2021年半導体メーカー売上ランキング

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おせわになっております。

気がつけば2022年1月も終わりそうですね。このブログを読んで下さっている皆様は少なからず半導体株に興味があるのでは、と思いますが、私の保有する半導体株は年初からヤられまくっています。露光装置大手ASML、回路設計EDAのケイデンスデザイン(CDNS)、ロジック半導体最大手インテル(INTC)を持っていますがどいつもこいつもパッとしません。まぁ投資は素人なので、ある程度現金化も済ませましたし、この3社の株はまだまだ持ちながらコツコツと指数へ積立を続ける所存です。

ということで2021年の半導体メーカー売上ランキング発表されましたので振り返りの記事となります。

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2021年半導体市場の振り返り

調査会社ガートナーによると、2021年の半導体デバイス市場は2020年比25%成長の$583B(約60兆円超)と過去最高記録を更新しました。半導体デバイス市場がドル建てで$500Bの大台を超えるのは初めてです。

また、ソースは異なりますが、WSTS(世界半導体市場統計)によりますと、2021年の半導体市場は$553Bで誤差はあるものの、2020年比26%増となっています。さらに2022年は+9%近い成長が予測されており$600Bの大台に乗せる事が視野に入ってきています(下記グラフはWSTS統計を参考に筆者が作成)。

特に出荷額が大きいロジック半導体(下記グラフ青)とメモリ半導体(下記グラフ緑)の売上成長はそれぞれロジック+27%とメモリ+35%となっており市場を牽引している事がわかります。

2021年半導体メーカー売上げランキング

Gartnerによりますと2021年の半導体メーカー売上ランキングは下記のような顔ぶれとなりました(下記表出所 Gartner Says Worldwide Semiconductor Revenue Grew 25.1% in 2021, Exceeding $500 Billion For the First Time)。

個人的に注目すべき点としては下記の点でした。

・韓国サムスン電子の売上がIntelを上回った
・メモリ大手3社が1位、3位、4位にいるがNANDしか持っていないKioxiaはランク外
・アナログ半導体ではTexas Instrumentsが独走体制になっている
・メモリ各社、Qualcomm、Mediatek、Nvidia、AMDの売上成長を見るとスマホ、ゲーム、PC、データセンターという花形エンド市場すべてが成長を牽引した
いくつかポイントについて解説して参りたいと思います。

韓国サムスン電子の売上がIntelを上回った

Intelは1990年代の頭からずっと半導体メーカー売上ランキングの首位を守ってきた巨人ですが、2017年と2018年にもサムスンと売上ランキングが逆転したことがありました。

サムスン電子はDRAMとNANDというメモリ半導体の最大手メーカーなのですが、2017年・2018年及び2021年に売上首位をマークできたのはメモリ半導体の値上がりによる恩恵を受けたからだと思います。

下記スクリーンショットはEETimesの『2018年半導体売上高ランキング、1位はSamsung』という記事から引用させていただいております(元ソースはGartner)。

17年→18年の売上成長を見ると、市場成長+13%に対して大手メモリメーカーのサムスンが+26.7%、SK hynixが+38.2%、Micronが+33.8%の成長率を達成しています。

2015年~2018年は特にスマホ市場とデータセンター市場の拡大により半導体市場が大きく成長した年でした。

2017年最大のIC市場はPCではなくスマホ - IC Insightsが予測
半導体市場動向調査会社のIC Insightsは6月20日(米国時間)、PCの出荷台数が落ち込み続けており、タブレットの出荷台数も減少していることから、(これらの他、シンクライアント端末を含む)パーソナルコンピューティングシステム向けIC売り上げよりも、スマートフォン(スマホ)を含む携帯電話向けICの売り上げが2017...

