2021年の半導体業界市況を解説

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 2020年12月時点における2021年の半導体業界市況のニュースと見通しについて解説します。

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2020年の半導体業界市況おさらい

 2020年はとにかくコロナに振り回された年でした。WSTS(世界半導体市場統計)によると、半導体デバイス総出荷額は2018年に約4700億ドルと史上最高値を更新した後、2019年は約4120億ドルと約-12%凹みました。これは、2018年がDRAM・NANDといった汎用メモリバブルに湧いた反動です。

 WSTSは2019年秋季の集計で2020年の半導体市場を+5.9%の成長と予測していました。同団体は通常6月と12月の年に二度、半導体デバイスの市場予測を出すのですが、2020年春季はコロナの影響により予測会議を中止、『予測値に関する討議が不可能』としつつも2020年の市場成長を+3.3%と下方修正していました(参考『EEtimes 2020年の世界半導体市場、プラス5.1%成長と予測』)。実際に私自身も半導体営業の現場にいる身としては今年の4-6月の顧客FCSTの落ち込みが激しく、『前年比マイナス成長になるのではないか?』と心配していました。

 しかし、コロナを起因としたデジタル化推進、5Gサービスの本格始動、車載需要の回復を受け2020年12月の発表では今年の半導体デバイス総出荷額を約4330億ドルと前年比+5.1%の着地としました。

 主要なデバイスごとの内訳を見ると

①メモリ半導体 19年比 +12% (6月発表では +15%)
②ロジック半導体 19年比 +6.5% (6月発表では +2.9%)
③アナログ 半導体19年比 +0% (6月発表では -5.8%)

といった形です。これらの数字は以下のような形で説明がなされます。

①メモリ半導体

2年前の2018年はメモリ半導体のバブルでした。しかし、各顧客の在庫の積上がりと3D NANDの立上りや10nm世代のDRAMの歩留まり向上を背景に半導体メーカーの供給能力が向上し、2019年は価格が崩壊、メモリバブルが崩れた年でした。

そんな2019年の下げの反動コロナの在宅需要による個人向けPC置き換え需要やサーバー増強需要(Zoomなどのビデオ会議が広まれば設備増強が必須)を追い風に2020年は二桁成長を達成するものの、下半期は在庫積み上がりによりメモリ価格が下落し若干の失速が見られました。

特に128層 3D TLC NANDの歩留まり向上によるBit Growth増加により、NAND価格は下落基調にあります。

②ロジック半導体

上記の通り在宅需要を追い風にした旺盛なデータセンター向け投資、また5Gサービスの立上りを背景に成長が加速しました。

QualcommやAMD、NVIDIAなどのファブレス半導体メーカーとそれを最先端プロセスで製造するTSMCなどが寄与したことは周知の事実でしょう。

反対に10nmの歩留まりと7nmプロセスで苦戦するIntelはシェアと株価を落とした年となりました。

③アナログ半導体

アナログ半導体は個人的に最も注目している市場です。

春のコロナ世界各地ロックダウンにより車のディーラーが閉鎖、車体メーカーの生産ラインもストップし工場設備投資や車載向けのFCSTが激減しました。そのような背景により、アナログ半導体市場は車載向け売上をメインにマイナス成長見込みだったのですが、下期から中国を筆頭に車載需要が回復、そして一気に急成長しました(一部パニックオーダーもあり?)

一方で半導体メーカーの出荷は増えずに供給難に落ちいている状況です。このような事情を背景にアナログ半導体はいま空前の繁忙期を迎えています。詳しくは供給面の段落にて解説いたします。

 出典: WSTS 2020年秋季半導体市場予測について

2021年半導体市場の需要FCST

 WSTSは上記の通り、2021年を+8.4%の4700億ドルと史上最高値更新と予測しています。

以下、主要デバイスごとに2021年のマーケット展望を解説いたします。

メモリ半導体 20年比 +13%

メモリは20年比で+13%と、引き続きデータセンター向け設備投資需要や5Gスマホ需要が強い年になるようです。

DRAMは好調

特にDRAMは需要に対して供給が不足し、スポット価格も値上がり気味です。また、5G Smartphoneのシェアが増えることでスマホ一台あたりのDRAM使用容量が増加、LPDDR5やDDR5、GDDR6などの単価が高い新世代DRAMのシェアが上がることを背景にDRAM市場は活況が予想されます。

なお、メモリ半導体市場は非常に移り変わりが激しい為、DRAM eXchangeなどでスポット情報を定期的に確認することをおすすめします。

DRAM eXchangeとメモリ半導体価格
台湾Trend Forece社のDRAM eXchangeでメモリ半導体のスポット価格情報を参考に半導体業界の市況を知る方法を解説。Samsung(サムスン), Kioxia(キオクシア), Micron(マイクロン), SK hynix(ハイニックス)など大手半導体メーカーの動向やニュースを知るのに役立つ。

NANDは供給過剰気味

一方でNANDはQLC品の出荷や128層の歩留まり向上、176層世代のサンプル出荷も始まり供給過剰気味になっているようです(参考『Micron、世界初の176層NANDを出荷開始 – 2021年にCrucial製SSDが製品化予定』)

DRAMや下記で説明するロジック・アナログなどの半導体の供給が増えない中、NAND単体の供給が増えることはNANDの供給過剰を悪化させるでしょう。

アナログ半導体 20年比 +8.6%

アナログ半導体は上述の通り、車載需要の回復などにより底堅い需要となるようです。

一方でアナログ半導体は基本的に8 inch口径のウェハで製造されるのですが、これらの製造技術は比較的レガシーなモノとなっていて生産キャパ拡大が難しく慢性的な供給不足になります。Analog DevicesやInfineon Technologies、ST Microelectronicsなどが該当します。

