数台下ぶれる見込みだという。そのため、21年は40台前後になる可能性が高そうだ。生産能力については、21年まで年間40~50台に拡大する計画に変更はないとしている。
引用『半導体露光装置大手のASML、EUV分野の21年売上高は2割増に』

EUV露光装置のハイエンド化

現在微細化の最先端を走っていると言われるのが、台湾のファウンドリ最大手、tsmcです。tsmcは7nmのプロセスからEUV露光装置の適用を初め、2020年Q3には5nmを量産開始、2022年には3nm、2024年には2nmとシュリンクを続けていくと言われています。

(画像引用 Technology roadmap for advanced packaging 2015 to 2025 Yole Developpement)

これらの微細化のスケーリングをすすめる上ではさらなる露光装置のハイエンド化が必須になると言われており、具体的にはASMLのNXE:5000シリーズという高NA EUV露光装置が必要になると言われています。

TSMCとSamsung Electronicsは、7nmプロセスから一部の工程でNA=0.33のEUV露光装置を導入し、5nmプロセスもさらにその頻度を増やす形で実現しているが、2nm以降の超微細プロセスでは、さらなる露光装置の高解像度化と高NA化(NA=0.55)を実現する必要があるという。 すでにASMLでは、NXE:5000シリーズとして高NA EUV露光装置の基本設計を終えているが、商品化は2022年ごろの予定だという。この次世代機は光学系が巨大化するため背丈が高く、従来のクリーンルームの天井にはつかえてしまいそうなほどだという。
引用『ムーアの法則は1nm以降も延命へ、imecとASMLが次世代露光技術の開発で協業』

ASMLはQ1 FY21の決算発表にて高NA品の導入を2025年ころからとしており、また、過去には2025年には9台のHigh NA品が必要になるという見通しを出していました。当然ながら、高NA品の露光装置の販売単価は更に跳ね上がると考えられます。なお、高NA品の最初の顧客はSamsungになるかもしれない、という噂も流れています。

さらにASMLは、前掲の投資家向け資料で、2025年のEUVの需要と導入を予測している。それによると、High demandでは、High NAが9台+55台と予測されている。つまり、合計64台のEUVの需要があるとの予測である。
引用 『TSMCとSamsungのEUV争奪戦の行方 ~“逆転劇”はあり得るか?』

DRAMへの適用開始とEUV露光装置の顧客多様化

現在のEUV露光装置の顧客はtsmcとSamsungのファウンダリ部門(一部Intelもか)がメインとなっており、所謂Logic半導体がメインとなっています。しかし、韓国のメモリ大手Samsungは1znmからすでにEUV露光装置を適用開始、同じく韓国のメモリ大手SK hynixも1anmからEUV露光装置の適用開始をすると言われています(マイクロンは1γからと言われている)。

1znmや1anmクラスのDRAMだと、まだまだ高NA品は必要なさそうなのですが、やはりカスタマーベースがtsmcのロジック1社だけと比べてSamsungのロジック・SamsungのDRAM・SK hynixのDRAMがASMLのEUV露光装置の顧客に加わることは大変心強いです。

この記事の冒頭で説明したように、半導体製造装置市場はドットコムバブル崩壊以降、伸び悩みの時期が続いていました。その理由に、半導体メーカーの寡占化や最先端品へ投資できる体力がある企業が集約されていったことを挙げました。

どんなに、tsmcが破竹の勢いで微細化の先端を走っているとはいえ、大口顧客がtsmc一社だけというのはリスクがあります。これまで技術のトップを走っていたインテルが苦戦しているように、これから微細化のスケーリングがさらに進むことでtsmcが量産立ち上げに手こずる可能性も否めません。Samsungのファウンドリ部門もASMLのEUVを適用し始めていますが、まだまだ歩留まりには苦戦しているようです(インテルも然り)。

しかし、SamsungがEUV露光装置をロジックで使いこなし、また、DRAMにも適用を開始し、同じく韓国財閥で企業体力のあるSK hynixもDRAMにEUV露光装置を使い始めれば、顧客の多様化が進みリスクも分散されます(韓国2社で世界のDRAMの約70%を供給)。さらに、EUV露光装置はASML以外に競合相手は出てこなさそうなので、ASMLにとってはまたとない事業環境になると想像できます。

