ASML FY21 Q3決算まとめ

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平素は大変お世話になっております。

大手半導体製造装置メーカーASMLの2021年Q3 (7月 – 9月期)決算発表のまとめ記事となります。ASMLは露光装置で圧倒的シェアを持ち、特にEUV露光装置はASMLの100%寡占市場となっています。

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ASML Q3決算結果

ASMLのQ3決算結果の数字とQoQ/YoYの成長率です。

FY21 ASML Q3決算
→売上:  EUR 5.2B … QoQ +30% / YoY +30%
(EUV露光装置売上成長率: QoQ +66% / YoY +8%)
→Gross Margin: 51.7% … QoQ 0.8ppt / YoY +4.2ppt
→Operating Margin:33.2 %  … QoQ +2.4ppt / YoY +2.5ppt
→EPS: €4.26 … QoQ +69% / YoY +68%

Investing.comで確認できるコンセンサス予想の売上5.29B EURには届いてませんでした。

下記のグラフはASMLの決算発表資料を基に筆者が作成した売上と盛業利益率の推移です。売上は露光装置の種類やサービスなど収入のタイプ別に細分化しています。

稼ぎ頭であるEUV露光装置の売上シェアは54%にもなり、売上も出荷台数も順調に伸びています(売上成長率 QoQ +66%/YoY +8%)。また、サービス売上も1.1B EURとなっており売上の約21%を占めています。サービス売上は納入した装置が稼働する限り保守・点検・アップグレードなどに対して恒久的に課金できるので、半導体製造の投資が冷え込み装置の新規販売台数が減ってもこの売上があれば業績の安定化が期待されるでしょう。

ASMLの露光装置タイプ別売上シェアは下記のとおりです。

ASML 露光装置別の平均販売単価

ASMLは最先端のロジック半導体や一部DRAMの製造に適用されているEUV露光装置で名を馳せていますが、それ以前のプロセスにも適用されるArFiなどのDUV露光装置も販売しています。特に現在中国の大手ファウンドリなどにはEUV露光装置は出荷されていないと思われますが、DUV露光装置の取引は活発なようです。

ASMLとSMIC、DUV露光装置の大量購入契約を2021年末まで延長
ASMLとSMICは、2018年から2020年末まで有効であった露光装置の大量購入契約を2021年末まで延期したことを明らかにした。この購入契約はEUVではなく、ArFを中心としたDUV露光装置が該当するという。

以下のグラフはそれぞれの露光装置の出荷金額を出荷台数で割り算出した平均販売単価(棒グラフ)とEUV露光装置の出荷台数(折れ線グラフ)の推移です。

ArFi €62M (約80億円)、KrF→€9.5M (約12億円)に対してEUV露光装置の平均販売単価は€148M (約192億円)となっています。御存知の通り、EUV露光装置はASMLの寡占市場となっていますのでニコンやキヤノンなど競合他社を寄せ付けないレベルになっていることがわかるでしょう。

また、Q3 EUV露光装置出荷台数 15台(QoQ +6台)と四半期の出荷台数としては最高水準でした。

ASML Q3 顧客及び販売地域別シェア

ASMLの顧客別シェアは下記のようになっています。顧客はDRAM・NANDなどのメモリーとCPUなどのLogicに大半されます。メモリーはSamsung, Micron, SK hynix, Kioxia&WDなどが主要顧客で、LogicはTSMC, Intel, Samsung Foundry部門などが主要顧客であると考えられます。

Q3はメモリー顧客の売上比率が増加しました。これは韓国メモリー大手2社のSamsungとSK hynixがそれぞれ1znmと1αnm世代のDRAMへEUV露光装置の適用を始めたことに起因するのではと考えられます(参考 EEタイムズ 『SK hynix、EUV露光による1αnm世代DRAM量産を開始』)。

販売地域先別のシェアは下記図のようになっております。米国向けと台湾向けが増加しました。米国向けはインテルでしょうか。

ASMLのQ3新規受注

ASMLの新規受注です。Q3の新規受注額はEUR 6,179M、露光装置受注台数は178台でした。そのうち約EUR 2,900MがEUV露光装置です。Q2の新規受注数量が凄すぎたので少し見劣りしますが、それでもQ1や昨年のQ4のそれぞれのクオーターの新規受注額はEUR 4,000M台、それ以前はEUR 2,000M台でしたのでまだまだ高水準にあることがわかります。