一方で2018年のスマホ出荷台数は前年比4.1%減と実は2年連続で減少が続いていました。

2018年の世界スマートフォン出荷、2017年に続き前年比減 Appleは四半期で2位に復帰──IDC調べ
IDCによる最新の世界スマートフォン出荷に関する調査報告によると、2018年通年の出荷台数は前年比4.1%減で、2年連続の前年割れだった。10〜12月期のメーカー別ランキングでは、2四半期連続3位だったAppleが2位に返り咲いた。

しかし、スマホ1台あたりに使用される半導体のハイエンド化と需給バランスの崩れが原因となり、1台あたりの半導体搭載額とチップあたりの価格が値上がりし、スマホ市場の出荷台数の減少を抑えて成長を続けることができていました。

一方で、SnapdragonというスマホのSoCで知られているQualcommの2018年売上成長は前年比-4.5%となっていました。

2018年の半導体市場は直近のピークだった

2018年の半導体市場は21年より前の直近のピークだったのです、もう一度WSTSの市場変遷のグラフを見てみます。

2011年からほぼ横ばいだった半導体市場が2017年、2018年と大きな成長を見せていることがわかりますが、これはメモリ半導体市場の成長のおかげです。上記グラフの緑部分ですね。2015年に$77Bだったメモリ半導体出荷額は2018年に$157Bとたった3年で2倍に膨れ上がりました。半導体市場全体は2015年 $335Bだったのが2018年に$478Bと+42%ですのでいかにメモリ市場が成長したかがわかります。
そして、2019年、半導体市場は前年比-14%と急落しましたが、メモリ半導体市場に限ると-32%の大幅減速となっています。理由はスマホ市場の減速やIntelが14nm→10nmのプロセス移行に失敗しPCやサーバー向けで圧倒的シェアを持つIntelのチップが出荷されず顧客のセット需要が調整されメモリ半導体の在庫過多→出荷数減少→価格減少という負のサイクルに陥ったからとされています(参考 – 湯之上隆『メモリ不況の夜明けは近い』)。
メモリ半導体はコモディティで、その価格は需給バランスによって非常に敏感に変わることで知られています。需給が逼迫するときは価格が跳ね上がりますが、少しでも在庫過多になると価格がすぐに下落します。価格が下落する局面ではほぼ必ず個数の需要が減少していますので、出荷数と単価が下がることで売上がマルチプルに下がっていきます。あまり業界に馴染みのない方は、石油みたいなものだと考えてもらえれば良いのでは無いでしょうか。
下記は参考にメモリ半導体大手マイクロンの四半期ごとの売上・利益率の推移です。2019年Q1から大幅に業績が失速していることがわかります。

2022年の半導体市場は約9%成長、メモリ市場は8.5%の成長

WSTSの予測では2022年も半導体市場は+9%成長し出荷額の更新を続けます。また、価格が変わりやすいメモリ市場も+8.5%と市場平均の成長を見せると予測されています。

しかし、シリコンサイクルという言葉を聞いたことがある方が多いと思います。半導体市場は4年のサイクルで好況不況を繰り返すというモノです。

直近の下落は2018年→2019年でしたので今年2022年はちょうど4年目となり、アノマリー通りに行くとシリコンサイクルのピークとなります。

2019年から2022年の4年間で半導体市場は$412B→$602Bと46%成長します。メモリ半導体市場は$106B→$171Bと+61%の成長をします。これは2015年→2018年の前回のサイクルで半導体市場が+42%成長し、メモリ半導体市場が+100%成長したのと大きく重なると思います。

2022年のメモリ半導体市場成長率は大幅な下方修正がされている

さらに、メモリ半導体市場の成長率は実は8月のWSTSの予測から大幅な下方修正がされています。

日本語の資料だと年2回の更新なのですが、英語版では年4回程度細かく市場統計が発表されています。恐らく業界団体なので四半期の企業決算に合わせて情報が更新されるのかもしれません。

8月のWSTSの統計のメモリ半導体市場予測
2020年(実績): $117B
2021年(予測): $161B YoY +37%
2022年(予測): $190B YoY +18.4%

11月のWSTSの統計のメモリ半導体市場予測
2020年(実績): $117B
2021年(予測): $158B YoY +34%
2022年(予測): $171B YoY +8.5%

