SMICが半導体業界に与える影響を考察

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中国最大手の半導体受託製造(以下 Foundry)、SMICがアメリカの禁輸措置リスト(エンティティリスト)に追加されました。これにより、SMICはアメリカから半導体製造装置などの購入が難しくなることが予想されます(ロイター『中国SMIC、米禁輸リスト指定は「先端技術研究・開発に打撃』)。

本記事ではSMICがアメリカのエンティティリストしたことにより半導体業界に与える影響について考察致します。

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世界の半導体供給に占めるSMICの供給能力

まず、世界の半導体供給に占めるSMICのウェハ供給能力を下記のスライドで纏めました。

SMICの生産能力は世界の半導体供給の2.5%(8 inchウェハ換算)

SMIC社の公式発表によると、2020年Q3時点でSMICの月産ウェハ生産キャパは約51万枚(8 inch換算)でした。これを世界の半導体生産能力に当てはめると約2.5%となり、一位のSamsung(サムスン)やTSMCほどの影響力はありません。

Foundry専業としてのSMICの供給能力

続いて、対象を世界のFoundryに絞ってみます。すると、SMICの供給能力比率は6%となります。これをFoundry専業各社のランキングに当てはめると

1位 TSMC
2位 UMC
3位 Global Foundries
4位 SMIC

となります。なお、SamsungのFoundryキャパは実際には2位になると推定できますが、専業ではないのでランクに入れません。

8 inch FabにおけるSMICの供給能力

続いて、8 inchのウェハで生産されるファブに限ってみるとSMICの生産能力は約4%になります。ただし、これにはAnalog DevicesやInfineon Technologies、Texas Instrumentsといった大手のIDMの生産能力も含みます。

これをFoundryの8 inch製造ラインに限ればSMICの生産能力シェアは高いものになることが考えられます。というのも、現在世界の半導体需給は供給がひっ迫している状況にあり、中でも8 inchウェハで生産されるラインの生産キャパが足りない状況です。

Analog DevicesなどIDMだけでなく、自社で生産設備を持たないファブレス企業の多くはまだまだ8 inchでの生産に頼っており、それらのデバイスの供給が追い付かない状況となっています。SMICの生産が不安定になることでファブレス企業は生産をUMCなどへ切り替えることになりますので、一層の逼迫が懸念されます。

2021年の半導体業界市況を解説
2021年の半導体業界市況ニュースについて解説。AMD, NVIDIA, TSMC, Intelなどのロジック半導体、Samsung, SK hynix, Micron, Kioxiaなどのメモリ半導体、8インチで製造されるアナログ半導体の需給バランスなどについて。

SMICのQ3決算資料と顧客依存

続いて、SMICのQ3決算とネット上で公開されている各記事から顧客依存率を推定します。

SMICのQ3売上はQoQ +15%、しかしQ4は-12%のガイダンス

11月に公開されたSMICの決算はQ3 QoQ +15%/YoY+32%と好決算でした。しかし、Q4は二桁%のマイナスをガイダンスとしており、さらにCapexも$6.7B > $5.9Bに減少としています。

Q4の売り上げ減少はHuawei向けの駆け込み需要の反動が予想されますが、さらに懸念すべきところはCapexの減少です。決算資料には米国の貿易規制により必要な装置や部材の購入が困難になるかもしれない、と書いており、約1か月後の今回のニュースでそれがオフィシャルなものとなってしまいました。

SMICのプロセス別売上と地域別売上

SMICの決算資料によると、同社の販売額のプロセス別依存度は下記のグラフの様になっていて0.15/0.18µm及び40-65nmのプロセスに過半数を依存しています。また、大半の顧客(ファブレスメーカーの所在地)は中国本土ですが、売り上げの約20%を北米顧客に依存していることがかかれています(下記 SMIC CQ3 2020 IRスクリーンショットを参考)

メディアによると0.15/0.18µmのプロセスではQualcomm(クアルコム)およびBroadcom(ブロードコム)のPMICを製造しており、こちらの依存度が大きいと考えられます。

また、SMICは中国の大手NOR Flashベンダー、Giga DeviceのNOR Flashを製造していることを公表しています。Giga DeviceのNOR Flashは20%と大きなシェアを持っており、通常このタイプのメモリーは55-65nmのプロセスで製造されることが推定されます。

GigaDeviceがAppleのAirPods向けにNORフラッシュメモリを供給しているが、SMICの65/55nmプロセスを使用して作られてきており、これも今回の制裁措置により、AppleがNORの調達先そのものをWinbondやMacronixに変更する可能性が出てきたという。(参考『SMICが米国当局による制裁を確認、TrendForceが半導体産業への影響を分析』)

考察: SMICの供給リスクが半導体業界に与える影響

最後に、筆者が今回のSMICの制裁リスト入りを通じて起こりうる半導体業界への影響を考察します。

北米系顧客は台湾系Foundryへ切替

これはすでに現在進行形かもしれませんが、QualcommやBroadcomなどSMICの生産能力へ依存している製品を販売しているファブレス企業は他社への切替発注を進めるでしょう、これはすでに現在進行形の話かもしれません。具体的には台湾のUMCやTSMCの8 inchラインが相当すると考えられます。

しかし、既述の通りこれらのラインはすでにキャパオーバーな状況なため、値上げなどの対応が想定されます。

NOR Flashの逼迫

上述の通り、様々なソースをつなぎ合わせるとNOR Flashの20%シェアを持つGiga Deviceの生産にも影響が発生することが懸念されます。もちろん複数の受託生産ラインがあるはずですが、切替がすぐになされるかどうかは分かりません。

DRAMeXchange - 【Market View】NOR Flash ASP to Potentially Drop in 2H20 as  Inventory Pressure Mounts, Says TrendForce

それによりNOR Flashを調達している企業はマクロニクス、ウィンボンド、サイプレス(Infineon)などへの代替注文を進めて行くと考えられます。

SMICの今後

また、SMICは今後アメリカからアプライドマテリアルズなどの半導体製造装置の調達が難しくなり、10nm以下のプロセス開発が困難になると予想されます。中国でも地場の半導体製造装置市場が育ってきていますが、まだまだ技術力は劣っており、90nm-100nm程度が限界であるという話です。

さらに、現在稼働中の生産ラインも半導体製造装置のメンテナンスを受けられなくなることで危機的状況になるという見解を出す識者もいます(参考『米国が「敵」認定で中国SMICに全工場停止の危機』)。

これらの状況から、SMICが置かれている状況は危機的な立場にあり、将来の競争力が削ぎ落され、また現行の生産もままならなくなれば会社の存続も危なくなります。また、特に8 inchのウェハで製造される半導体の需給バランスにも大きなインパクトを及ぼし、UMCなどのFoundryによる値上げが想定されます。

競合ファウンダリやIDMにとっては追い風となるニュースですが、中国の半導体業界には非常に痛いニュースです。

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