半導体ファウンドリ大手各社の比較

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平素は大変お世話になっております。今回は半導体のファウンドリ(Foundry)各社の決算資料から各社の比較と今後についての考察をして参りたいと思います。

この記事のポイント
・最先端ラインを独占するtsmcの生産能力、売上規模、利益率の高さが圧倒的
・猛追するSamsungも8nm歩留まり向上及び5nmの量産開始が2021年に期待される
・レガシーラインをメインとするUMCなどの業績も昨今の市況の煽りを受け、改善中
・顧客タイプもFablessだけでなくファブライト型IDMなど多様化している
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ファウンドリとは

弊ブログを見ていただいている方々の大半は半導体のファウンドリについてよくご存知だと思うのですが、念の為、あまり聞き慣れないという方のためにファウンドリの説明を簡潔にさせていただきます。

ファウンドリとは日本語で半導体受託製造と訳され、他社の半導体の製造を請け負う事業に特化した半導体メーカーです。

まず、半導体は非常にざっくりと下記の流れで製造されます。

設計

前工程: 設計した回路を実際にシリコン(ウェハと呼ばれる)に作り込む

後工程: 回路が作られたウェハを一枚一枚チップとして切り出して、パッケージする

テスト工程: 最終完成品としてちゃんと動くか確認する

顧客へ出荷してやる

続いて下記の図は、半導体デバイスの製造サプライチェーンを非常に簡潔に纏めたものです(筆者作成)。

半導体メーカーはサプライチェーンのビジネスモデルで分けると大きくIDMとFablessに分けることが出来ます。IDMとはIntegrated Device Manufacturerの略で日本語では垂直統合型半導体メーカーと呼ばれます。IntelやSamsungなど、半導体の設計開発から製造まですべて自社で行う半導体メーカーです(一部のプロセスを外注に出す場合もあり、ファブライトと呼ばれる)。一方でFablessとは製造設備を持たない半導体メーカーでQualcommやBroadcomが該当します。設計自体は自分たちで行うのですが、工場を持っていないので前工程・後工程共に外注に出すのです。そのような企業のために、前工程でウェハの処理を行うのがTSMCなどファウンダリと呼ばれる企業です(下の図の青部分)。

『なんだ、下請けじゃん』と思った方もいるかもしれません。しかし、そもそも半導体というのは非常に付加価値が高いセクターであり、PCやスマホ等の完成品の開発や発売も中に入っている半導体のロードマップによって大きく左右されます。そして、その半導体のバリューチェーンにおいて、特に半導体製造の前工程は非常に付加価値が高く、中でも最新の製造プロセスで回路を作れる(微細化)企業はバリューチェーンのトップに位置するといっても過言では無いでしょう。なぜなら、サーバーCPUやスマートフォンのSoC等、高いパフォーマンスを実現するためにはそれらの半導体が不可欠だからです。2021年時点で微細化の最先端を走っているのがTSMCやIntel、Samsungといった企業になります。

ファウンドリ各社の比較

それでは本題に入ります。以降では、半導体の代表的な下記のファウンドリ各社の比較をしてまいりたいと思います。

・TSMC: 台湾の半導体ファウンダリ、世界トップ
・UMC: 台湾の半導体ファウンダリ、専業では2位
・SMIC: 中国のトップの半導体ファウンダリ
・Samsung Electronics: ファウンダリ専業ではないが、かなり気合を入れてる
・Tower Semiconductor (TSEM): イスラエル大手、アナログに強み
Global Foundriesは、公開できそうな資料が見つからず、入れられるところだけ入れることにしました。

