おせわになっております、オランダの露光装置大手ASMLのFY22 Q4およびFY22通年の決算発表がリリースされましたので簡単なまとめ記事です。本記事はASML社の同決算内容の簡単なまとめに留めますが後日、本ブログにて2023年の半導体装置市場の見通し記事をリリースしたいと思います。
ASML Q4 2022決算
ASMLのQ4決算結果は下記のようになりました。個人的にはEUV露光装置を含むNetbookingの金額が落ち込んでいるのが気になります。
→売上: EUR 6,430M … QoQ +11.2% / YoY +29%
(うちEUV露光装置売上: EUR 2,326M YoY +46% / EUV露光装置単価 EUR 179M YoY +24%)
(うちInstalled Based Management Sales *納入済装置のメンテナンス: EUR 1,682M / YoY +12%)
→Gross Margin: 51.5% … QoQ -0.3ppt / YoY -3.7ppt
→Operating Margin: 33 % … QoQ -0.5ppt / YoY -7.7ppt
→EPS: €4.6 … QoQ +7.2% / YoY +5%
⇒Net Booking: EUR 6,300M … QoQ -29% / YoY -10%
(うちEUV露光装置: EUR 3.4B … QoQ -10.5% / YoY +30%)
ASML 2022通年決算と2023年ガイダンス
また、通年の決算は下記のようになっています。
→売上: EUR 21,173M … YoY +13.7% (対FY21 年初ガイダンス成長予想 +20%)
→Gross Margin: 50.5% … YoY -2.2ppt
→Operating Margin: 30.7 % … YoY -5.6ppt
→EPS: €14.13 … YoY -1.46%
⇒Net Booking: EUR 30,674M … YoY +16.8%
FY23 ASML ガイダンス
→Q1売上 EUR 6.1B〜6.5B (YoY +78.2%)
→通年売上成長予想 YoY +25%

ASMLの売上構成
ASMLなど半導体製造装置メーカーの売上は装置自体の売上と導入後既に顧客の工場にて稼働中の装置に対するサービス売上に分けられます。
73%が装置売上、27%がサービス売上
2022年のASMLの売上訳EUR 21,173Mのうち、73%が装置売上で残り27%がInstalled Base Managementと呼ばれるサービス売上になっています。サービス売上は比重は相対的に小さいですが、昨今のように市況が悪くなり装置の出荷や受注が冷え込んでも、既に稼働中の装置に対するサービス需要は続きますので景気に左右されやすい半導体装置メーカーにとって売上基盤を強くする重要なビジネスであると考えられます。2022年のASMLの売上成長率は前年比13.7%と1年前のガイダンスであった20%を下回りましたが、Installed Base Managementの売上は全体の売上成長率を超えています。
FY22 Installed Base Management売上 YoY +15.8%
FY22 装置売上 YoY +13%
EUV露光装置の売上が50%、エンドカスタマーはロジックが旺盛
装置売上の売上構成は下記のようになっております。
露光装置には様々な種類がありますが、ASMLの決算資料の左の円グラフは焼付波長による違いごとに分類しています(Technology)。露光装置の種類については下記のサイトがわかりやすく解説しています。
また中央の円グラフはエンドユーザー別で主にロジックとメモリがメインです。ロジックはTSMC、Intel、サムスンファウンダリでメモリはサムスン、SKハイニックス、マイクロン、Kioxia・WDなどが主要顧客であると考えられます。
EUV露光装置の出荷台数は微減、単価は+18%増
出荷額の大半はやはりEUV露光装置が占めています。EUV露光装置の出荷台数はFY21が42台、FY22は40台と微減ではありました。しかしEUV露光装置の売上を出荷台数で割るとFY22は一台あたりEUR 177MでFY21の平均単価EUR 149Mよりも+18%上昇しています。
FY21 EUR 6, 280M / 42台 / 平均単価 EUR149M
FY22 EUR 7,097M / 40台 / 平均単価 EUR 177M
ASML Netobookings(新規受注)
今回の決算発表で個人的に気になったのは新規受注額の落ち込みです。
(うちEUV露光装置: EUR 3.4B … QoQ -10.5% / YoY +30%)
昨今の半導体市況の落ち込みで半導体メーカー各社が投資の削減を発表していますのでその影響もあるのかな、と思います。コレについては別途2023年の半導体装置市場についての記事を書きます。
ただ、ASMLによると、現在インフレや金利上昇や地政学リスクと行った不透明な状況が続いているものの、2024年後半から市況が回復と見ているようです。
We continue to see uncertainty in the market caused by inflation, rising interest rates, risk of recession and geopolitical developments related to export controls. However, our customers indicate that they expect the market to rebound in the second half of the year
引用 – ASML Q4 2022 Financial Result
2024年はEUV露光装置60台製造を目標
また、今年は60台のEUV露光装置の製造を目標にしているようです。2022年の出荷台数が40台だったので大幅な上昇です。
Because they want to prepare – because of the strategic nature of our machines – for an upturn in the second half of the year and 2024. That means that the demand is still higher than what we can make. That means that our plan is still to produce 60 EUV systems this year
引用 – ASML Q4 2022 Financial Result
ちなみに筆者は個人的にASML社の株を保有しているのですがまだまだ保有は続けようかと思っています。
ASMLの他にも半導体製造装置メーカーや大手半導体メーカーの決算が控えていますのでそれらと合わせて2023年の半導体装置市場についての記事を更新したくおもいます。
以上です。