KioxiaやWDなどのNAND専業メーカーの売上は失速

2018年のピークに於いて注目すべきがNAND専業メーカーの売上です。

メモリ半導体はDRAMとNAND2種類があるのですが、Samsung・SK hynix・MicronがDRAM3社寡占となっている一方でNANDは上記3社に加えてKioxia、Western Digital(WD)、Intel(今年SKへ売却)、中国のYMTCなど競争環境が厳しいです。これは供給過剰になりやすく、その局面においてはより価格の下落が激しいとう事になります。

2018年の半導体メーカー売上ランキングをもう一度見てみると、8位にランクインしているWD社の売上は1.8%の成長しかありませんでした。

2020年の半導体メーカーランキングには10位にNAND専業のKioxiaが入っており+32.5%の売上成長を記録していました(画像出典 EE Times 2020年半導体売上ランキング)。

しかし、2021年にはKioxiaはTop 10から姿を消しました。WDもいないので、NAND専業メーカーはTop 10から姿を消したことになります。

AMDやMediatekといったメーカーの売上成長が+60%とハンパないので、もちろんTop 10から姿を消しただけで売上成長がマイナスに転落したわけでは無いはずです。

しかし、ソースは違いますが、2021年末のIC Insightsの予測によるとKioxiaの21年売上成長は前年比+15%とのことで半導体市場全体の+25%、DRAMを含むメモリ市場の+35%に比べると大きく劣っている事がわかります。

2021年の半導体企業売上高ランキング予測、100億ドル超え企業は17社の見込み
IC Insightsによると、2021年の半導体売上高が100億ドルを超えるメガサプライヤは17社となる見込みで、新たにAMD、NXP Semiconductors、Analog Devicesの3社が100億ドル超え達成する見通しだという。

10年前の半導体ランキング

10年前の2011年の半導体メーカー売上ランキングを振り返ってみると下記のようになっています(画像 – EE Times 2011年の半導体売上ランキング)。

顔ぶれが大きく変わっているわけではないのですが、この10年で変わったことは

・Intelに加えてAMD、Nvidia、Qualcomm、Mediatekなどロジック半導体の成長が大きい
・メモリ半導体の成長が非常に大きい、特にDRAMを持っている会社が強くなっている
・スマホやサーバーといった市場が半導体のメイン市場になっている
・Texas Instrumentsはアナログ半導体首位メーカーとして揺るぎない座を守っているが成長率はメモリはロジックほどではない

ということがわかると思います。

今後の半導体市場は

半導体業界に携わるものとして、半導体市場の成長はこれからも続くと確信していますが、やはり市場の成長と減速というサイクルは避けられないはずです。

現在も供給逼迫は続いていますが、シリコンサイクル通りであれば2022年は直近のピークになるのかもしれません。成長市場である5Gスマホの一服感も見えていますし、在宅需要と新型ゲーム機の特需も落ち着いてるように見えます

しかし、2018年→2019年で市場減速の一因となったインテルのCPU不足はAMDのシェア躍進によってカバーされうると思います。各社の決算発表でも部材不足は続くものの、最低限のセット生産を継続するために最適化がされており、何もかもすべての半導体を要求している状況では無いというコメントがされています。

The market environment is similar to what we reported 90 days ago. Lead times for the majority of our products remain stable, but hot spots continue to exist. However, customers continue to be selective in their expedite requests, increasingly focusing on products that complete a matched set rather than expediting products across the board. This behavior is not specific to any product family, end market or geography.
引用 – TI Q4 21 Earnings Call Transcript

個人的には下記の記事の「仮需」の実態が明らかになるのは2022年半ばかという段落が非常に鋭い考察をされているなと思いました。

2022年半導体市況展望、15%超の成長が見込めるが年央に潮目が変わるかも
2022年の半導体市況、そして、半導体不足の解消時期について展望してみたい。

引き続き半導体市場に注目してまいりたいと思います。

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