ファウンドリ各社の生産能力シェアと売上シェア比較

下記は各社の決算情報などを基に筆者が作成したファウンドリ5社の生産能力(12インチウェハ換算)と売上シェアの比率です。本当はすべてのファウンドリを含めた生産能力と売上シェアの比較を出したかったのですが、公になっているソースを見つけることが出来ず、この5社に絞りました(サムスンはこちらの記事を参考に12インチ月産20万枚を8インチに直して計算、TSEMも40nmより古いファウンドリの生産シェアが書かれたCounterpointの記事UMCの決算資料を基に逆算して計算)。ちなみにこの5社で世界のファウンドリの売上80%以上を占めています。

tsmcは生産能力・売上共に圧倒的なのですが、Samsungの生産能力と売上に注目してください。Samsungのファウンドリの生産能力は5社合計のうち10%にとどまっているのに対して、売上シェアでは22%となっています。その理由は単純明快で、現在10nm未満のプロセスで製造する付加価値の高い半導体を製造できるファウンドリはtsmcとSamsungの2社しかいないからです。もちろん、そのシェアはtsmcがまだまだ圧倒的なわけなのですが、Samsungも現在猛追をしており、NvidiaやQualcommといったファブレスメーカーから受注をしています(Galaxy向けのExynosという自社SoC分も入っている)。

後々詳しく見ていきますが、これらの最先端ラインで半導体を作ってほしければこの2社に頼るしか無く、技術優位性が圧倒的に高いため買い叩かれることは、まずなさそうです。そして、そもそもAMDやNvidia、Qualcomm、Appleの利益率も相当高い水準にあるので登場人物全員勝ち組状態です(言い過ぎか)。それどころかあのIntelでさえ一部のプロセスを外注するという話が出ていますので、世界屈指の半導体メーカーからの強い引き合いを追い風にまだまだいい環境は続くのではないかと思います。

一方でUMCやSMICといったファウンドリ各社はレガシープロセスをメインに事業展開しているため、tsmcやSamsungと比べると売上規模はどうしても見劣りしてしまいます。しかし、昨今の半導体供給不足からこれらのファウンドリメーカーも非常に強気になれる事業環境になっており、個人的にはUMCに大きく注目をしています。詳しくは後述です。

ちなみに、Trend Forceによるすべてのファウンドリの2020年売上別シェアと2021年売上シェア予測を表した円グラフが下記です。上記の比較で表せなかった残りの約20%の売上各社(Global FoundriesやTower Jazzなど)が含まれていますが、tsmcとSamsungの2社が70%以上を寡占していることがわかります。

ファウンドリ各社のプロセス別売上比率

続いて、ファウンドリ各社のプロセス別売上比率を見てみます、その前にこれまた半導体に馴染みが無い方向けに、サラッと半導体のプロセスについて説明いたします。知ってる方は飛ばしてください。

プロセスノード

半導体のファウンドリは(に限らずですが)複数の製造プロセスの生産ラインを持っています。古いモノであれば0.xxμm(マイクロメートル)から最先端の5nm(ナノメートル)までと様々です。それぞれの製造プロセスで作られる半導体の品種が異なります。例えば、パワーマネジメントICであれば0.3μmといった枯れたプロセスでまだまだ製造されるのに対して、CPUやGPUなどであれば5nmといった超微細化されたプロセスで製造されています。これらの数字をプロセスノードと呼びます。

サラッとマイクロメートルだとか、ナノメートルだとかいう数字と言葉を出しましたが、そもそも半導体は回路幅を細くすることで、一枚あたりのダイ(チップと考えてください)の集積度を上げ、低消費電力・高速動作化と性能を向上させてきました(ムーアの法則)。一筋縄には行かないのですが、大まかにこの数字が小さければ小さいほど、より最先端な半導体を作っていると考えてください。

ちなみに、各社が公表するプロセスノードの数字は『商品名』です。5nmのプロセスで作られる半導体だからといって、その半導体の回路幅すべてが5nmだとか、そういう単純な話ではありません。『インテルは7nmの量産に苦労しているが、tsmcは5nmをすでに量産しているから、tsmcのがインテルよりも2nm分すすんでいるのか』とか言っているYoutuberを見たことがありますが、まったくもって異なります。ちなみにトランジスタの集積度でいうと、インテルの7nmはtsmcの5nmに相当すると言われています。それでも5nm世代と20nm世代では大きな開きがある別モノであることに変わりはありません。

