まだ半導体商社で消耗してるの?

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平素はお世話になっております。今回は『まだ半導体商社で消耗しているの?』という記事の通り、半導体のサプライチェーンにおける半導体商社(通常『代理店』と呼ばれますがSEO観点から記事中では『半導体商社』と纏めます)の役割について説明させていただきます。何を隠そう、私も現在は半導体商社の中で日々理不尽な扱いに耐える毎日を過ごしているのです。

そんな半導体商社について記事を書いてみようと思います。

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半導体商社の役割

おそらく多くの業界がそうであるように、半導体デバイスの商流も直販と非直販の2つに大半されます。基本的に半導体商社が関わるのは後者の非直販商流で、半導体商社が製品の売込みから納入までを完結します。なお、直販の商流の場合も、半導体メーカー主導で売込や交渉を行い、物流だけを半導体商社に任せるFulfilmentと呼ばれるパターンも存在します。

以下、筆者が考える半導体商社の役割を大まかに4つに分けて説明します。

物流

最も基本的な部分ですね。半導体商社に限らず、『商社』という形態の企業が提供する基本的な役割が物流ではないでしょうか。

半導体メーカーは数え切れないほど多くの顧客を持ちますが、其々全てに直接出荷するのは難しいです。半導体商社を使うことで出荷先を絞ることができ物流を合理化することができます。また、直販であれば顧客ごとに異なる貿易条件や通貨、支払いサイトをメーカーと商社間で決められた契約一つにまとめることができます(後述)。

半導体を買う顧客からしても、例えば米国の半導体メーカーは必ずしも自身の製造拠点に近い場所に物流ハブを持っているとは限りませんが、より近くに物流拠点を有している半導体商社を使えば出荷回数や緊急対応などにおいてメリットとなります。また、半導体商社がバッファ在庫を持つことで突発的な需要増や供給トラブル時におけるリスクヘッジにもなります。

営業・マーケティング

半導体を使いたい顧客は星の数ほどいます。一方で半導体メーカーの営業部隊だけでそのすべてを相手することはできません。一般的に半導体メーカーは一部の主要顧客を直販営業部隊が担当し、それ以外の幅広い顧客向けの営業活動を半導体商社に任せることで効率化を図ります。

特に規模の小さい半導体メーカーですと、国外に多数の拠点を多く持つことは難しく、現地に根ざし、顧客との関係が深い半導体商社を使い海外向けの拡販を行うことが多いです。

技術サポート

単なる物流と営業・マーケティングだけでなく、FAEを配置して技術サポートができる半導体商社もあります。半導体は単に紹介したら終わりでなく、評価から量産までの間に何度も何度も顧客の設計者から技術的なクエリが来ます。それら全てとは言わずとも、ある程度の部分を半導体商社だけで完結できれば強い付加価値となり、半導体メーカーと顧客双方から信頼を得ることができます。

半導体も多くの品種があり、技術サポートを必要とする度合いは様々です。一般的にFPGAやマイコンなどのロジック半導体にはより多くの技術サポートが求められる一方で、汎用メモリなどはロジックほど多くのサポートは求められないと言えるでしょう。

技術サポートは昨今の半導体商社にとって特に重要な付加価値になっており、この点が強いことで淘汰される環境で生き残ることができ、さらにより多くの利鞘(マージン)を稼ぐことができると言えます。

その他(支払いサイトのバッファ調整役など)

半導体商社の役割は他にも諸々の調整作業があります。例えば、半導体メーカーと顧客が其々支払いに使いたい基軸通貨が異なる場合、半導体商社を挟むことで為替リスクを半導体商社に転換する事ができます(例: 半導体メーカはドル取引、顧客は円取引を望む場合など)。また、支払いサイトについても一般的にキャッシュフローの観点から、メーカーは短い支払いサイトを望み、顧客は長い支払いサイトを希望しますがこれも半導体商社を挟むことで解決することができます(例: メーカー希望支払いサイト Net 30days / 顧客希望支払いサイト 月末締め90日の場合など)。

