ASML FY21 Q4&通年決算まとめ

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いつも大変お世話になっております。

大手半導体製造装置メーカーASMLの2021年Q4 (10月 – 12月期)及びFY21通年決算発表のまとめ記事となります。ASMLは露光装置で圧倒的シェアを持ち、特にEUV露光装置はASMLの100%寡占市場となっています。

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ASML Q4決算結果

ASMLのQ3決算結果の数字とQoQ/YoYの成長率です(以下データ引用 ASML決算発表資料)。

FY21 ASML Q4決算
→売上:  EUR 5B … QoQ -4.9% / YoY +17%
(EUV露光装置売上成長率: QoQ -27% / YoY +39%)
→Gross Margin: 54.2% … QoQ +2.5ppt / YoY +2.2ppt
→Operating Margin: 40.7%  … QoQ +4.1ppt / YoY +5.4ppt
→EPS: €4.38 … QoQ +2.8% / YoY +35%
→Net Bookings: 7B EUR … QoQ +14% / YoY +66% (0.55NA EUV 1台含)
【FY21通年】
売上: EUR18.6B … YoY +33%
Gross Margin: 52.7% … YoY +4.1ppt
Operating Margin: 36.3% … YoY +7.3ppt
EPS: 
EUR 14.34  … YoY +69%

Investing.comで確認できるコンセンサス予想はQ4 売上5.1B EURおよびEPS 3.71 EURでしたので、売上はミス、EPSはクリアという形ですね。

下記のグラフはASMLの決算発表資料を基に筆者が作成した売上と盛業利益率の推移です。売上は露光装置の種類やサービスなど収入のタイプ別に細分化しています。

稼ぎ頭であるEUV露光装置の売上シェアは31%と同じく54%に膨れ上がったQ3の反動を少々受けた形かなと思います。また、サービス売上が1.5B EURとなっており売上の約30%を占めるに至りました。サービス売上は納入した装置が稼働する限り保守・点検・アップグレードなどに対して恒久的に課金できるので、半導体製造の投資が冷え込み装置の新規販売台数が減ってもこの売上があれば業績の安定化が期待されるでしょう。

2021年通年ではASMLの売上成長はEUR 18BとFY20比+33%でしたが、EUV露光装置の売上はEUR 6.3BでYoY +41%サービス売上はEUR 5BでYoY +35%と成長しました。

ASML Q1および2022年の見通し

ASMLによるとFY22 Q1および通年の見通しは下記のようになっています。

【FY22 Q1&通年ガイダンス】*変化率はMid Point基準
Q1 売上見込み: $3.3B – $3.5B / QoQ -32% & YoY -22%
*但しQ1に出荷はされるが売上計上がQ2にずれ込む分がEUR 2B程度別途有り
Q1 粗利率: 49%
FY22 売上成長: YoY +20%

ASML露光装置別の平均販売単価とEUV露光装置納入台数

ASMLは最先端のロジック半導体や一部DRAMの製造に適用されているEUV露光装置で100%のシェアを持ちます。EUVを購入する顧客はロジック半導体の製造で先行するTSMCやSamsungに加えてロジックにEUV工程を本格導入し始めるIntelやDRAMへEUVの適用を始めるSK hynix、さらに今後は同じくDRAMでEUVを使用するMicronも加わっていくと考えられます。

以下のグラフはそれぞれの露光装置の出荷金額を出荷台数で割り算出した平均販売単価(棒グラフ・左軸)とEUV露光装置の出荷台数(折れ線グラフ・右軸)の推移です。

ArFi €62M (約80億円)、KrF→€9.5M (約12億円)に対してEUV露光装置の平均販売単価は€145M (約190億円)となっています。Q4のEUV露光装置出荷台数は11台でした。Q3 EUV露光装置出荷台数 15台(QoQ +6台)と四半期の出荷台数としては最高水準でしたが少しその反動がある形ですね。2020年も同様にQ3にピークをつけてQ4、Q1と反動を受けています。

2021年を通じてEUV露光装置の納入台数は42台となり、2020年の31台から11台増加する形となりました。

ASML Q4 顧客及び販売地域別シェア

ASMLの顧客別シェアは下記のようになっています。顧客はDRAM・NANDなどのメモリーとCPUなどのLogicに大半されます。メモリーはSamsung, Micron, SK hynix, Kioxia&WDなどが主要顧客で、LogicはTSMC, Intel, Samsung Foundry部門などが主要顧客であると考えられます。

Q4はQ3から一転してロジック向けの売上シェアが再び増加しました。地域別で見ると日本と欧州が消え、台湾・韓国・中国だけになりました。

ASMLのロジック顧客はこれまでTSMCとSamsungが多くを占めてきましたが、これからはIntelもその列に本格的に加わって行くことになりそうです。

EUV: The Most Precise, Complex Machine at Intel
‘Behind this Door:’ Intel’s video series shows viewers a critical piece of Intel manufacturing: an EUV — or extreme ultraviolet — lithography system.