Intelの10nmプロセスは、他社の7nmプロセス相当のスペックであるため、Intelの7nmは、他社の5nm相当か、それ以上の可能性がある。ファウンダリは、2019年から5nmのシャトル(顧客設計を1枚のウェハに相乗りさせる試作)による試作サービスをスタートさせる。
引用『後藤弘茂のWeekly海外ニュース | Intelの次世代CPUマイクロアーキテクチャ「Sunny Cove」』

付加価値が高いのはやはり微細化が進んだプロセスで製造される半導体です。ファウンドリでいうとtsmcがほぼ1強状態ですが、Samsungが猛追しているような構図で売上や利益率にもその差が現れています。SMICは期待されていましたが、米中貿易摩擦で足を引っ張られています。

プロセス別売上構成比率の比較

以下のグラフは各社の決算資料を基に筆者が作成したプロセス別の売上シェアで、28nm未満を先端プロセス40nm世代より古い世代をレガシープロセスとしてざっくりと分けました。なお、Samsungはプロセス別の売上比率を公開していないので、Counterpointの資料(Foundry Capacity Share in Matured Nodes (40-nanometer and below, including 8-inch)を基に逆算して計算しました。

tsmcとSamsungの売上に占める先端プロセス比重は70%以上となっています。これがこの2社の強さです。また、10nm未満のプロセスで量産できるファウンドリはこの2社しかいません。SMICとGlobal Foundriesがかろうじて14nmのラインを持っていますが、売上に占める割合はほんのごくわずかです。つまり、最先端プロセスはtsmcとSamsungの2社がほぼ独占しているのです。

ただし、一つ誤解していただきたくないのは、何でもかんでも最先端の半導体を作らないと行けないというわけではありません。半導体にはLogic・メモリ・アナログ・ディスクリートなどなど沢山の品種品目があるわけですが、10nm未満の先端品を必要とするのはPC/Server/スマホ向けのCPU・GPU・SoCくらいです。マイコンとか、アナログとかその他の品種品目の半導体は別にレガシーと言われているプロセスでの製造でも全然間に合ったりします。

 

各社の利益率の違い

売上に占める最先端プロセスの比重の違いは、売上シェアだけでなく収益性にも大きく現れています。下記グラフでは過去2年間の四半期ごとのファウンドリ各社の営業利益率の推移を纏めました。後ほど詳しく説明しますが、四半期ごとに新しいプロセスの移行を進めるtsmcの利益率が圧倒的かつきれいな右肩上がりとなっていることがわかります。なお、Samsungはファウンドリ事業の利益率を公開していませんが、決算資料やメモリ各社の状況から、直近FY20 Q4は20%程度の利益率だったのでは無いかと推測しています。

ファウンドリ各社の業績推移と特徴

続いて、ファウンドリ各社の決算資料から業績の推移とそれぞれの特徴について考察してまいります。

tsmc

まずは生産キャパおよび売上トップの王者tsmcから見て参りましょう。

tsmcの業績推移

tsmcの決算資料を基に過去2年の四半期業績(売上・粗利率・営業利益率)をグラフにしました。惚れ惚れするほどの右肩上がりですね。。。tsmcのFY20売上は約450億ドル規模ですがYoY+25%の成長でした。さらに、粗利率は50%を超え、直近四半期の営業利益は45%水準に迫ります。2020年の半導体売上ランキングの1位はIntel $700億 (営業利益率 30%)、2位 Samsung $561億 (営業利益率 26%)、そしてtsmcをランキングに食い込ませると売上 $450億で3位水準です。しかしtsmcのFY20 営業利益率は42%でしたので営業利益の絶対額で見るとtsmcはSamsungよりも稼いでいます

tsmcのプロセス別売上推移

続いて、tsmcのプロセスごとの売上推移を見てまいります。tsmcの四半期ごとの決算資料によると毎回下記のような比率でプロセス別の売上シェアが推移しています。特に16nm未満の先端プロセスが売上に占めるシェアは2019年Q1時点で40%程度であったのに対し、直近2020年Q4では62%を超えています