半導体商社ランキング

Gartnerによると、2019年における世界の半導体商社の売上合計は$144.3B(約15兆円)で、半導体商社ランキングTop 10は下記のようになっています(売上順)。なお、半導体商社は半導体メーカーほど注目を浴びないからか、直近の2020年データがありません(データ出所: Gartner)。

世界の半導体商社ランキングの特徴として、トップ3のArrow(米)・Avnet(米)・WPG(台)が日本円で1兆〜2兆円規模を誇り、その下に5000億円規模の準大手が数社(日本からはマクニカや豊通グループのNextyがランクイン)軒を連ね、さらに中堅以下の半導体商社が星の数ほど存在しています。Top 10の半導体商社の売上合計は、半導体商社全体の売上の約54%でした。

ちなみに、おなじみ半導体メーカーランキングの構図も似たようなもので、トップ10メーカーの売上が全体の約56%を占めています(データ出所 Gartner)

世界の半導体の売上の約3割は半導体商社経由

Gartnerによると、2019年の半導体メーカーの売上総額は$418Bでした(参考 Gartner)。この売上総額は半導体メーカーの売上額合計ですので、売上内訳は大まかに直販販売分と代理店経由の販売分が含まれていると考えられます(一部ライセンスなども含まれると考えられるが、微々たるもの)。同じくGartnerが発表している2019年の半導体商社の売上総額は$144.3Bです(参考 Gartner)。これにはもちろん、半導体商社の利鞘分が乗っていますが後述する通り微々たるものですので単純にこれらの数字から、世界の半導体の売上の約3割は半導体商社経由であることがわかります。

日本の半導体商社の存在感が強いのはなぜ?

私自身、日本で半導体企業で働いたあと、欧州へ移住し現地の半導体企業に勤めています。こちらに来て気がついたのですが、よく言われるのが『日本の半導体サプライチェーンは半導体商社の存在感が強く、独特だ』ということです。

WSTSによると、2019年の世界の半導体総出荷額は$412B(Gartnerと微妙に誤差はありますが)で、そのうち日本の半導体市場の規模は$36Bと円換算にして約3兆9,187億円でした(参考 WSTS)。またEE Timesにより纏められている日本の主要半導体商社21社の2020年3月期売上合計は約3兆8,544億円となっており、日本の半導体市場=日系主要半導体商社売上合計額となっていることがわかります。

ただし、日本の半導体商社といっても、売上の全てが国内向けでなく、海外顧客の売上や更には非半導体事業の売上も含まれています。例えば日本の半導体商社トップのマクニカにおける海外企業向け売上は約1500億円ですし、同社の非半導体事業ネットワークスの売上は約700億円です(参考 マクニカ決算説明会資料プレゼン)。また、加賀電子なども600億円以上を非半導体事業が占めています。

それでも、世界の半導体売上における半導体商社の売上比重は前述の通り約3割程度である事を考えると、日本の半導体サプライチェーンにおける半導体商社の存在感が圧倒的に強いことがわかります。この理由について個人的に考えていることは下記3点です。

半導体サプライチェーンに残るケイレツの名残り

よく言われているのが、日本企業の構造的な理由でいわゆる『ケイレツ(系列)』の名残です。ケイレツというと自動車メーカーのサプライチェーンで完成車→Tier 1→Tier 2→Tier 3と全て系列企業群が熊手のように広がっている構造を思い浮かべますが、半導体においてもそのような形態は顕著に見られます。

もともと半導体メーカーの歴史をたどると、大手電機メーカーの一部門であった場合が多いです。ルネサスはもとを辿れば三菱・日立・NECですし、Kioxiaは東芝です。今は亡きエルピーダも日立・NECが統合して誕生した企業です。こうした企業も車業界におけるケイレツのように部品を納入するサプライヤーに自社系列の商社を使ったり、また自社以外の顧客に対しても自社系列の商社を使って半導体を売らせたりするという慣習が強く残り、現在のような状況が続いていると言われています。

日本の半導体商社を見ると、驚くほど『ケイレツ』系が多いです。それは大手の電機メーカー系のケイレツであったり、半導体メーカーのケイレツであったりと形態は様々です。また、日本の大手半導体商社のNexty Electronicsは豊田通商の子会社になっており、おそらく某系列のTier 1における存在感は強いんじゃないかと思われます。

