SK hynix FY20決算発表とメモリ半導体市況の考察

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韓国のメモリ半導体大手のSK hynixが2020年通期の決算発表をリリースしましたのでその内容とメモリし今日の考察をしていきたいと思います。

この記事のポイント
・メモリ半導体市況は2019年のバブル崩壊から回復基調
・2020年下期はコロナ特需の反動と一時的な在庫調整によりASP下落
・DRAMはひと足早く価格底打ち、NANDは2021年下期から好転
・5Gスマホを中心にSK hynixの業績寄与
・伝統的に弱いNAND事業はIntelのNAND買収により増強か
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SK hynix決算

SK hynixの2020年 Q4および通期の決算は下記のような形になりました

【SK hynix 2020年 Q4】
・売上
7,966B KRW (約7,900億円) / QoQ -2% / YoY +15%
・営業利益 966B KRW (約 960億円) / QoQ -26% / YoY +298%

【SK hynix 2020年通期】
・売上 32,000B KRW (約3兆2千億円) / YoY +18%
・営業利益 5,000B KRW (約5,000億円) / YoY +85%

2019年はメモリバブルが崩れた年でしたが、通期の業績は著しい回復を見せており、バブル崩壊からたった1年での回復となりました。ただし、Q4は売上、営業利益ともにQoQでは下落しています。これは顧客側の在庫過剰による単価の下落が影響していると考えられており、同業大手のマイクロンの決算でも同じような現象が発生していました。別途筆者の過去記事をご覧いただければと思います。
https://analog-handoutai.net/micron-earnings-fq1-21/
続いてSK hynixの過去3年の売上と営業利益率の推移を4半期ごとに見てみます(SK hynix社 IR資料を基に筆者が作成)。
2018年はメモリ大手各社は完全に無双モードに入っていました。2018年Q3にはSK hynixの業績はピークに達し、営業利益率が60%に迫る勢いでした(ちなみに当該四半期のGross Marginは66%)。
2020年に限ってみると、Q2から売上と営業利益率がピークアウトしているのですが、Q2はまずコロナによる在宅需要特需でPC関連およびサーバーが業績を押し上げました。その後、上述の通りQ3からQ4中盤にかけて顧客の在庫調整が入り、単価が下落しています。ですが、2021年Q1以降は緩やかに戻していくと考えられます。理由については順を追って書いていきますが、2021年を通じてDRAMが値上がりしていくのと、下半期からNAND市況が回復することが考えられています。

SK hynix – DRAM

2020年通期のDRAMのブレイクダウンはまだ発表されていませんが、SK hynixの売上の約7割をDRAMが占めています。

・SK hynixの売上に占めるDRAM比率は約70%と予想
・Q4 2020 DRAM Bit Growth: +11%
→Micronは1桁%の減少だったがQ3にBit出荷を大幅増加させている
・Q4 2020 ASP Trend: QoQ -7% (Micronも同様であった)
DRAMはQ2特需からの価格下落が発生しておりましたが、11月末以降にはスポット価格が上昇し始めていました。通常、汎用メモリの価格交渉は大口顧客顧客とは3ヶ月に一度行い、翌4半期の大口価格と物量を当該4半期の中盤ー末にかけて妥結します。
スポット価格はメモリ市場の需給調整を表しており、需給バランスで売り手市場の兆しが見えると、ひと足早くメモリスポット価格は上昇を始めます。一連の流れから、11月末ー12月に妥結したであろう2021年Q1 DRAM 大口価格は値上げが予想されています。
なお、スポット価格はDRAM eXchangeというサイトで確認が可能です。筆者の過去記事にて解説していますので興味があれば見てみてください。
https://analog-handoutai.net/dram-exchange/

SK hynix – NAND

続いて、NANDの実績を見てみます。SK hynixはメモリ以外にもCMOSやシステムLSI受託製造等のビジネスがありますが、おそらく売上の5%にも満たない数だと想定されますので総売上からDRAMを差し引いた数の殆どがNANDの売上になると考えられます。

・SK hynixの売上に占めるNAND比率は約25%と予想
・Q4 2020 DRAM Bit Growth: +8%
→Micronは+10%台後半 (QLCと高積層NANDの出荷開始が影響していると考えられる)
・Q4 2020 ASP Trend: QoQ -8% (Micron -10%前半)