ASML Q4およびFY21通年ガイダンス

ASMLによる来期およびFY21のガイダンスは下記のようになっています。

ASML FY21 Q4ガイダンス *成長率Mid Point基準
→売上: EUR 4.9B ~ EUR 5.2B (QoQ -2.88% / YoY +18.8%)
→グロスマージン率: 51% ~ 52% (QoQ -0.2% / YoY -0.5%)
ASML FY21 通年ガイダンス
→YoY売上成長率:  +35% (前回ガイダンスを維持)

決算後の説明会では部品調達の遅れや生産能力を増強しているVeldhovenの拠点におけるロジスティクスセンターのスタートに遅れが生じたことで露光装置のアッセンブリーに数週間の遅れが生じていることがコメントされています。また、一部の顧客は導入を急ぐあまり出荷後の受入検査を飛ばしており、そのような場合、顧客の生産ラインに露光装置が設置され(正常な動作が確認されて初めて?)た時点で初めて売上が立つことになるため、予定されていたQ4の売上の一部はFY22へPush Outされることになるという点が説明されています。それでも通年ではFY20比で+35%の売上成長を維持しています。

ASML 長期売上見通し

ASMLは9月の末のInvestors Dayにおいて2030年までの長期業績の見通しを発表しました。ASMLはFY25の売上展望を今までのEUR 15B~ EUR 24BからEUR 24B ~ EUR 30Bへと大幅に上方修正しました。粗利率は54%~56%への上昇を見込んでいます(今期51%)。さらに2020年~2030年までの10年間のCAGRは約11%の想定しています。当然ながら新品露光装置の出荷台数が寄与するわけですが、一方ですでに半導体メーカーの生産ラインに設置された露光装置の定期点検・保守から発生するリカーリング売上(installed base sales)も寄与すると述べられています。

We presented a growth potential towards €24 to €30 billion by 2025. Those were the scenarios that we presented there. With a gross margin for that year somewhere between 54% and 56%. But also beyond 2025 we continue to see strong growth potential for ASML. We presented, based on external sources and some of our own analysis, we presented a CAGR both for the systems sales and for the Installed Base sales. We presented a CAGR for 2020 through 2030 period of around 11%. So on the financial side a very good growth potential for ASML (ASML Q3 Transcript)

アナリスト向けのCallにおいてASMLは2025年の上記の売上を達成するために生産能力の増強をしており、2025年時点では年間生産台数をDUV露光装置は現在の1.5倍、EUV露光装置に至っては2倍以上にすると説明しています。

That was really towards 2025. So that’s the number that we gave at the Investor Day. There we said we are looking at 1.5X capacity for DUV and more than 2X for EUV. That’s based on units (ASML Transcript)

2025年時点においてはEUV露光装置の出荷台数が単純に増えるだけでなく、より単価が高いHigh NA(=0.55)の高NA次世代機種の出荷も期待されているため指数関数的に業績が成長していくと考えられます。

ASMLが長期売上見通しを上方修正、2025年には4兆円近くまで成長と予測
ASMLは9月29日(現地時間)、投資家向けイベントをオンラインで開催し、2030年に向けた長期売上高計画および装置ロードマップについての説明を行った。

まとめ

ASMLのQ3決算は世界的な半導体不足から生産能力を増強する各半導体メーカー・ファウンドリの活発な投資とTSMCやSamsungなどの大手半導体メーカーによる最先端プロセスへの投資モメンタムに後押しされ売上高 +30%、粗利益率は4.2ポイント上昇し、営業業利益は58%となりました。

各半導体メーカーは空前の投資を続けており半導体製造装置はいずれ来るであろう業績の反動が怖いのですが、ASMLに関してはこれからも継続する半導体の微細化に必要なEUV露光装置を独占しており、その成長は2025年以降など中長期で継続すると見込まれていますので引き続き心配ないのではと思っています。

 

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