一方で、狭い市場に半導体商社が乱立している状況はあまり効率的ではないと筆者は個人的に考えます。其々の半導体メーカーの源流企業や顧客のケイレツ半導体商社がケイレツであるが故に商流を引き継ぎ存在しているだけですので、競争力というより政治力で生き残っているだけです。シュリンクしている市場で販売チャネルが乱立していることは営業効率が悪いですし、何より本当の意味での競争力も育たないです。実力がある独立系の商社が、半導体メーカーと取引をしたくても、ケイレツの政治力に守られている半導体商社があるが故に触れない商流があれば、取引をする気が失せますし、半導体メーカーにとっても実力がある半導体商社とコネクションを作れない機会損失になると思います。

ただ、繰り返される半導体メーカーの統合により、商流の再編も起きています。しかも、現在のトップ半導体メーカーの多くは非日系で、彼らは日本の商習慣における『ケイレツ』など関係なく、純粋に実力のある半導体商社を使い続けます。このことから、現在日本の半導体商社にも再編の波が起きており、縮小し続ける市場でいかに生き残るかを掛け、吸収合併が繰り返されています。

半導体の主要顧客が日本市場にいない

続いて、根本的な部分になりますが、現在の日本市場には半導体メーカーが直販取引をしたがるような主要顧客が極めて少なくなっています。

下記はGartnerが纏めた2019年及び2020年の半導体消費企業ランキングです(画像引用 Gartner)。残念ながらここに日本企業の名前はありません。勿論ここには書けませんが、個人的に有名半導体メーカーが直販取引をしている日本企業はいくつか知っていますが、本当に数える程度しか今はありません。

特に外資系半導体メーカーは日本市場がシュリンクしているが故、人員配置を最小限に抑えて僅かな顧客のみを直販顧客として取引し、それ以外の顧客は全て半導体商社任せにしているのではないでしょうか。

サプライヤに求められる負担が大きい

最後に、日本はサプライヤに求められる負担が大きいと感じています。これも突き詰めれば私が過去に担当した個々の顧客の話になってしまうので詳しくは書きませんが、例えば評価・認定に関する大量のドキュメントです。

半導体のサンプルを出し、評価してもらい、量産で使用するBOMに載せてもらうまでは良いのですが、其々の企業が独自のフォーマットで定める部品認定書類の作成を求められることが非常に多いです。というか、私はそもそも日本で半導体の営業マンからキャリアをスタートしたのでこれが当たり前だと思っていたのですが、欧州に来てからこのような書類が無い、もしくは非常に簡潔で最小限に抑えられている事を知り驚きました。中国やアメリカなど、他地域の顧客の話を聞いてみるとどこも同様でした。

さらに、片手の指で数えられる程の月しか出さないForecastと、とんでもなく短い発注リードタイムで納入を求める顧客がまだまだ非常に多いです。現在の半導体のリードタイムや受給の逼迫状況とは大きく乖離した商習慣です。当然、半導体メーカーはこのような取引には対応してくれないので、色々と言うことを聞いてくれる半導体商社が使われ続けているのではないかと考えられます。

半導体商社はつらいよ

ハッキリと申し上げましょう、半導体商社はジリ貧ビジネスです。特に日本のようにサプライチェーンに非合理的な『ケイレツ』が無く、またサプライヤに求められる余計な(?)負担が少ない欧米に置いて、半導体商社はどちらかというと余計な存在として見られられます。特に現在のように、受給が逼迫し価格が値上がりする状況で、これ以上に余計なお金を払いたくない顧客は半導体商社を完全に排除する、もしくは最低マージンで物流と金融のバッファ役としてのみ利用したいと考える場合が多いです。