これらのプロセスは特に付加価値が高く、具体的にはハイエンドなマイコン、Ethernetスイッチ、NvidiaなどのGPUやAMDなどのCPU、またアップルのSoCや仮想通貨マイニングに特化したASICなどにも利用されるラインとなります。特にアップルはtsmcの最先端ラインを使用するお得意様として知られており、そのことから毎年新型iPhoneの発売に合わせて作り込みが始まるQ3からピークを迎えるQ4に特に5nm/7nmラインの売上比率が上昇しています。

下記はFY20 Q4決算資料からのスクショで、市場別売上比率です。ご覧の通りSmartphone(AppleやQualcomm、Mediatekなど)とHPC(AMD、Nvidiaなど)が大半を占めていますね。ちなみに、お騒がせしている車載は売上の3%しか占めない上に成長率は前年度-7%と一人負けです。tsmcからすれば、そのようなところはハッキリ言って優良顧客とは程遠い存在であり、『そんなにものづくりしたければちゃんとしたFCSTと実績を出しなさい、同情はしないからカネをもっと払いなさいよ』、ということなのです(たぶん)。

28nm世代より古いラインの売上

一方で28nmより古い世代のレガシーライン(28nmをレガシーと呼んで良いかは別ですが、UMCなど他のファウンドリでも作れるプロセスノードなのでここで区切ります)の売上に注目してみたいと思います。

2019年のtsmcの売上はニュー台湾ドル(NTD) 1,070B (≒346億米ドル)で28nm世代より古い世代のプロセスが占める売上比率は49%でした。金額にしてNTD 524Bです。一方で2020年のtsmcの売上はNTD 1,339B (≒450億米ドル)で、28nmより古いプロセスの売上比率は41%でしたので金額換算するとNTD 548BにとYoY +4.6%になります。

tsmcのライン稼働率は過去の決算コールからもほぼ90%以上の高い水準が維持されていることがアナウンスされており、また設備投資の多くを10nm未満の超微細化ラインに充てていることから、これらの(tsmcにとって)レガシーラインの生産能力や稼働率に大きな変化は無かったと考えられます。にもかかわらず、売上にして1年で4.6%の増加ですので減価償却がとっくに終わったレガシーラインも半導体の需給逼迫を理由にジワリジワリと値上げをし始めたことが考えられます。

特にこれらのレガシーラインの需給逼迫は2020年のQ3に入ってから取沙汰され、最近になってメディアでも騒がれている車載半導体がモロに使われる場所です。一部報道によるとtsmcを始めとするファウンダリは安定供給の見返りに、2桁%台の値上げを要求しているらしく、さらにこれらの値上げ分はまだ2020年の決算結果に反映されておらずFY21 Q1以降に貢献するのではないかと考えられます。

世界的な半導体の不足を受け、台湾積体電路製造(TSMC)などが最大で15%の値上げを検討していることが、25日分かった。車載用が中心だ。昨秋から値上げを一部で実施してきたが、再度の値上げ要求に踏み切る。短期間での相次ぐ値上げは、自動車メーカーから半導体メーカーへの価格決定権のシフトを映す
引用 – 日経新聞『TSMC 半導体再値上げ』

以上のことからtsmcは最先端の付加価値が高いプロセスシェアをほぼ独占しているだけでなく、減価償却がとっくに終わったレガシーラインについても需給逼迫を理由に値上げし、昨今の半導体市況の追い風を100%享受していると考えられます。

UMC

続いては、台湾2番手の半導体ファウンドリ、UMC (United Microelectronics Corporation)です。

UMCの業績推移

UMCの決算資料を基に過去2年の四半期業績(売上・粗利率・営業利益率)をグラフにしました。UMCも過去2年間の四半期ごとの業績は右肩上がりで推移していますが、やはりtsmcとは売上の規模が違います。また利益率も2019年の前半は酷いもので、営業赤字だった四半期もありました。それでも、直近では粗利率20%台、営業利益率も2桁%に乗せるまで成長をしています。