SK hynixは、次世代DRAMへのEUV露光装置適用に向け、製造元であるASMLとの間に2025年12月までの5年間で総額4兆7549億ウォン(約4500億円)を支払う契約を行うことを2月24日付で開催された同社取締役会で議決したと韓国の複数のメディアが報じている。
引用『SK hynixがEUV露光装置の購入でASMLと約4500億円の契約か? – 韓国紙報道』

Lam Rsearch (ラムリサーチ)

最後に、アメリカの3番手の半導体装置メーカーLam Researchの業績と今後の展望について考察いたします。Lam Researchはエッチングで特に高いシェアを持つ企業です。本記事の冒頭で説明したように、世界の半導体CAPEXは2017年頃から激増し、その理由の一つがBig Data時代の到来からデータを格納するNAND Flashの需要が激増し、特にチップあたりの高容量化を実現する3D NANDの立ち上がりである、と述べました。その3D NANDを製造するのに使われるドライエッチング装置市場でLam Researchは特に高いシェアを誇っています。

Lam Researchの業績

Lam ResearchのIR情報を基に過去二年間の四半期決算をグラフにしました(筆者作成)。

Lam Researchの売上も半導体製造装置とサービスに大別することが出来ます。また、半導体製造装置はメモリ向け(DRAMとNAND)とFoundry・Logic向けに分けました。2018年の製造装置販売額とサービス売上の内訳が開示されていないため、2019年の内訳YoY成長率は記載できませんでしたが2020年は通年通してほぼすべてのセグメントが成長しています(2019年の落ち込みが激しかったのもあり)。

3D NAND向けドライエッチングで圧倒的シェア

エッチングとは半導体の製造工程の一つで、薬品やガスなどを使い余分な酸化膜やレジストを取り除く工程となります。エッチングには大きく分けてウェットエッチングとドライエッチングという手法があります(参考 日立ハイテク『エッチング装置とは』)。Lam Researchは特にドライエッチングで圧倒的なシェアを持っているのですが、そのまえに、少しNANDフラッシュと呼ばれるメモリ半導体について説明します。

NANDフラッシュとは

メモリ半導体には大きく分けて、データを一時的に保存するDRAMとデータの長期保存のために使われるNANDフラッシュの二種類があります。前者は電源供給がなされてる間しかデータを保持できず、メインメモリなどに使われる一方で、後者は通電がなくてもデータを保存できるため、SSDなどに使われます。ここ数年で我々の日常に於けるデータのあり方は大きく変わりました。インターネットを使い、ニュースなどの文字やメールを書くだけでなく、動画配信サービスを楽しんだり、オンライン会議をしたり、またGAFA等の巨大企業はユーザーが毎日生成する膨大なデータを処理し、集め、分析しています。

もともとデータセンターのデータ保管にはHDDが使われていたのですが、数年前からより高速処理が可能なSSDへ置き換えが加速しており、また上述の通り我々が生成し、使用するデータの量が膨大になっていることからそれらのデータを格納するNANDフラッシュの需要が激増しています。特に2017年はNANDフラッシュ市場が急成長し、前年まで300億ドル規模だった市場が一気に500億ドル近くまで成長しました(参考『メモリ不況の夜明けは近い、市場動向から見たDRAMとNANDの挙動』)。

我々が日々生成し、使用するデータは毎日増え続けます。たとえば、最近話題になっている自動運転など未来の車ですが、これらは常に走行データをクラウドに送り込むため、自動運転化された一台あたりの車は毎日767TBのデータトラフィックを生成する(Gartner)と言われています。このようにして、成長し続ける需要がある限り、NANDフラッシュ市場は今後も増え続けます。

3D NANDの誕生

ムーアの法則では18ヶ月に2倍の速度で半導体の集積率は上がっていくと説明しました。NANDフラッシュも同様で、これまでは50nm世代→40nm世代→30nm世代→20nm世代→1xnm世代→1ynm世代とメモリセルを小さくしながらチップあたりのデータ容量を増加させてきました。しかし、それ以降のNANDは回路幅を縮めて集積率を上げる代わりに、ちょうど高層ビルのように、セルを積層してダイあたりの高容量化に舵を切りました。この3D NANDの本格量産が始まったのがちょうど2017年ころでした。従来のNANDを2D NANDと呼び、チップ一枚あたりの最大容量はTLC型で128Gb (16GB)が限界だったのですが、現在の3D NANDではチップあたり512Gb (64GB) 〜 1Tb (256GB)のデータ容量を実現出来るようになりました。