ただ、私のように半導体メーカーを経て、半導体商社の中にいる人から見れば、半導体商社を使うメリットは大いにあります。それは物流や支払い面における基本的な部分だけでなく、営業・マーケティングや技術サポートといった付加価値の部分、そして半導体メーカーの営業部隊だけではどうしてもできない顧客から突きつけられる様々な要求などなど、半導体商社を使うことでどれだけ物事が効率的に動いているか、計り知れません。また、特にトップの半導体メーカーはマーケティングが非常に上手で、どのような顧客が今後3年、5年、10年のスパンで伸び力を入れて付き合うべきかよく分かっていますので、リソースの効率化の観点からそういった顧客への対応(営業・製品開発含む)へ注力し、残りの顧客は半導体商社に任せたがる傾向にあります。身の程知らずな顧客ほど、半導体商社不要論を唱え、逆に半導体メーカー・半導体商社の両方から白い目で見られているように感じます。

半導体商社の利益率 半導体メーカーとの比較

大手半導体商社の決算資料に目を通し、半導体商社の利益率を見てみます。下記はArrow・WPG・マクニカ・加賀電子其々の直近1年の決算資料から売上・粗利・営業利益・純利益をまとめたテーブルです(参考 ArrowWPGマクニカ加賀電子 各社決算資料)。

また、売上が同規模の半導体メーカーの粗利・営業利益・純利益は下記のようになっています(参考 IntelSK hynixAnalog Devices)

WPGの粗利率は低いですが、半導体商社の粗利率を見るとだいたい10%程度のマージン率であることがわかります。そして営業利益率は良くて3%台、最終的に手元に残る純利益は売上の2%台というところでしょうか。一方で半導体メーカーの粗利率は総じて30〜50%台、営業利益率は10%後半〜30%台でしょう。半導体商社は、半導体メーカーのように巨額の研究開発費や製造ラインの運営費用や投資額を必要としませんが、稼ぐ力は圧倒的に劣ります

勿論、顧客やデバイスによってマージン率は異なりますし、半導体商社によっては半導体デバイスだけでなく、ソフトウェアやシステムインテグレーション、EMSなど多角化した事業を行っている場合が有るため、一律にこのマージン率であるとは言えません。

死ぬほど儲からない半導体商社

半導体メーカー売り上げトップのIntelと半導体商社売り上げトップのArrow Electronicsの利益およびキャッシュフローの過去4年の推移を比べると下記のようになります。同じ半導体業界に属するとは言え、メーカーと半導体商社では随分と実入りが異なるのがわかります。

半導体商社は利子なしの銀行か・・・

さらに、半導体商社泣かせなのは低マージンだけでなく、様々なビジネスの慣行です。その一つにShip&Debitという販売手法があります。半導体は、数量規模などに応じて特定顧客毎に異なる価格(エンド価格)で販売されることが通常ですが、半導体商社を噛ませる場合、半導体メーカーはまずエンド価格より高い正規価格で出荷し、最終的に顧客に出荷され他あとにデビット処理(返金)をするという手法です。これをすることでエンド価格を管理し(勿論、最終販売価格は拘束できない)、さらに半導体メーカーはよりよりキャッシュフローを得ることができます。ただ、半導体商社からすると後から返金されるとは言え高い価格で仕入れるわけですから(勿論利子などつかない)、まるで利子無しで半導体メーカーにお金を貸しているような感覚です。しかも、当然のごとく顧客からの支払いは何ヶ月も先なのでキャッシュフローがとても厳しくなります。

補足すると、アルテラ、ザイリンクスといったFPGAメーカーは、まず代理店(半導体商社)に「正規価格」で在庫を仕入れさせ、それより安い価格で顧客に販売させる手法を取っている。これでは代理店は赤字商売になってしまうので、安価での販売後に仕入れ価格を調整する(デビット処理を行う)必要があり、シップ&デビットと呼ばれているが、非常に手間のかかる、かつ高価な在庫リスクを抱える代理店泣かせの手法である。
引用 – 電子デバイス新聞『販社の重複が再編の要因に』

半導体商社のリスク

半導体商社は常に様々なリスクに晒されています。

メーカー統合による商流再編

昨今、半導体メーカーの巨大な統合ディールが相次いでいます。過去の数年間でIntelによるアルテラ買収、NXPによるフリースケール買収、マーヴェルによるCavium買収、AvagoによるBroadcom買収、InfineonによるCypress買収などがありました。そしていま規制当局の承認を待っている巨大なディールはAMDによるXilinx買収とADIによるMaxim買収でしょうか。

