お世話になっております。ワタクシが個人的に保有する半導体回路設計EDAベンダー大手のCadence Design Systems(ケイデンス・デザイン・システムズ / CDNS)のQ1決算結果のまとめです。サラッとした数字の振返りになります。
Cadence(ケイデンス)は半導体回路設計ソフト(もしくはEDA)と呼ばれるソフトウェアの大手ベンダーです。EDAは回路の設計を自動化するソフトウェアでこの業界ではCadence・Synopsys(シノプシス)・Mentor Graphics(現Siemens)の3社寡占です。
半導体、特にCPUやGPU、もしくはスマホSoCに代表されるロジック半導体に求められる性能は年々上がっていますが、半導体メーカーはそれらを約1年おきという早い製品サイクルで年々投下しなければなりません。いまでは小さなシリコンダイの上に数十億個というトランジスタが搭載されているわけですがそれらのIC設計を支援するのがEDAです。
半導体エレクトロニクスの世界は、今や数十億個のトランジスタをわずか数平方センチメートル程度のシリコンチップの中に詰め込んでいる。その光学顕微鏡写真からは、トランジスタは小さすぎて見ることができないが、家や建物がぎっしり詰まった東京都全体を見ている感覚に近い。こんな都市を手作業で設計するわけにはいかない。だからこそ、半導体ICの設計は自動化を使わざるを得なかった…何もないさら地に東京都全体の都市設計を2~3年でやることは不可能であるが、それに近いパターン設計を可能にするツールがメンターグラフィックスやシノプシス、ケイデンスなどが手掛けてきたEDA(Electronic Design Automation;電子設計自動化ツール)と言われるものだ。
引用『IC設計からみると世の中は石器時代』
Cadence(ケイデンス)のQ1 21決算結果
Cadence(ケイデンス)の2021年Q1決算は下記のようになりました。
売上 $736M … QoQ +1.8% / YoY +19%
Non-GAAP 営業利益率 38% … QoQ +1ppt / YoY +6ppt
Diluted EPS $0.83 … QoQ +33.8% / YoY +88.6%
Cadence(ケイデンス)のGuidance
Cadence(ケイデンス)はQ2および2021年通年のガイダンスを下記のように示しています。
売上 $705M – $725M
Non-GAAP 営業利益率 36%
Diluted EPS $0.74 – $0.78
売上 $2.88B – $2.93B (YoY +7.4% 〜 +9.3%)
Non-GAAP営業利益 35%-36%
Diluted EPS $2.99 – $3.07 (YoY +36% 〜 +39%)
Cadence(ケイデンス)の売上と利益率
Cadence(ケイデンス)の四半期ごとの売上と利益率をCadenceのIR情報を基にグラフにしました。
Non-GAAPの利益率は下記のようになります。ソフトウェア企業ですので粗利率は非常に高く、また営業利益率も高水準です。
Cadence(ケイデンス)のEPS
また、Cadence(ケイデンス)の四半期ごとのnon-GAAP EPSをグラフにすると下記のようになります。
Cadence(ケイデンス)のキャッシュフロー
Cadence(ケイデンス)の年間のキャッシュフローです、順調に右肩上がりです。2020年の営業キャッシュマージンは33.7%と高水準にあります。
Cadence(ケイデンス)の売上構成
Cadence(ケイデンス)の売上構成を地域ごとおよび製品ごとに見てみます。
地域別売上
Cadence(ケイデンス)の地域別売上は下記のような構成になっています。Cadenceの顧客は半導体メーカーです。TSMCやSamsungといったアジアの半導体メーカーも強いのですが、やはり半導体メーカーを最も多く抱えている国はアメリカですのでアメリカの売上がダントツで大きいです。
中国向けの売上も12%あります。昨年の華為に対する制裁ではCadenceのEDAツールも含まれているのですが、思わぬ形で”迂回輸出”がなされているようです。
…地方政府が高価なEDAソフトを購入し、これらの小さなファブレス会社に使わせる例が急増。ハイシリコン向けの販売減を補う存在になり得る。
引用 – 日経新聞『米半導体設計ソフト、制裁下も中国事業堅調の謎』
製品別売上
Cadence(ケイデンス)の製品別売上は下記のような構成になっています。特に売上の大部分を占めるEDAはサブスク課金型収入となっており、非常に安定した売上の先行きを図ることができます。また、半導体の需要は増え続けており、PC・サーバー・モバイルだけでなく、自動車や産業機械などに搭載されるロジック半導体に求められる性能の向上と出荷数の増加を考えると引き続きとても良い事業環境にあると考えられます。
まとめ
まとめ、といったらなんですが、筆者自身はCadenceの業績にまったくもって心配していません。半導体の需要はこれからも増え続けますし、特に自動運転の進化やAIを使ったものづくりなど、様々な事例が後押ししてハイエンドなロジック半導体の需要も様々な市場から引き合いが強いです。
そんな半導体の設計開発を支援するEDAツール市場を寡占しているCadence(ケイデンス)に筆者はこれからも投資を続けます。