UMCのプロセス別売上推移

UMCの決算資料に記載されているプロセス別の売上比率のデータを参照し、グラフにしました。先に説明したtsmcは四半期毎に最先端の売上比率がどんどん伸びていくのに対して、UMCはプロセスの比率がほぼ固定されたまま、動きません。結果、FY19もFY20もプロセスごとの売上比率はほぼ変わりません。また、テクノロジーノードも最先端品が28nmとなっており、tsmcに比べると相対的に付加価値が低く、他のファウンドリ各社と技術的な差別化がし難いが故、tsmcと比べて低い利益率に甘んじているのではないでしょうか

UMCの今後

UMCは今後しばらくは昨今の半導体市況の追い風を受けて、直近の業績を維持していくのでは無いかと考えられます。まず前提として、半導体の需要に対する供給が追いついていないという非常にざっくりとした背景があるわけですが、さらに様々な細かい要因が存在します。以下では、普段、半導体に馴染みが無い方にもわかるように少し噛み砕いて説明をしてみようと思います。

8インチ生産ラインの慢性的な供給不足

半導体には様々なプロセスノードがあると説明しましたが、半導体の回路を作り込むシリコンウェハのサイズにも様々な大きさがあり、2021年現在は主に12インチ(300mm/LPレコードと同じ大きさ)と8インチ(200mm/一般的なうちわ位)の2種類の口径が主流です(他にも6インチ *150mmとかあります)。シリコンウェハの口径はつくられる半導体のプロセスノード毎に対応していて、だいたい50nm台より微細化されたプロセスであれば12インチ、それより古いプロセスであれば8インチのウェハで作り込まれることが一般的です。UMCのプロセス別売上シェアを見れば分かる通り、UMCの売上の大半は65nmよりも古いプロセスで占められており、生産能力的にもUMCは8インチラインのキャパのシェアが高いことで知られています。

半導体の供給は大雑把に語ると、微細化によりチップの面積を小さくさせ、ウェハあたりの取れ高を上げること、もしくは生産ライン自体の増強により供給数量を向上させることが出来ます。半導体は微細化が進めば進むほどチップの面積は小さくなり(シュリンク)、ウェハ一枚あたりの取れ高は増えます(実際には歩留まり率やTATなどの要素もあります)。汎用メモリのDRAMとかNAND(現在は積層化)、汎用CPUなんかは毎年微細化を重ねて供給量を増やしてきてるわけです。一方で、60nmとか、90nmとか、0.13μmとか・・・そういう古いプロセスで作られる半導体はチップ面積も大きく、更に作り込まれるウェハの面積も8インチ口径と相対的に小さいためウェハあたりのチップ取れ高も少なく、なかなか供給量が増えません。一方でこれらのプロセスで作られる半導体は、例えば電源管理IC(PMIC)だったり、センサーだったり、車載など様々な分野で需要が増えている半導体です。

さらに、半導体を製造するための製造装置もプロセスやウェハ口径毎に異なっているのですが、製造装置メーカーもどんどん次世代の製品を市場に投入していくわけで、古い製造装置であればあるほど入手するのは容易では無いのです。現在の需給バランス逼迫の背景にはこのような問題があり、特に8インチ口径のウェハで作り込まれるようなレガシーラインは爆発的な供給能力向上も期待できないため、慢性的な供給不足が続くと考えられます。特に8インチ生産ラインのシェアが高いUMCは市況の恩恵を継続的に受け続けることができるのではないかと考えられます。

顧客の多様化

もう一つ、個人的にですが私がUMCに注目している理由は顧客別売上比率の変化です。一般的にtsmcやUMC等のファウンドリの顧客は自社で半導体製造設備を持たないファブレス半導体メーカーですが、実は、IDMと呼ばれる自社で生産設備を持つ半導体メーカーの製品の生産も一部請け負っています。このように、自社で生産設備を持つのに関わらず、ファウンドリに生産を外注することをファブライトと呼んだりするのですが、何故このようなことをするかというと、まず第一に自社で賄えない生産キャパを補うため、続いて先端プロセスの開発と設備投資が自社では追いつかないため、という理由があります。特に昨今騒がれているNXPやST Microelectronicsといった車載半導体向けのマイコンやSoCはファウンドリに製造を外注していると言われています。