半導体業界の過去の合併・買収の破談劇
半導体業界の大型M&Aが続いています。2020年にはAMDによるザイリンクスの買収発表やNvidiaによるARMの買収発表が報じられました。しかし、これらの買収や合併は必ずしもすべて実現するとは限らず、各国規制当局や競合のロビー活動により反対に合う場合もあります。本記事では過去の半導体買収・合併破談劇を取り上げます。

半導体メーカーの統合により、其々が使っていた半導体商社が異なる場合、効率化の観点から片方をターミネートし、もう片方に商流をまとめることが多々あります。上述の通り、日系の半導体メーカーであれば『ケイレツ』という政治的な縛りにより共存されることがありましたが、2021年現在の有力な半導体メーカーはほぼ非日系ばかりでそんな事は関係なしに実力だけで半導体商社を選びます。

半導体商社不要論

半導体商社の付加価値に対する疑問の声も多く上がります。私が前職の先輩に聞いた話では、例えばインターネットが普及していなかった1990年代であれば、現在のようにウェブで簡単に型番を調べたりすることもできず、また無料で使えるWeb翻訳サービスも存在しなかったので、英語で書かれたデータシート(仕様書)を読むのでさえ一苦労だったと言います。そんなとき、複数の半導体メーカーの商品を纏めてカタログ化し、また顧客からの質問にもすぐに応えることができる半導体商社には大きな付加価値があったと言います。

しかし、現在であればウェブを使えば簡単にほしい製品の型番を調べることもできますし、メーカーに依ってはデータシートなどHPに公開されていたり、わからない単語や文章なんて簡単に調べられます。また、顧客からの注文書もメール一本で受け取ることが可能ですし、フォーキャストも顧客のサプライチェーンシステムにアクセスすればいつでも見ることができます。

このようなことから、半導体商社の従来の付加価値はどんどん目減りし、半導体商社不要論を唱える顧客そして半導体メーカーも多くなっています。例えば、2020年の半導体メーカー売上ランキングでトップ10に入るアナログ半導体最大手のTexas Instruments(TI)はそのような動きが顕著だと言われています。

2019年7月、Texas Instruments(以下、TI)は、長年にわたり販売代理店として提携してきた丸文との販売特約店契約を2020年9月末日に終了する、と発表した…丸文の2019年3月期(2018年度)売上高は3267億円。このうちデバイス事業の売上高は2751億円を占めている(丸文決算資料より)。Grossbergでは丸文のTI製品売上高を520億円と推定していて、この売り上げが2020年10月以降はゼロになる、というかなり大きなインパクトが丸文に襲いかかることになる…

例えば世界中に10万社の顧客を抱えるTIは、かつては直販による顧客管理の限界を公言し、商社との連携の重要性を主張していた。だが、「My TI」と呼ばれる顧客向け自社運営サイトをフル活用するなど、従来商社任せにしていた作業やプロセスを自社内に取り込む動きを加速させている。そして「商社は営業活動をしなくても良い。物流業務に専念してほしい」と発言するレベルまでに至った。
引用 – EE Times『マーケティングオートメーションが半導体商社を危機に追い込む現実』

このような動きにより、半導体商社は必要最低限の業務だけ行えば良いと見做され、結果的に付けることができる付加価値が減るためマージンも低下し、より儲からなくなるのです。

顧客とメーカー方針による刈り取り不可能案件

また、半導体商社をやっていてとても理不尽なケースとして代理店契約地域に起因する刈り取り不能案件があります。通常、半導体メーカーと半導体商社が結ぶ代理店契約には地域が限定されています。ArrowやAvnetといった巨大半導体商社であれば、全世界でフランチャイズ契約を結べたりしますが、中小の日本や東南アジアの半導体商社は代理店契約地域が特定国などに限定されている場合が多々あります。