さらに追い打ちをかけるようにSMCIのエンティティリスト入りが発表されました(参考『米商務省、SMIC含む中国企業数十社を禁輸リストに追加へ=関係筋』)

このニュースは競合となる台湾ファウンドリのUMC等にとって恩恵になるでしょう。

SMICが半導体業界に与える影響を考察
中国Foundry大手SMICのアメリカ禁輸リスト追加が半導体業界へ与える影響を考察。SMICは世界の半導体供給能力では大きな影響力はないが、現在逼迫している8 inchウェハに限ると生産シェアは相対的に上がる。QualcommやBroadcomもSMICの生産ラインを利用しているがUMCなどへの注文切替が予想される。

ロジック半導体 20年比 +7%

引き続きデータセンター、5Gスマホ需要によりQualcomm、AMD、NVIDIA及びそれらを生産するTSMCなどのFoundryが恩恵を受ける年になります。TSMCが有名ではありますが個人的にはSamsungにも注目しています。

サムスン電子、世界1位のTSMCとファウンドリー市場でシェア格差縮められるか

半導体の王者インテルが7nmプロセスの外部委託を検討しているということはすでに知られていますが、個人的には委託先はTSMCだけでなくSamsungも十分ありえるのではないかと思います。なぜなら

・TSMCの生産キャパだけでは到底インテルの生産委託分を引き受けることができない
・TSMCはAMDなどインテルの競合の受託生産もしている
・Samsungも微細化技術でTSMCに引けを取らない状況になっており、Q3に入って一層の進歩を推察させるような報道が出ている
(参考『サムスン総帥がオランダASML訪問、EUV装置やAI半導体などで協議』)
からです。

所感

 私自身も特に車載の需要回復は日々の業務の中で感じており、Q4に入ってからデリバリートラブルで毎日忙しい、といった感じです。一方で3rd Party SSDメーカーと言うNANDウェハをKioxiaやMicronなどの半導体メーカーから調達し独自ブランドでSSDを出荷しているような企業を見ていると、モノあまりが顕著化しているように伺えます。彼らはNANDマーケットの需給バッファ調整役をしていて、NANDマーケットが緩むと価格が下がり、在庫が溜まる傾向にあります。

2021年半導体市場の供給FCST

続いて、半導体の供給に焦点を当てて解説いたします。

ウェハ供給面積は堅調

ウェハ供給は面積換算で20年→21年に+5%の伸びが予測されています(SEMI 国際半導体製造装置材料協会)。

出荷面積成長のメインはSamsung, Intel, Micron, SK hynixなどのIDM (Integrated Device Manufacturer=垂直統合型半導体メーカー)の12 inchファブラインとTSMCやSamsungなどの12 inch Foundryです。特にこれらの会社が製造するメモリーやロジック半導体はプロセスシュリンク(NANDの場合は高積層化)が期待できますのでデバイスの個数出荷量もそれなりの成長が期待できます。

8inch ウェハ供給は伸び悩む

金額ベースで+8.6%の成長が見込まれるアナログ半導体などは主に8inch口径のウェハで製造されますが、このような製造ラインは半導体業界に置いてレガシーに分類され、なかなか刷新されず、出荷面積の成長も期待できません

加えてメモリーやロジックと異なり、プロセスシュリンクも期待できないため、慢性的な供給不足が懸念されています。IDMでいうとAnalog Devices, Infineon Technologies, Texas Instrumentsなどの半導体メーカー、Foundryで言うとUMCが当てはまります。更に追い打ちをかけるように中国No.1のFoundry SMIC社が無事(?)米国のエンティティリスト入りを果たしましたので一層の供給不足が懸念されます。

 また、東南アジアを中心に後工程下請けやテスト下請けのキャパも満員御礼となっており、ASEやアムコア、イビデンなどのキャパも取り合いになっているという話です。

2021年半導体業界市況まとめ

 このように、2021年は需要が金額ベースで8%の伸びに対し、供給がウェハ面積ベースで+5%の伸びとなっております。もちろん、ベースが異なるのでこれらの需給の伸び率を単純比較はできませんが、『2021年のデバイス市場は引き続き右肩上がりが期待できる』と考えていいと思います。

 個人的に気をつけたいところ、注目しているところは以下です

・8インチ半導体の需給バランス
→Analog DevicesやInfineon、Texas Instrumentsなどアナログ半導体メーカー
→UMCなど8inch を主力とするファウンダリは恩恵を受ける

・Logic市場の成長
→ボリュームが多く、引き続き半導体業界を牽引する分野
→Q1に発表されるであろうIntelの10nm歩留まりと7nmの行方

・メモリはDRAMの供給不足が継続するのに対してNANDはモノあまり状態
→QLCの出荷増、128層TLCの歩留まり工場と176層品のサンプル出荷、3rd Party NANDコントローラー供給不足が追い打ちをかけるようにPure NANDの価格下落を巻き起こす懸念がある

Q2終わり頃に一度調整が入るかも

最後に、半導体市場は刻一刻と状況が変わりますので2021年が明けたらまたガラッと状況がかわっている可能性もあります。個人的にはQ2終わり頃に一度調整が入るのではないかと思います、もし興味があれば下記の記事を見ていただければと思います。

2021年 半導体需要の『緩み』を予測
2021年は通年で半導体需要が強く、半導体業界にとってはいい年となりそうです。ただ、Q2終盤ころに一時的な需要の減速や市場在庫調整を背景に半導体需要の緩みが入ると考えます。
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