ASML FY21 顧客及び売上タイプ別シェア

ASMLの通年の売上の推移です(ASML決算発表より画像引用)。

FY21はロジック半導体向けの売上がEUR 9,589Mと+20%の成長、メモリー向け売上がEUR 4,064Mと+38%の成長、そして一度納入した装置向けのサービス売上がEUR 4,958Mと+35%の成長を遂げました。また、上述の通りEUV露光装置の売上は+41%の成長でした。

ASMLのQ4新規受注

ASMLの新規受注です。

Q3の新規受注をさかのぼってみるとEUR 6,179M、露光装置受注台数は178台でそのうち約EUR 2,900MがEUV露光装置でした。

Q4の新規受注額はEUR 7,050M、露光装置受注台数は191台でそのうち約2,600Mが現行の0.33NA のEUV露光装置で、さらにこれまで含まれていなかった0.55NAのEUV露光装置が1台含まれているとのことです。

0.55NAの露光装置は半導体の微細化をこれからも牽引するために必須です。

ASMLのバイスプレジデントを務めるTeun van Gogh氏は…「2023年前半には、顧客向けに装置を提供できる予定だ。レンズの開口数(NA:Numerical Aperture)に関しては、既存装置の0.33から、0.55を上回るとみている。半導体メーカーがこの新型装置を使用すれば、現在限界とされている2nmをはるかに超えるプロセス技術を、少なくとも今後10年の間に実現できるようになるだろう」と述べている。
引用 – EEタイムズ『ASMLの新型EUV装置、ムーアの法則を今後10年延長可能に』

また、本日ASMLはIntel and ASML strengthen their collaboration to drive High-NA into manufacturing in 2025というプレスリリースを発表しています。それによると、Intelは2025年にASMLのHigh NA EUV露光装置を使用したロジック半導体の量産を見込み、ASMLとパートナーシップを強化しているとのことです。

Intel and ASML strengthen their collaboration to drive High-NA into manufacturing in 2025 | ASML
Intel makes its first purchase order for ASML’s TWINSCAN EXE:5200 system, marking the next step on the path to EUV 0.55 NA (High-NA) introduction.

High NA (0.55NA)のEUV露光装置注残は6台(?)

CEOインタビューによるとHigh NAのEUV露光装置のEXE:5000というモデルははすでに2024年までの出荷分5台受注がなされており、さらにEXE:5200というさらにパワフルなモデルを1月に受注したと説明されています

We are executing the first High-NA tools in our factory. We received the fifth EXE:5000 (High-NA) order for shipment basically up to and including 2024. We now have five in the orderbook. As a matter of fact, in Q1 of this year, so not last year but Q1 2022, we received the first order for the EXE:5200. Which is the next generation highvolume manufacturing tool for EUV which will be launched in 2024.
引用 – ASML Q4 Transcript

ベルリンの火災について

1月の初めにASMLのベルリン工場で火災が報告されました。

ASMLのベルリン工場火災、EUV装置用の部品製造エリアに一部影響
ASMLは2022年1月7日(オランダ時間)、同社ベルリン工場で同2日夜に発生した火災に関する予備調査の結果を発表した。同社は、EUV(極端紫外線)露光装置用のウエハークランプの製造エリアが一部、火災の影響を受けたなどとしている。

EUV露光装置用のウエハークランプの製造エリアが一部、火災の影響を受けたと報道されましたが、決算発表資料と共に発表されたVideo Transcriptで同社のCEOは影響はあるものの、2022年のEUVのアウトプットに多大な影響を及ぼす程ではないとしています。

it was in the area where we make the EUV wafer clamp, which is a very complex but very significant module that goes into our EUV systems. But because of the hard work and the creativity, we currently believe that we can manage the situation and that we will not see a significant impact on our EUV output in the year 2022.
引用 – ASML Q4 Transcript

まとめ

ASMLのQ4および2021年通年の決算結果をまとめました。

・FY21売上はEUR18.6BでYoY成長は+33%
・うちEUV露光装置売上+41%、サービス売上が+35%
・EUV露光装置の出荷台数は42台で2020年比 +11台
・FY22の売上成長は+20%を見込む
・微細化を牽引するHigh NA 0.55のEUV露光装置の受注も始まっている
・2025年の中期売上見通しはEUR 24B – 30B / 粗利率 54% – 56%

これからもASMLに注目です。

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