世界的に半導体不足が深刻なのは、蘭NXPセミコンダクターズやスイスのSTマイクロエレクトロニクスなどがTSMC中心にファウンドリーへ生産委託する自動車向けの先端半導体だ。車載用マイコンやカーナビゲーションシステム用統合チップ「SoC(システム・オン・チップ)」などの供給不安は2020年末に顕在化した。
引用『世界最大の半導体製造会社、車載向け不足に対応し5月に増産へ』

下記はFY20およびFY18それぞれのUMC決算資料に記載されている顧客タイプ別の売上比率です。これまで一桁%だったIDMの占める売上比率が2020年に入り12%へ増えました。IDMによる設備投資の多くはサムスンやハイニックス、マイクロンといった汎用メモリ大手によって牽引されています。一方でこのような一部の製造を外部委託するファブライト型のIDMの設備投資は相対的に少なく、特にマイコンやSoCで使われるような微細化されたプロセスは今後も積極的にファウンドリの活用を進めて行くのではないかと考えられます。ファウンドリからすると、ただでさえ供給が追いつかない中、顧客のポートフォリオが増えるわけですので、素晴らしい事業環境になっているわけです。

Samsung

続いて、サムスンのファウンドリ事業について見ていきます。サムスンはDRAM・NANDという汎用メモリの絶対王者なのですが、近年はファウンドリ事業に力を入れています。ちなみに、アップルが一番初めに自社設計SoCを外注委託する時、Intelに断られた結果、受注したのがサムスンで今日のGalaxyと半導体事業の発展につながったという噂は有名です。

インテルに断られたiPhone用プロセッサを製造することになったのは、韓国サムスン電子である。サムスンは、13年の28nm世代までiPhone用プロセッサを製造した。これは、サムスンに大きな果実をもたらした。
引用 アップルに「半導体の盟主」を奪われたインテルの致命的ミス ムーアの法則終焉説の嘘

Samsungのファウンドリ事業の業績推移

下記は、Samsung社のIR資料を基にファウンドリ事業の業績推移推定を表したグラフです(半導体事業の売上から汎用メモリとCMOS売上年間約40億ドルを差し引き)。SamsungはFY20 Q4にて過去最高の四半期ファウンドリ事業売上を達成しました。SamsungのQ4の半導体事業の売上は約18兆ウォン(うちメモリが13兆ウォン)で営業利益は3.8兆ウォンでした。Samsungは営業利益の内訳を公開していないのですが、Q4のメモリ大手SK hynixの営業利益が約12%、Micronが約16%でしたのでだいたい20%程度の水準で考えると(Samsungの収益性はメモリ大手の中で最も高いと言われている)、ファウンドリ事業の営業利益率は20%台中盤程度であったと推測します。Samsungは現在8nmプロセスの量産の歩留まりに苦戦しているようですが、今後歩留まりの向上と5nm世代の量産が(うまく)立ち上がっていけば、収益性の向上に期待できます。

Samsungのファウンドリ事業の今後

Samsungの半導体事業の収益の多くは汎用メモリのDRAMとNANDから来ています。Samsungは汎用メモリでは圧倒的なシェアを誇るトップ企業であり、汎用メモリは寡占化した世界である一方、汎用メモリの値動きは非常に激しく利益率も安定しません。例えば下記は同業のメモリ大手SK hynixの過去3年間の四半期ごとの売上と営業利益率の推移なのですが、見ての通りジェットコースターのごとく激しい変化を見せています。Samsungのメモリ部門も同じような動きをしているはずです(Micronも)。

SK hynix FY20決算発表とメモリ半導体市況の考察
韓国メモリ半導体大手SK hynixのFY20通期決算とメモリ半導体市況に関する考察記事です。メモリ半導体市況は2019年から回復しており、コロナ特需と在庫調整などの反動があったものの2020年末からDRAMを中心に好転し、2021年はSK hynix等メモリ半導体メーカーにとって良い事業環境となることが考えられます。

