TSMC 2021年 Q1 決算まとめ

スポンサーリンク

台湾の半導体受託製造最大手、TSMC (台湾セミコンダクターマニュファクチャリング)の2021年Q1(1月ー3月期)決算発表がリリースされました。

【Q1決算結果】
売上
: $12.92BM … QoQ +1.9% / YoY +25.4%
Gross Margin: 52.4% … QoQ -1.6ppt / YoY +0.6ppt
Operating Margin: 41.5% … QoQ -2ppt / YoY +0.1ppt
→為替影響やシーズナリティによるスマホ売上減少(=5nm売上比重減少)がQoQ減益に影響

【Q2ガイダンス】

売上: $12.9B – $13.2B (1USD = 28.4 NTドル)
Gross Margin: 49.5% – 51.5%
Operating Margin: 38.5% – 40.5%
→引き続きスマホは弱いがHPCの売上が増加【その他】
・半導体供給不足は2021年通年で継続、2022年もひきずる可能性
・2021年Capexは$30B (当初予想$25-$28B)
・2021年通年の5nm売上比重は20%へ拡大
・2021年下期から5nm改良版4nmのパイロット生産開始、2022年量産開始予定
・3nmは2022年下期から量産開始予定
・車載半導体供給改善は最優先事項、今後供給不足は解消へ向かうとの見方
スポンサーリンク

TSMC Q1決算結果

TSMCのQ1決算結果は下記のようになりました。

【Q1 決算結果】
売上
: $12.92BM … QoQ +1.9% / YoY +25.4%
Gross Margin: 52.4% … QoQ -1.6ppt / YoY +0.6ppt
Operating Margin: 41.5% … QoQ -2ppt / YoY +0.1ppt
EPS (NTD): NTD 5.39 … QoQ -2.2% / YoY +19.4%

YoYでの売上や収益率は上昇していますが、QoQでの売上はほぼフラット、収益率はマイナスになっています。これは後述しますが、USD/台湾ドルの為替に加えて、TSMCのビジネスはアップルを始めとするスマホ売上の比重が大きく、新型スマホの発表から年末のプレゼントシーズンにかけて売れていくQ4が終わるとどうしても冷え込みが発生してしまうというシーズナリティがあります。下記は2019年からの四半期決算をグラフにしたものです(TSMCの決算発表を参考に筆者が作成)。

TSMC Q2 Outlook

TSMCはQ2(4月ー6月期)のOutlookを下記のようにしています。

【Q2 Outlook】
売上
: $12.9B – $13.2B (1USD = 28.4 NTドル)
Gross Margin: 49.5% – 51.5%
Operating Margin: 38.5% – 40.5%
上記のOutlookはConference Callでの発表でしたがQ2の売上は引き続きスマホのシーズナリティによりスマホ売上が弱くなること、それに対してHPC(High Performance Computing)の売上が増加することでQ2の売上はフラットになるとのことです。収益率は5nm関連のコストや投資の減価償却費を差し引くことで微減となります。

TSMCによるFY21 半導体マーケット展望 など

TSMCは2021年の半導体市場成長率を下記のように見ています。また半導体市場は非常に活況となっており、このトレンドが今後数年続くためそれに合わせてTSMCも投資額を増やしていくとのことです。TSMCは2021年のメモリを除く半導体市場の成長を+12%、Foundryに限ると+16%と見ており、さらにTSMCの2021年 Capexを従来予想の$25B-$28Bから$30B (約3兆円)としました。

半導体の供給不足は2021年通年で継続するとし、さらに2022年も引き続き受給が逼迫するとの懸念を示しています。

TSMCのプロセス別売上

続いて、TSMCのプロセス別売上比重の変化を見てみます。下記のグラフは筆者が決算資料をもとに作成したTSMCの四半期別のプロセス別売上比率です。特にブルーの5nmは2020年Q3から売上が発生しており、スマートフォン向けに使われていることで知られています。緑の7nmは量産が始まってからしばらく立ちますがこちらもスマートフォンやHPC向けに幅広く使用されています。

Q1の売上を見ると5nm+7nmの構成比重はフラットであるものの、5nmの比重がQoQで下がっています。これは上述したスマホのシーズナリティが影響していると考えられ、どうしても避けられない傾向です。しかし、下期からのスマホ需要の回復とHPC向けチップへの適用により、2021年通年の5nmの売上比重は約20%になるとConference Callでは述べていました。ちなみに5nmの売上は2020年通年で8%です。