すると、例えば日本の顧客相手に営業活動をし、評価を終わらせたにもかかわらず、もし顧客の生産場所が海外であると代理店契約の対象地域外であることを理由に出荷することができない事態が発生します。勿論、半導体メーカーに依ってはそういった場合も守ってくれるところはありますが、『契約外だから』と完全に見放され、結果的にタダ働きをさせられる場合も発生するのです。

もっと最悪なケースは顧客が完成品の生産を自社生産でなくEMSなどに生産委託をする場合です。EMSはとにかく、『安く、必要なときに部品を仕入れられれば良い』という考えで調達をするので、ある半導体商社がデザインをサポートした案件も関係なく独自の調達網を使って仕入れようとします。そうするとせっかく時間と工数を掛けて追いかけた案件を刈り取ることができず、半導体商社泣かせのタダ働き事案が発生してしまうのです。

事業の多角化と再編を続ける日本の半導体商社

このように、右肩上がりの成長が続く半導体業界において泥水を啜るような存在である半導体商社ですが、これからも必要とされる存在であることは間違いないです。ただ、半導体商社の競争は一層激化し、淘汰が進むと考えられます。特に中小規模である日本の半導体商社が生き残る道は何なのでしょうか。

ArrowやAvnetにはなれない

ArrowやAvnetなど、メガディストリビューターと呼ばれる巨大半導体商社は早くからM&Aにより海外展開を推進し、主要半導体メーカーと世界各国で代理店契約を結びどんな場所に於いても商流を確保することが可能です。基本的に彼らは技術サポートなどの付加価値ではなく、物流と商流の一本化という半導体メーカー及び顧客の要請に従うことで商流を勝ち取っていることで知られています。

ただ、今更中小の半導体商社がこのような戦略を取ることは不可能です。半導体メーカーからしたらすでに合理化された地域の商流に半導体商社の都合で代理店契約を結ぶ意味は無いですし、顧客からしても既存の調達チャネルを使えればハッピーなので、新たな半導体商社を調達網に加えるメリットはありません。

事業の多角化

昨今の日系の半導体商社の傾向として、半導体デバイス販売以外に活路を見出す戦略を取ることが増えていると思います。

例えば、日系半導体商社トップのマクニカは半導体デバイスだけでなく、セキュリティやデジタルソリューションなどのネットワーク事業、さらにIoTソリューションやaiなど新規事業の推進を進めています。これらの事業は複雑化する半導体周辺のシステムインテグレーションと親和性が高いと考えられます。

同社の決算資料によると、2020年度の総売上5540億円のうち、約13%にあたる729億円が非半導体事業の売上となっています。

また、同じく日系半導体商社大手の加賀電子も売上の多くは半導体事業が締めているものの、営業利益率で見ると非半導体事業が半導体事業の営業利益率を上回っています(画像引用 加賀電子決算資料)。

半導体商社間のM&Aや半導体商社同士の合併

狭い市場に半導体商社が乱立する日本において最近顕著な動きが買収や合併による半導体商社の統合です。

マクニカと富士エレクトロニクスによる合併、バイテックとUKCホールディングスによる合併(レスターホルディングス)、加賀電子による富士通エレクトロニクスの買収などがここ数年の半導体商社再編の動きです。

特に、重複する半導体メーカーを取引先に持つ半導体商社同士がくっつくことで、半導体メーカーによるリストラを免れ、また多数の半導体ラインカードを持つ一社が誕生することで顧客から見ても調達網をまとめるメリットが生まれるわけですので仕入先である半導体メーカー及び顧客から選ばれ商流を勝ち取り生き残り続けることができるのです。

まとめ

世界の半導体出荷の約3割は半導体商社を経由して行われています。一方で、半導体商社は年を追う毎に儲からなくなり、様々なリスクに晒されています。

特に半導体市場がシュリンクする日本では半導体商社が乱立していますが、勝ち組と負け組の差がくっきりと別れつつあります。

半導体商社はこれからも必要とされる存在ではあり続けますが、勝ち残るには半導体商社同士の再編による自己防御や、事業の多角化により半導体デバイス以外にも活路を見出すことが重要であると考えます。

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