そこで、Samsungはさらなる成長と半導体事業の安定化のためにファウンドリ事業の強化に非常に力を入れていることで知られています。現在のSamsungのファウンドリで作られる先端プロセスは8nm世代と言われていて、たとえばNvidiaのGPUなどがここで使われています。また、SamsungはEUV露光装置を使用する5nm世代の立ち上げを行っており、Q4の決算CallではCY21 Q1には5nm世代の量産が本格化するとアナウンスしていました。また、5nmの改良版である4nm世代の立ち上げも2021年下半期から目論んでおり、すでにQualcommの次世代5Gモデムの受注をしたのではないかと複数のメディアが伝えています(参考『Samsungの5nm EUVプロセスに長期的な歩留まり低迷問題 – 韓国メディア報道』)

下記のグラフはTrendforceによる5nm世代の生産キャパシティシェアの推移予測となりますが、ご覧の通り、2021年の下期からSamsungのシェアの向上が予想されています。一方で、Samsungは5nm世代の立ち上げにもまだまだ苦労しており、またこれらの製造工程に必須となるEUV露光装置調達や『使いこなし』にも苦労しているという噂もよく聞きます(参考『TSMCとSamsungのEUV争奪戦の行方 ~“逆転劇”はあり得るか?』)。一方でSamsungは1xnm世代以降のDRAMにもEUV露光装置を使い始めており、今後DRAMの微細化が1anm、1bnmと進み歩留まりも向上していけば装置の購買力と『使いこなし』技術もあがり、一方でDRAMのレガシーラインは製造装置が使い回せるCMOSセンサーのラインに転換できることから総合半導体メーカーとしての強さを見せつけてくれるのではないかとも、私個人的に期待しております。

SMIC

続いて、中国のファウンドリ最大手のSMICの業績と事業について見てまいります。

SMICの業績推移

SMICの決算資料を基に作成した直近2年の四半期ごとの業績推移は下記のようになっています。売上はFY20 Q3まで右肩上がりですが今まで見てきた3社よりも利益率が低く、安定しません。なお、FY20 Q4の売上が落ち込んでいるのはHuaweiの制裁前駆け込み需要の反動であると考えられます。SMICではHuaweiのPMICなどを受託製造していました。

SMICのプロセス別売上推移

SMICの決算資料を基に作成した過去2年間の四半期ごとのプロセス別売上構成比率は下記のようになっています。SMICのプロセス別売上構成比率も、UMCのようにレガシープロセス中心の構成となっています。先端ラインは14nmと28nmそれぞれありますが、この内のほとんどを28nmが占めていると予想されます。

特に売上比重の大きいのは55nm/65nmのラインで、ここでは中国Fabless NORフラッシュ大手(世界シェアNo.3)のGiga Deviceのメモリを製造していると言われています(参考『NORフラッシュ市場、2020年下期に下落の可能性 – TrendForce予測』)。また0.15/0.18μmではQualcommやBroadcomのPMICを生産していると知られています(参考)。

SMICの今後

SMICの今後は2021年2月現在で、正直どうなるかよくわかりません。SMIC自体は中国の国家戦略もあり、tsmcやSamsungのような最先端プロセスで製造ができるファウンドリになることを目指しています。ただ、現状はUMCやTower、Global Foundriesのようなレガシープロセスに事業を展開するファウンドリです。

米中貿易摩擦を経て、SMICは大きな顧客のうちの一つであったHuaweiむけの出荷が2020年Q3以降ほぼなくなりました。その結果2020年のQ4売上はQoQ -9.4%と打撃を受け、さらに稼働率も98%から95%台に落ちました。さらにSMICは2020年12月18日に米国のエンティティリスト入りを無事に果たし、10nm未満の先端プロセスを製造するための装置を米国から購入できなくなりました。

エンティティリストによる輸出制限は、中国が国内半導体トップメーカーであるSMICを通じて、米国の技術を活用して高度な技術レベルを実現できないようにするための措置である」と述べている。BISによると、具体的には、10nm以下の高度な技術ノードで半導体を製造するための米国技術の輸出は一切許可しないという。
引用『米商務省がSMICをエンティティリストに追加、半導体製造装置等の輸出を制限