下記の画像(NVM duranceより引用)の左側が2D NANDで一枚のチップ上のメモリセルを小さくすることで集積度を上げ容量を増やしてきたのに対し、3D NANDでは縦にメモリセルを重ねることで、チップあたりのさらなる高容量化を実現し、成長し続けるメモリ半導体の需要へ対応してきたということです。

ドライエッチング市場で圧倒的なシェアを持つLam Research

少々NANDフラッシュに関する話が長くなってしまいましたが、この3D NANDを製造する上で欠かせないのがLam Researchが圧倒的なシェアを持つドライエッチング装置です。2016年まで、ドライエッチング装置の市場規模は年間80億ドルに満たない規模でしたが、上述の通り3D NANDの本格量産出荷が始まった2017年には市場規模が一気に100億ドルの大台に乗りました(参考『Lam Researchが打ち立てた金字塔、“1年間メンテナンスフリー”のドライエッチング装置』)。

Lam Researchのドライエッチング装置シェアは約50%となっており、日本の東京エレクトロン、Applied Materials、日立ハイテクなどが残りのシェアを分かち合うような構図になっています。

高いサービス収入の割合

もうひとつ、Lam Researchの売上の特徴はサービス収入の比率が高いという点です。CY2020の売上約120億ドルのうちサービス収入は約39億ドルで売上の33%を占めているのですが、これは装置販売収入をNAND/DRAM/Foundry+Logicに細分化すると各セグメントの中でトップの売上額となります。Lam Researchは今後もこの分野への注力を表明しています。

今回の財務モデルで強く打ち出されたのが、導入済み装置の改造やメンテナンス、リファブなどのインストールベース事業への注力だ。23年までに売上高ベースで4割成長を目指す考え。同社によれば、チャンバーあたりのインストールベース売上高は年々増加傾向にあり、13年時点に比べて19年は1.5倍に拡大したという。今後も増加トレンドは続き、23年は13年比で1.7倍になると予測している
(引用『米半導体装置のラムリサーチ、「売上高最大175億ドル」の新財務モデル エッチングでは新型プラットフォーム投入』)

ASMLと提携、EUVドライレジスト

さらに、3D NANDへの大幅な依存を避けるために、Lam ResearchはEUV露光装置向け専用に開発したドライレジストプロセスを提案し、現行の手法と比べて分解能の向上やレジストなどの化学品の使用量を抑えるアプローチをしています。さらにASMLやimec等と戦略的パートナーシップを結んでいるとも発表しており、一つのセグメントに偏らない将来の成長戦略を描いていることがわかります。

 Lam Research Corp. (Nasdaq: LRCX) today announced a dry resist technology for extreme ultraviolet (EUV) patterning. By combining Lam’s deposition and etch process leadership with strategic partnerships with ASML and imec, Lam is developing a new dry resist technology that will help to extend the resolution, productivity, and yield of EUV lithography. Lam’s dry resist solutions offer significant EUV sensitivity and resolution advantages and thus an improved overall cost for each EUV wafer pass.
(引用『LAM RESEARCH UNVEILS TECHNOLOGY BREAKTHROUGH FOR EUV LITHOGRAPHY』)

まとめ

以上、長々となりましたが半導体製造装置市場とトップ3企業のApplied Materials、ASML、Lam Researchの業績と今後の考察について既述いたしました。

まとめ
・2000年のITバブル崩壊以降、半導体製造装置市場は半導体デバイス市場に比べて出遅れていた
・理由の一つは半導体メーカーの寡占化による投資額の最適化と半導体装置自体の機能向上
・2017年頃から、装置市場はEUV露光装置や3D NAND向けドライエッチングの出荷を背景に大きな成長を見せた
・半導体製造装置総合メーカーのApplied MaterialsはKokusai買収で寡占化
・ASMLは圧倒的な露光装置のシェアを握り、今後もLogicの微細化に伴いEUV露光装置の高NA化とDRAMへの本格適用をenjoyできる
・日々生成される膨大なデータを背景に増え続けるNANDフラッシュの需要、特に3D NAND立ち上がり以降ドライエッチングのシェアで成長したLam Researchは今後もEUVドライレジストなどで成長戦略を描く
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