MicronのNAND ビジネスとの比較

上記のようにNANDはBit Growth +8%に対してASPは-8%と下落基調です。個人的に面白いな、と思うのは同業大手のMicronとの比較ですね。
SK hynixのNAND Bit Growth (出荷個数と考えてください)は+8%に対してMicronは+10%代後半を発表しました、つまり約2倍です。一方でSK hynixのNAND ASP下落は-8%に対してMicronは-10%台の下落となっています。
この差はPC・データセンター向けSSDのシェアによる違いと考えられます。メモリ市場はスマホ市場とデータセンター等のSSD市場がそれぞれ30%づつを占めていますが、NANDに限るとどうしても容量が大きくなりがちなSSD市場への依存が高くなると考えられます。
SK hynixは伝統的にNAND事業が弱く、コンスマー製品やスマートフォン向けのNANDに依存しています。一方でMicronはデータセンター向けのSSD(eSSD)事業のシェアをいち早く拡大しており、また一般向けPCや外付けSSDもCrucialブランドで拡販しています(cSSD)。
Micronは176層の高積層NANDの出荷をいち早くアナウンスし、またQLCなど高用量帯のNANDのシェアを上げています(参考 EE Times『3つの技術で高密度化、Micronの176層3D NAND』)。これらの新製品の投入がMicronのBit出荷増加を牽引しましたが、一方で顧客の在庫調整により需要が低い中であえて供給量を増やしていますので、供給過剰を招きます
特に2020年Q2のメモリ特需はコロナによる在宅勤務から発生したPC需要とデータセンター投資需要です。これらの顧客はTB級のSSDを大量に購入する一方で、一度在庫調整と供給過剰が発生すると大幅な単価下落を招きます。以上の理由によりMicronはシェアを拡大させた一方で単価の大きな下落に苦しんだと考えられます。
筆者個人的には、Micronのような市況が悪い時にあえて供給を増やしシェアを取りに行くのはメモリビジネスに於いて非常に重要だと思います。また、NAND事業一本だと、このように市況悪化時の積極投資が難しくなりますが、MicornやSK hynix、SamsungはDRAMを3社寡占しており、上述の通りDRAMの市況はひと足早く回復していますのでバランスを上手く取ることができると考えられます
ただ、SK hynixはIntelのNAND事業買収を発表しました。Intelはデータセンター向けのシェアが高く、SK hynixはこのデータセンター向けSSDの技術とシェアを狙っての買収と考えられており、今後SK hynixのデータセンター向けSSDのシェア拡大が期待されます。

SK hynix – MCP (モバイル向けメモリー)

SK hynixはMCPのブレイクダウンも書いています。MCPとはMulti Chip Packageの略で、NANDとDRAMが一つのチップに入った種類のメモリーです。通常DRAMとNANDを別々に使うと、チップが2枚必要になりますが、それらを同一のパッケージに入れることで省スペースとなり、主にスマートフォンでシステムの小型を図る目的で使われています。

SK hynixのMCP売上はYoYで+22%、QoQで+5%となりました。2020年はスマホの出荷台数が伸び悩みましたが、一方で5Gスマホを筆頭に一台あたりのスマホに搭載されるメモリの高スペック化が続いており、その結果としてSK hynixのMCP売上は右肩上がりになったと考えられます。

SK hynixは5Gスマホの出荷台数拡大を主な背景に、2021年もMCP売上の増加を見込んでいます。

2021年のメモリ半導体市況Outlook

SK hynixの決算資料を基に2021年メモリ半導体市況の見通しを考察します。

2021年 DRAM市況

SK hynixは2021年のDRAM市況を以下のように纏めています。

【供給】
・Bit Growth +20%
・Process Shrinkの慢性化、生産ラインCapaも3社寡占によりなかなか増えづらい
・慢性的な供給不足が継続

【需要】
・Hyper Scalerによるデータセンター投資再開、5G関連の需要増加
・Data Center向け新型CPU増加によりサーバー市場DRAM +30%増加
・5Gスマホ出荷数が20年比で2倍予想(2.5億台→5億台)、モバイルDRAM +20%増加
・ゲーミングPC、プレステ・エックスボックスなど向け高単価のGraphic DRAM増加

簡単にまとめると需要面ではTAMの大きなサーバー・スマホ市場での需要が旺盛で、システムの進化に伴い搭載するDRAMのスペックも上がっていきます。また、パイ自体は小さいですが、単価の高いGraphic DRAMの需要も増えます。一方でDRAMは供給が伸び悩んでおり、旺盛な需要に対して供給量が足りず、供給不足に陥り値上がりを招くとのことです。
筆者自身、先日のAppleの決算をみて2021年の5Gスマホのシェア拡大には期待していますが、それ以上にFacebookやAmazon、Googleといったハイパースケーラーの有り余る投資余力が新規データセンターの建設を牽引するのではないかと考えています。

2021年 NAND市況

続いてNANDです

【供給】
・Bit Growth +30%以上
・高積層3D TLCの出荷量増加

【需要】
・データセンターをメインに在庫調整中
・スマホ搭載ストレージ容量の底上げ
・新型ゲームコンソール向けSSD需要増 (PS4まではHDD、PS5からはSSD)
・新型サーバーCPU登場によりストレージ容量底上げ、新規データセンター建設

現在、NANDは供給が比較的伸びている状況に対して、顧客側の在庫調整を主な理由に供給過剰気味です。ただし、需給バランスの崩れは、一時的な在庫調整を起因としているため、メモリ市場を取り巻く環境を総じて見ればスマホやサーバーなど一台あたりに搭載されるストレージ容量の増加や新規データセンター建設など底堅い需要があることは確かであり、顧客及び市場の在庫水準が下がる2021年下半期からはNAND市場が好転していくと見ているようです。
ただし、NANDはDRAMと異なりプレーヤーが比較的多く(DRAM 3社、NANDはIntel含めて6社+中華NANDベンダー)供給過剰に陥りやすいです。また、上述の通り、Micronを筆頭にNANDは高積層化けによるBit供給が増えやすい状況にありますのでこの辺のバランスを引き続き注視する必要があると考えています。

まとめ

SK hynixの2020年通期決算とメモリ市況について考察いたしました。まとめると以下のようになると思います。

・メモリ半導体市況は2019年のバブル崩壊後から底打ち
・2020年Q2のコロナ特需の反動はあるものの、現在DRAMを中心に回復基調
・データセンター向けSSDのシェアが弱いSK hynixはNAND ASP下落も緩やかだがシェア拡大も弱い
→IntelのNAND事業で今後補強されると考えられる
・2021年は5Gスマホの出荷数倍増、及び強い投資余力を持つHyperscalerによる新規Data Center建設に期待
・NAND市況は在庫調整が上半期に終われば下期から好転か
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