このニュースが出た当初は、『SMICは工場が全面ストップするのでは?』と今考えればやや大げさな話まで出たのですが、私自身は現場の人間としてかなり警戒していました。というのも、上述の通り、SMICはQualcommやBroadcomといった大手の北米顧客からも受注をしており、売上の3割近くを北米顧客に依存しています。アメリカ政府に狙い撃ちをされたわけですから、さすがに工場がすべて止まることは無くても、これらの顧客は製造受託先をUMCやtsmcなどに振り分けてリスク分散するだろうな、と思ったわけです。実際にまだまだSMICのラインは動いており、直近の決算では1-3月期の売上ガイダンスを+7%~+9%としているので大きな問題があるわけではなさそうですが、10nm未満の先端ラインについては装置を購入できないかもしれない、そしてそもそもSMICの先端ラインを使う必要がある顧客がいるのかわからない(あるとすればUnisocくらい?あとはHuawei復活・・)ことから中期的な目線では技術覇権を握るのは難しいのではないかと個人的には考えています。

SMICが半導体業界に与える影響を考察
中国Foundry大手SMICのアメリカ禁輸リスト追加が半導体業界へ与える影響を考察。SMICは世界の半導体供給能力では大きな影響力はないが、現在逼迫している8 inchウェハに限ると生産シェアは相対的に上がる。QualcommやBroadcomもSMICの生産ラインを利用しているがUMCなどへの注文切替が予想される。

Tower Semiconductor

最後に、Tower Semiconductor(TSEM)というイスラエルのファウンドリを紹介いたします。元々Tower Jazzという名前でして、それがかっこよくて個人的に好きだったのですが、ここの株で損をしたことがあるのと、あとあまり公開されてる情報が豊富ではないので『こういうのもあるんやな』くらいで見てもらえればと思います。

TSEMの業績推移

TSEMは典型的なレガシープロセスメインのファウンドリで、特にアナログ半導体の受託製造に強いことで知られています。2014年にはPanasonicの半導体部門と合弁会社を設立し51%の株式を保有しています(下記の売上にはPanasonic分の売上を含みます)。

TSEMの生産ライン

TSEMの保有する設備は下記のような形になっています(画像引用 TSEM Investor and Analyst Online Conference)。300mmのラインは魚津のファブのみで45nmが最も進んだプロセスとなっています。ここでは主にCMOSセンサーなどを製造していることで知られています。また、直近決算発表では200mmおよび300mmの生産ラインに設備投資を行い生産能力の拡大をさせていくとアナウンスしました。

地味(?)なのであまりピンとこないかもしれません(というかtsmcなどがすごすぎる?)が40nmより古いプロセスのレガシーラインの生産能力シェアでは5%となっており、メインプレーヤーではないものの、それなりの位置にいることがわかります。特に上位のtsmcやSamsungは最先端のラインに投資を続けていく一方で、レガシープロセスの需要はまだまだ残りますので今後はTSEMなどのファウンドリの重要性も高まっていくかも、という見方もできると思います(画像引用 Counterpoint Research)

半導体ファウンドリ大手各社 まとめ

以上、非常に長い記事になってしまいましたが半導体ファウンドリ大手各社について考察いたしました。半導体は旺盛な需要を背景に非常に良い市況が続いており、ファウンドリ各社も基本的には好業績となっています。特に最先端品でトップを走るtsmcとそれを追撃するSamsung、また慢性的な供給不足が顕になったレガシー品の恩恵を受けるUMC等、今後も注目していきたいと思います。

・生産能力、売上シェアはtsmcが圧倒的。Samsungが最先端ラインで猛追。
・10nm未満の最先端品のシェアはtsmcとSamsung寡占、特にtsmcの利益率が非常に高い
・UMCやSMICはレガシープロセスをメインに事業を展開
・昨今の需給バランスの逼迫でキャパはフル稼働、収益性も向上、顧客も多様化
・SMICは現時点では10nm未満のプロセス開発は絶望的
・TSEMなど下位プレーヤーも積極的に生産能力拡大中
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