4nmと3nmについて

また、5nm以降のプロセスである4nmと3nmの展望についても言及がありました。4nmは5nmの改良版プロセスで現行の5nmよりもPower Consumptionなどのパフォーマンスに優れます。スマホ向けとHPC向けがメインでパイロット生産は今年の下期から、本格量産を2022年からとアナウンスしました。

さらに、3nm世代のプロセスについても今年中にパイロット生産を開始し、2022年の下期の量産をターゲットにしているとアナウンスしました。こちらもやはりHPCとスマホがメインの顧客になるようです。

このニュース、特に3nmの計画が順調であることはASMLなどの装置メーカーにとっても良いニュースであると考えられます。

EUVは現在、7/5nm世代といった先端ロジックの一部工程に導入されており、微細化に伴い適用レイヤー数が増加傾向にある。TSMCの場合、N7+では3~4工程にEUVが適用されていたが、N5では10工程前後に拡大。さらに22年から量産開始予定のN3では20工程近くまで増加すると見込まれている
引用『EUVリソグラフィー、装置調達でデバイス各社が争奪戦インテルもEUV投資を積極化』

さらに、今後3nm以降も微細化が順調に進めば、単純に装置の必要出荷台数が増えるだけでなく、要求されるEUV露光装置のハイエンド化も必須となり、結果として納入するEUV露光装置の単価も跳ね上がるからです。

TSMCのアプリケーション別売上比率

さらに、TSMCのエンドアプリケーション別の売上構成比率を見てみます。TSMCの区分するアプリケーションと代表的な顧客は下記のようになっています。

Smartphone→スマホ / AppleやQualcomm
HPC→High Performance Computing / AMDやNvidia
IoT
Automotive→車載
DCE→Digital Consumer Electronics (コンスマー家電)
Others→Consumerや産業機械など
ご覧の通り売上の大半をSmartphoneとHPCが占めています。スマートフォンの売上はQoQで減少していますがこれは上述の通りシーズナリティが影響しています。Q2に関しても同様の傾向が続くと考えられますがHPCの売上が増加するためQoQ売上はフラットになるとのガイダンスでした。世間を騒がせている車載の売上比率は4%でした(QoQ +1ppt)。

アプリケーションごとのQoQ増減率をグラフにすると下記のようになります。車載のQoQ売上増加率が約31%と前四半期に続いてかなり増えています。それだけ需要が回復しているということなのですが、2019年Q4から2020年Q3までの1年間で連続して車載だけがQoQマイナス成長を連発していたため、これだけForecastと出荷実績を減らしておきながらいきなり需要を回復させられても対応できない、というのがTSMCの回答であり車載半導体不足の根本的な原因の一つであるということです。スマホやHPCの売上増減も激しいのですが、彼らはTSMCの最新プロセスを牽引し売上の大半を占める主要顧客です。特にスマホビジネスは製品サイクルとシーズナリティ変化が激しいことは承知の上ですのでそもそもの前提が異なります。

車載半導体について

車載半導体についてCEOから個別にアナウンスがありました。『TSMCの車載半導体売上は2018年から”Soft”であり、さらに昨年のコロナのインパクトにより大きく激減したが下期から急激な回復を見せている』とまず前置きがありました。その上で車載半導体は特に長いリードタイムが求められるため、急激な需要回復が発生しても上記の数字が示すとおりForecast・注文数が継続して減らされていたため、その需要にすぐに対応できないことが昨今の車載半導体不足の原因としています。

しかしながら、車載半導体の供給改善を最優先事項としており、車載向けの生産ラインとウェハのアロケーション増加をさせているとのことです。Texas寒波やルネサスの事故がさらなる供給悪化を加速させたとしつつも、車載半導体の供給は今後改善を見せていくだろう、としました。

まとめ

以上、TSMCの2021年Q1決算結果のまとめとなります。

・Q1決算結果はまずクリア、QoQの売上成長と収益性は為替やシーズナリティによるもの
・半導体供給不足は2021年通年で継続、2022年もひきずる可能性
・2021年Capexは$30B (当初予想$25-$28B)
・2021年通年の5nm売上比重は20%へ拡大
・2021年下期から5nm改良版4nmのパイロット生産開始、2022年量産開始予定
・3nmは2022年下期から量産開始予定
・車載半導体供給改善は最優先事項、今後供給不足は解消へ向かうとの見方
タイトルとURLをコピーしました